末信接合井

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現地踏査日:2011/4/17
記事公開日:2013/12/27
末信(すえのぶ)接合井は企業局による厚東川1期工業用水道の設備の一つで、導水路を経て送られてきたダム水を取り出し、中山分水槽と厚東川右岸側にある広瀬浄水場へ振り分ける役目を持つ。


下の地図は末信接合井の位置をポイントしている。


現地へは車で行くことはできないが、霜降山登山道の配水池コースの途中にあるため、徒歩で接近可能である。
《 アクセス 》
末信接合井は市道沖ノ旦末信持世寺線から市水道局の管理する霜降山配水池へ向かう道の途中にある。
市道を沖ノ旦側から進んだとき、末信集落の田園地帯が広がる場所へ出てきて広瀬浄水場へ水を送る水管橋が左側へ見え始めた場所が目印になる。

民家を過ぎると印象的な田園風景の中を直線で伸びる区間に出てくる。
このすぐ先にある十字路は、初めて訪れた頃から「黄金の十字路」と勝手呼称されている。
命名の由来はここから到達可能な興味深い物件の豊富さによる


黄金の十字路を右へ曲がるとすぐにフェンス門扉のゲートが見えてくる。


右折してすぐ車両通行止めになっているので、この先を往来する車は有り得ない。メンテナンスに来る作業車があるかも知れないので門扉を塞いでは塩梅が悪いが、邪魔にならない場所へ車を寄せて停めるのは問題ないだろう。
ここへ車を置いて登山する人もいる…付近には古い4tトラックが長期間放置されている

フェンス門扉は常時施錠されていて一般車両の進入ができなくなっている。車両進入禁止の看板は山口県企業局と市水道局の共同管理となっている。[1]


禁止の文言がある割にはフェンスの脇は甘い。徒歩での進入まで阻止するような気配は見られない。自転車でもちょっと抱えて脇をすり抜けることができる。

この管理道は企業局と水道局の占用道となっているわけではなく観音岳や霜降山への登山道を兼ねている。登山目的などで歩いての進入はまったく問題ない。[2]


なお、フェンス門扉の横をすり抜けるのが躊躇われる場合には北側の農道を迂回する形でも現地へ到達することができる。[3]
《 概要 》
・末信接合井は市道より10m程度高い場所にある。対岸の広瀬浄水場に厚東川よりかなり高い位置を水管橋で横切っていながら自然流下できるのも末信接合井および1期導水路の標高関係による。


管理道の下には広瀬浄水場向けの工業用水管と、広瀬浄水場で処理を終えた上水を霜降山配水池へ押し上げる鋳鉄管が共に埋設されている。
工業用水向けの計装用蓋と水道局の鋳鉄蓋を見ることができる

かなり広いスペースが確保されていながら、敷地内には管理道側へ寄せて4基のゲートと桝が設置されているだけである。他のスペースはアスファルトで舗装されている。


制水扉およびゲートの諸元は以下のようになっている。[4]

種別諸元
上流側手動制水扉(3.0m×2.2m)
旧隧道側手動制水扉(3.0m×2.0m)、手動堰上げゲート(2.14m×1.0m)
新隧道側手動制水扉(3.0m×2.0m)、手動堰上げゲート(3.0m×1.0m)

いずれも手動の設備なので遠隔操作はされていない。実際に操作されるのは隧道内補修や点検のときに限られるものと思われる。

言うまでもなく敷地内は立入禁止であるが、ネットフェンスに有刺鉄線は施されていない。いたずら防止のためすべての樋門や開口部を覆う縞鋼板は施錠されている。

4基のゲートの近くにステンレスに入った家のような箱が設置されている。恐らく地震計だろう。
同様のものが宇部丸山ダム交差部やダム監査廊などでも見られる


・導水路部分は完全に密閉されており、ダム水がどのような流れで分岐しているのか地表からは見えない。
写真は管理道から見下ろして撮影している。1期導水路は写真の奥から手前に向かって流れており、左への分岐が広瀬浄水場向けと思われる。


