本山岬西海岸・第二次踏査【1】

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現地踏査日:2014/11/7
記事公開日:2014/11/29
(「第一次・レンガ塔接近計画【3】」の続き)

藪に埋もれるレンガ塔をざっと数枚撮影後、本日メインの課題に向かうためにそのまま浜辺への道を下った。


青空に剥き出しの崖が目立つ本山岬の西側。
残念だがもう立ち寄って写真を撮る時間的ゆとりがない。ここから遠景を撮るだけにした。


今回の目的地はこっちだ。
秀麗な岬の景観とはまったく無縁なコンクリート護岸の目立つ埋立地とその下の浜辺である。


初めて本山岬を訪れる前から航空映像をざっと眺めてこの西側埋立地には何かありそうな気配を感じていた。そして実際そこで炭坑時代のものではないかと思われる遺構をいくつか見つけた。
それから4年が経ち、この間に自分は多くの物件を当たることで踏査手法や考察が当時に比べてずっと精密化した。このたび過去に地域SNSへ掲載した記事を移植公開し、その作業過程で「これは炭坑関連の遺構とはまったく無関係だ」と判断している案件について疑義がみつかった。第一次踏査の連載記事をお読みになった方は何処のことか分かるだろう。そこで現地は大きく変わっていないと思われるものの改めて直近の写真を採取した上で第二次踏査として記事化しようと思ったのである。

初回訪問時はまったく気まぐれに訪れてたまたま干潮だった。埋立地の下へ降りて海岸を調査するので干潮時でないと行動範囲が狭まってしまう。それで数日前から潮見表を参照し、なるべく潮が大きく引く午後の時間帯で、かつ自分のスケジュールが取れる日を調べて踏査日を選定していた。
この日の本山岬海岸は午後3時頃に明るい時間帯での最大の干潮を迎えることが分かっていた。既にここまで寄り道がかなり多かったため予定時刻を少し過ぎていた。

4年前の第一次踏査時に作成したマップをそのまま再掲載する。


今回は岬の方へ行かないだけで移動経路はまったく同じだ。異なるのは徒歩ではなく自転車で来ている点である。
埋立地は結構広大で歩くには結構な距離がある。興味深い遺構の多くは埋立地中ほどより北側の浜辺に見つかる。それで重要でない場所は乗って進んで移動時間と労力を節約することにした。

4年前は徒歩なので寒い中このコンクリート護岸の上を歩いて進んだのだった。


2列に穴の空いた独特な護岸である。これと同じタイプのものを他の場所でまだ見たことがない。


ただしこのコンクリート護岸それ自体はさほど興奮を呼ぶものではない。恐らく埋立地と時を同じくして造られたのだろう。昭和40年代の航空映像ではまだ自然の砂浜が見えるからだ。

コンクリート護岸の折れ点から振り返って撮影している。
岬に近い自然の浜辺を大きく減らす形で埋立地が造られたので、もしかすると当時景観面で異を唱える動きがあったかも知れない。


埋立地側は一面の枯れ野原状態になっていて今のところ何も利用されていない。
昭和開作みたいにいずれソーラーパネルを設置した発電所になるのかも…


4年前同様にレンガ塔をズーム撮影。
前に使っていたよりも高性能なカメラだから鮮明に撮れるだろう。


塔の上部をズーム撮影している。4年前より離れていながら鮮明に撮影できる。
みっしりと藪に包まれている。


斜面の中腹にあって接近する道はことごとく失われている。枯れ野原を進めそうに思えて、この埋立地には地図上に反映されない溝や沼、溜まり水の場所が散在していることは第一次踏査で分かっている。
まあ…今はどうにも出来ないのだから先へ進もう。

徒歩ならコンクリート護岸の上を進むのに困難はないが、自転車だと押し歩きでも嫌である。
それほど幅がなく2列に孔の空いた護岸だ。埋立地側はそれほど段差はないが、海側は波止め用に積まれた岩と護岸は背丈以上の高低差があった。孔に躓くと転落してしまう。


