本山岬の西海岸に見つけたもの【2】

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(「本山岬の西海岸に見つけたもの【1】」の続き)

岸壁の切れ目から海に向かって伸びる堤防。
しかしそれは堤防にしては、どうも形状が変です。枕木らしきものが埋め込まれている…これは是非とも正体を詳しく調べなければ…


そうして手前にある黒っぽい砂利山へ踏み出したところ…
「足首までズボッと埋もれた…」
いや、別にとりたてて怪我とかの実害はなかったけど、普通のしっかりした砂利と思っていたので、足首まで埋もれたときにはさすがにちょっと焦ったよ。
こんなに支持力のない砂利なんて…
「お前、ただの石ころじゃあないよな?」
改めて足元の石を撮影。
写真では西日を受けて明るく写っているものの、実際には異様に黒々としていました。


真っ黒クロ助(?)で、しかも波で堆積する軽めの石ころと言えば、あれしかないよね。
非喫煙者の自転車隊だからライターを持ち合わせず直接的な方法で確かめることは出来なかったけど、場所柄ほぼあれが漂着したんだろう…
漂着するってことは、例えばここが石炭の積み出し用桟橋だとして、搬出の過程で海に落下した石炭が寄せ集められたとか、あるいは元々海底に露頭している石炭が波の作用で削られ、運ばれたかってことかな…

←コレが何を意味しているかは読み進めばいずれ分かりますw

振り返って撮影。
斜面の降り口に石炭の欠片が一杯溜まっていました。


で、こんな感じで枕木が並んでいるんだよな…



大きさはこのくらい。
ケータイを置いて大きさを比較しています。


何やら太い鉄柱を切り落とした跡のようなものも…


一部、陥没しています。しかし中までは見えない…


側面に降りてみました。
横から湧き水でしょうか…勢いよく浜辺へ噴き出していました。


全体像を写すために、更に海側へ歩き出します。
スニーカーの裏から海水が染みてくるので、飛び石伝いに…


突端の波しぶきに洗われている部分は、石積みがあったものの自然倒壊したようでした。


何か見えないかと、石垣の途中までよじ登って撮影。
特に参考になりそうなものは見当たらず…


関係ないけどさ、
意外に解説が淡泊だけど何で?
ハイ…
もう逃げようもないのでアッサリ白状しちまいます。

帰宅して調べた後、これが炭鉱時代の遺構とはほぼ無関係であり、かなり新しい時代の構造物ということが判明したからです。
現地の徒歩・じでんしゃ隊はもちろん、帰宅してからもしばしの間、これはどういう遺構だろうかと想像を巡らせつつ、写真のリサイズ作業をはじめとして記事の下準備を進めていました。
そうして のところまで本文を書きかけていたんですよ。
その後、決定的な証拠が明らかになってしまいました。
昭和49年度版の航空映像にこの構造物は見えない。[1]
国土画像情報システム - 昭和49年度版・本山岬付近
過去を覗く手段としてよく引き合いにしている「国土画像情報システム」の航空映像ですが、これで本山岬付近を見れば一目瞭然。
まだ2つ穴の並ぶコンクリート護岸すら存在していないし、言うまでもなくこの斜路もありません。石油精製工場はありましたが、岬の西海岸はすべて自然なままでした。浜辺に小舟らしきものも写っているので、かつては漁労生活も営まれていたのだろう…

この構造物は、埋め立て地を囲む形で護岸を築くと船を陸揚げできなくなるので、補償の形で設置されたのでしょう。天端に埋め込まれた枕木は、単純に船を滑らせるとき底部を傷つけないようにするためではないかと…

しかし…
そのことが判明するまで現地の徒歩・じでんしゃ隊、これは炭鉱時代を物語る歴史の証人に違いないと勝手に決めつけ、勝手な解釈を展開させておりました。
「これは旧本山炭鉱斜坑坑口の延長線上にある…浜辺で斜坑の土被りが薄いので補強した跡ではないだろうか?」
「かつて石炭を積み出すための桟橋の遺構では…浜辺に散乱する石炭の欠片は、搬出途中で海に落ちたものが浜辺へ打ち上げられたものに違いない…」
「側面から噴き出す水は、坑内に滞留する湧き水が割れ目から出て来ているのかも知れない…」
…とまあ、こんな妄想を膨らませていたワケでありまして…
そのために現地ではここに長時間留まり、写真を撮りまくっていたわけでありまして…
全然、意味なっしんぐー…(自滅)
こんな構造物のために、時間をかけて2編もの記事を拵えたのであります。お疲れ様でごぜえましたぁ、うぐふぅっ…
遺構云々を唱える前に最低限国土画像情報システムは観とけよって教訓になったなあ…

さしむきここを訪れたことで確実に得られた収穫と言えば、これくらいのものかな♪
へい!いらっしゃい!
原産国、日本。産地、本山岬西海岸!
採れたての石炭でござい〜♪


おひとついかが?
石炭じゃないかも知れないし…仮に石炭だとしたら…私有地にある有価物にならないかい?


ナニ?
こねぇなモノで無駄に記事を読ませておいてお茶を濁すなってかー?
滅相もありませぬ…m(__)m
無駄に期待を膨らませて申し訳ない…
だけど、まあ、そう凹むでない。怒るでない。泣くでない…(いや…泣きたいよぉ…

ここは無駄足だったとして、この先には確かに「あった」のです。
また大風呂敷を広げると赤っ恥かくから控え目に言うけど、そこに見受けられる諸々のモノは恐らくその筋の方々には知られていると思う…それにしても今度はかなり確信が持てます。
炭鉱関連の遺構に違いない…
言い切っていいのか?ホントに良いのかなー?

徒歩じでんしゃ隊よ、今度こそ滑るなよー

正体が分かってしまったから言えるけど、遺構の顔をした小物に引っ張られている暇はないんですよ。
既にその先にそれらしきものが見えていました。
そう言えばこのあたりの岸壁は例の2つ穴がなくなっていた…


それはもう目前に見えていたので、姿が目立つのはやむを得ないとして、岸壁上を歩きます。
風が冷たい…

竜王山の裾野が見えてきます。更に遠くにはきらら浜も…
広い埋立地の西側末端に近いところです。


その先にあったものは、今度こそ「何これ〜?」を連発なるようなものでした。

(「本山岬の西海岸に見つけたもの【3】」に続く)

出典および編集追記:

1. この斜路は確かに炭坑時代からのものではない可能性はあるものの、前編でも述べた通りこの構造物は当時のものに関連性があるのではと考え直している。現在の海岸線と当時の海岸線は異なっていることに注意。
第二次踏査を行った一つの理由にもなっている

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