埋立地の北の端にある倒壊した堤防。
4年前は護岸から遠巻きに眺め、健全な部分まで歩いて観察した。その下へ今来ている。
堤防の上部は基礎部分をくっつけたまま横倒しになっていた。
これほど大きなものが豪快に倒壊するなら、よほど酷い台風のとき荒波に耐えきれず倒れたのだろう。それにしても堤防がこれほど壊れてしかも修復も撤去もされないまま残っているというのも稀だ。埋立地を管理する企業の私有設置物なのだろうか…
ケーソンには上部構造を留める鉄筋が入ってはいたが…あまりにも細い。しかも一つの箱に2ヶ所しかない。
これでは重い堤防の上部を支えるには無理があったのではと思った。
今も遺っている健全な堤防の上部はスパッと切り取られたような綺麗な断面をしている。施工継ぎ目だったのだろう。
堤防の下部は…適当に周辺の石材やコンクリート殻を詰め込んだように見える。
コンクリートに練り固められた栗石は分かるとして…レンガ積み部材の一部らしいものが見えている。
たまたま近くに転がっていたものが堤防倒壊後、波の作用で押し込まれてしまったとは考え難い。廃物利用ということで中込め材に流用されたのではないだろうか。
(もしそうだとしたら恐ろしいやっつけ仕事だ…)
この堤防部分も昭和40年代以降の航空映像でチェックしている。しかし当初からあったのか画像からは判断しづらい。砂浜部分を見るとそれらしきものは観察される。現在ある堤防の断面部分は上部と下部でコンクリートの密度が異なるように見えるので、上の堤防部分だけ後から付け足したのかも知れない。
せっかくここまで降りて来たので堤防の裏側も偵察することに。
自転車から距離も視界からも離れるのであまり遠くへは行きたくなかった。
一番奥に杭が立っているのが見える以外特に何もなさそうだ。
ここにも砂浜一面に石炭屑が散乱していた。
浜辺の中ほどで石積み護岸からコンクリート護岸に変わっていた。
ここが埋立地の端になるのかも知れない。
杭が突き出ている場所まで来た。これより先はきららビーチだ。
コンクリート堤防には上がり階段はなかったし、そろそろ視界に近づく民家の存在も回避したかった。
(こんな場所を歩く人など皆無なので)
本当にこんな石炭屑まみれの浜辺に近づく人は誰も居ないだろう。
泳げるわけではなく潮干狩りなど出来そうにもない黒い砂浜…そこには確かに数十年前は賑わいを見せた影が窺い知れた。
ここから先にはもう昔のものは残っていないだろう。進めばどんどん自転車から遠ざかってしまうので引き返しにかかった。
倒壊した堤防のところまで戻ってきた。
護岸に近いところにコンクリート管が通されている。何のためか分からない。埋立地になる前はあの管あたりが陸地側の高さだったのだろうか。
堤防の先から撮影。
時刻は既に4時近く。日が傾き始めて黄色っぽい西日が黒々とした浜辺を照らしていた。
木柱が乱立しているところから敢えて逆光を狙って海の方にカメラを向けた。
自然に寄り集まったのではない…恐らく石積みの一部だったと思われる間知石がバラバラになった状態で沖の方まで続いていた。
そして岸辺に散乱するコンクリート柱。この正体が何であるかもネットの上に提示してからの今後の宿題だ。
きっとどなたかが正しく答えてくれることだろう。
水平線と短い砂浜、そして高い石積みの護岸。
この場所もあと数時間もすれば石積みの横筋で示される位置まで海水に没するのだろう。
自転車を留守番させておいた海へ突き出た低い船卸しと思われる構造物。
まだその側面や下側を撮影していなかった。
来たときより少し潮が満ちてきているが、まだ間に合う。
この構造物の正体のヒントを得るために下側を一周しようと思った。
原型を留めないほど錆び付いて変形した鉄棒が転がっている。それを足掛かりに進んだ。
石積みの下の方から水が噴き出ている。これは4年前も見た光景だ。
最大限都合の良い考えをしてしまえば、この構造物は船出し場を兼ねた本山斜坑の保護のために造られた…噴き出している水は坑道を満たす海水で何処かに繋がっている…となるところだろうか。
冷静に考えればこの水は単に埋立地から来る雨水だろう。ここで岸壁が切れているのだから埋立地の地中にある水の一部は海へ向かう。この構造物の内部へ入り込んだ水は干潮時は石の間から漏れ出て来るだろう。
船出し用の岸壁としてもなおよく分からない部分もあった。
先端部分の石積みである。波止めにしては丁寧に築かれている。既にかなり破壊され石材が散乱していた。
全体の外観も確かに古そうだ。昭和初期に造られたものだと言われればまったく素直に信じてしまう。
もしかすると石積みを分解すると内部には本山竪坑から伸びる枝坑が現れるのでは…と考えたくなった。
潮の状態に目立った変化はなかったが、日が明らかに傾きつつあった。光量が少なくなると明瞭な写真を撮りづらくなる。期待していた程の大きな成果は得られないままに今回の踏査も終わりに近づきつつあった。
(「本山岬西海岸・第二次踏査【6】」に続く)
出典および編集追記:
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