もっとも護岸の上でなくともこんな埋立地に自転車を連れて突き進むという来訪者自体かなり奇特だろう。
既に見てきたようにこの埋立地は柵など設置されておらず本山岬に面する側は立入禁止の立て札などもいっさいない。釣り客の出入りがあるようでそれほど明瞭ではないものの先ほど降りてきたレンガ塔横を通る道からも分岐する踏み跡がみられた。
初回踏査から4年経っているので立入禁止の立て札が出ていないかちょっと心配だった

埋立地の護岸寄りは至る所草が剥げちょろ状態になっていた。筋状に草がなくなっている部分もあり、釣り客によって踏み跡が造られているようだ。
足元はあまり良くないが自転車に乗って進むことができた。


埋立地の様子。
本当に何もないただの荒れ地だ。


この景観はかつて昭和開作埋立地へ入ったときのものとほぼ同じである。延々と荒れ地にこんな感じで低い草の生えた場所だった。
埋立地や採石場の跡地なんてのは見渡す限り剥き出しの地面が広がっていて面白そうな題材などなさそうに思えるが、そうでもない。昭和開作埋立地では上空からの航空映像で興味深いものが見えていたし、現地でも年代考証の参考になるものがいくつか見つかった。まあ、無理やりそういうものを見つけだしてくる感じでもあったのだが…[1]

排水が巧く機能しておらず少しぬかるんでいる場所に二輪のタイヤ痕がいくつも見つかった。
ダート路専科の走り屋さんのものかも知れない。


埋立地側は枯れ野原、海側は延々と続くコンクリート護岸と積み上げられた岩…
めぼしいものもなさそうなので自転車に跨って景色を「早送り」した。埋立地だから周囲に民家はまったくない。浜辺にも人の姿は見受けられなかった。

次に現れるコンクリート護岸の折れ点から振り返って撮影している。
地平線と水平線がコラボ状態になるほどに広々として何もないところだ。


護岸折れ点付近は浅い水溜まり状態になっていた。
この中を自転車に跨って進むのは…ちょっと嫌だなぁ…


他に手段がなければ護岸の上を自転車押し歩きも考えた。しかし幸いに水溜まり部分を迂回して草むらの中を進攻することができた。

再び乾いた地面になった。
乗って進めばスピードを稼げる区間だが、ここでちょっと足元を注視した。


埋立地の材料となっている土砂である。
自然の石ころではない。火山の石みたいに無数の孔が空いているような礫を見かけた。


同様の石ころは先ほどレンガ塔へ至るとき下ったシングルトラックの道にも見受けられた。外観が溶岩のようで、黒っぽくて表面には無数の孔が空いている石ころだ。高温で処理された後に発生する燃え殻か不純物の固化したもののように思われる。埋立地なので別の場所から運び込まれたものだろう。

これは四輪のタイヤ痕ではないだろうか。
反対側にある出入口から車が入って来たのだろう。関係者の車が通ることも一応あるらしい。


他にも原付や私と同じ自転車のものと思われるタイヤ痕もあった。むしろ歩行者の足跡の方が少ない。こんな場所を通る奇特な人が居るとは…と思われる以上に結構、埋立地へ立ち入る人があるらしい。もっとも一度深く刻まれたタイヤ痕はかき消される要素に薄いので、かなり前のタイヤ痕が残っているのかも知れない。

自転車らしきタイヤ痕が集中している付近に、第一次踏査のときも足を止めて眺めたコンクリート構造物があった。


この場所は4年前にも立ち止まっている。ただし眺めるだけで写真は撮っていなかった。
ここまで題材に乏しかったので、今回は可能な限り近づいて撮影を試みた。

(「本山岬西海岸・第二次踏査【2】」に続く)

出典および編集追記:

1. 4年前に訪れたときは昭和開作埋立地はまだ釣り人などの立ち入りが可能だった。このときのレポートも地域SNSへ記事公開していた。現在は埋立地の殆どがユーエスパワー発電所敷地に転用され関係者以外の立ち入りはできなくなっている。

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