ゲート操作用の樋門に識別用のシールが貼られている。
管理道の下を垂直に通っているのが元からあった旧隧道らしい。


隣接する樋門には「全閉用」となっている。旧隧道を締め切ってメンテナンスするときにのみ操作されるのだろうか。


すべての点検桝には縞鋼板が掛けられてはいるもののフェンスに近づくだけで隧道内を流れる工業用水が反響する音が波しぶきのように聞こえる。
周辺の様子と流下音を動画で採取している。

[再生時間: 29秒]


全閉用となっている樋門の開度計は1.7mあたりを指していた。


この右側、広瀬浄水場向けの対面側にある樋門にもシールが貼られていた。
この樋門だけ他の3基からは若干離れて設置されている。


「堰上用」と書かれている。意味はよく分からない。流下水位を上昇させるためのものだろうか。


ネットフェンスの外側を伝うことで樋門を観察することができる。
山側に面した樋門にも何か表示が貼られていた。


「新隧道」となっている。
これは平成期に入ってから掘削された1期導水路のバイパス管を示している。


バイパス管は地震などによる導水路の破損を含む不測の事態に対応可能とするために二条化を目的として後から掘られたものである。
詳細は不明だが、旧隧道が従来方式で沢地から両側へ掘削されているのに対し、バイパス管は末信接合井から中山分水槽まで延長3kmに及ぶ一本の隧道で連絡されている。[4]掘削には山岳トンネル等で使用されるTBMに依り、隧道は土被りなどを勘案して直線的ではなく一部にカーブも見られるという。[5]

接合井に流れ込む手前に点検用桝が設置されている。この点検桝のナンバーは1期導水路の各桝の通し番号で末信接合井ではNo.23-1が与えられている。


この縞鋼板蓋はかなり新しい。平成期に入って中山分水槽まで追加で掘削したバイパス管に対応するものではなかろうか。


工業用水は下の写真の右から流れ込んできて奥の広瀬浄水場向けへ分かれ、中山分水槽向けは左か手前側と思われる。
右から左へ直進する流れが旧隧道、手前へ曲がるのがバイパス管だ。


接合井へ流れ込む旧隧道部分の点検蓋も同様にNo.23-1となっていた。
ただし蓋が見るからに古い。


末信接合井に設置された桝の管理番号に子番号が与えられている理由はよく分かっていない。親番号となるNo.23は、恐らく存在したであろう場所こそ同定できていながら桝が存在せず埋設標のみの状態なことが分かっている。
1期導水路は広瀬浄水場以前から存在していたので、広瀬浄水場向けの分水を容易にするために導水路の経路を変更し、新たにNo.23-1と末信接合井を造ってNo.23は隧道化したのかも知れない。この辺りは情報が得られ次第編集追記する。
今のところ新規記事は予定されていない。
初めて末信接合井について記事化したときのレポートをYahoo!外部ブログとして案内する。
同等以下の情報しか含まれないので以下の外部ブログ記事は将来的に削除される予定である
外部ブログ記事: 末信接合井
出典および編集追記:

1. 管理道の設置時に一般車両の通行には供しない取り決めがあった。このため車両向けの霜降山登山道として開放される見込みはない。(「宇部の水道」宇部市水道局 による)

2. 自転車に関しては微妙である。物理的にこのゲートを通すことはできるが、観音岳コースへ向かう場合、霜降山配水池まで2ヶ所あるゲートは構造上自転車の搬入が困難なので注意を要する。

3. この道は付近に田畑を所有する農家の私道かも知れない。

4.「厚東川・厚狭川工業用水道 事業概要」厚東川工業用水道事務所パンフレット(旧版・改訂版)による。

5. 工事関係者の談話による。最近、TBMを降ろすとき掘削されたのではないかと思われる発進竪坑の跡が見つかった。
なお、バイパス管の竣工時には記念のテレホンカードが関係者へ配布された。

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