モンティ・ホール問題

数学インデックスに戻る

記事作成日:2016/7/12
最終編集日:2019/7/20
情報この記事はYahoo!ブログで公開していたものを元に作成されています。

次のようなくじ引きゲームを考えます。私が主催者、あなたが参加者です。

今、青・黄・赤の3つのカップのうち1つだけ私がお宝を隠しました。どの色のカップへ隠したか私は知っています。どのカップにお宝が入っているかは当然外からは分かりません。あなたはお宝を引きあてればもらえます。

あなたは3つのうちどれか1つだけカップを選び、その後で提示される情報を深慮しつつ最終決定した後にカップを開きます。最終決定してカップを開くまでは、あなたは一旦選んだカップを変更できます。


あなたは3つあるカップのうち(実際は何色を選んでも良いのですがここでは説明上分かりやすくするために青を選びました。私はどの色のカップに当たりが入っているか知っているので、あなたが選ばなかった残り2つのカップ(黄と赤)のうち外れと分かっているカップ(ここでは赤色)を開いてみせました。


外れと知って開いたので赤のカップは当然空です。残りの青と黄のどちらかに当たりが入っているのは明らかです。この後で、私はあなたに次のように提案します。

「あなたが始めに選んだカップを変えることができるし、変えないでおくこともできます。どうしますか?」


さて、あなたがお宝をゲットできる確率を少しでも上げたいなら、次のどの手段が最善でしょうか。
(a) 最初選んだカップから変えない。(青を選んだまま)
(b) 最初選ばなかったカップに変える。(青から黄に変える)
(c) どっちでもいい。(変えても変えなくても青と黄でお宝ゲットの確率は同じ)
答えは (b) です。
「最初にあなたが選ばなかった方のカップに変える」が正解です。
何故ならあなたが最初に選んだカップ(青)よりも選ばなかったカップ(黄)の方がお宝ゲットできる確率が2倍も高いから。より正確には、この場合青が当たりの確率は1/3なのに対し、黄が当たりの確率は2/3です。

この結果に対して普通に起こり得る反応は…
「ええー?何でそうなるの?
最終的には青と黄のどっちかにお宝が入っているかの2択になるんだから、答えは (c) でしょ?」
一見、上の主張は極めて妥当に思えます。青と黄のカップがあってどちらかにお宝が入っている状態は、黄色に入っているか、


または、青色に入っているか、


…の2通りしかないからです。

青・黄・赤のカップのどれか1つにお宝が入っているとして、ランダムに1つ選んでただちに開いたとき、当たりを引く確率はどのカップでも等しく 1/3 です。さて私はあなたが1つのカップを選んだ後、親切心から当選確率を上げようと、敢えて外れと知っているカップを1つ取り除きました。外れが1つ減ったので、あなたがお宝をゲットする確率は何もしなくても1/3から1/2に上がったように見えます。

それが誤りなんです。あなたがカップを青のまま変更しなければ、当たる確率は最初と同じ 1/3 のまま。青から黄に変えれば当たる確率は 2/3 になるのです。

これは数々の定理を世に送り出した20世紀の驚異的な数学者、ポール・エルデシュも誤り激怒させたと言われる伝説の問題[1]です。整理すると次の通り。
(1) 3つのカップのどれか1つだけに宝が入っている。(私は知っているが参加者は知らない)
(2) 参加者はカップのどれか1つを選ぶ。
(3) 私は参加者が選ばなかった残り2つのうち外れと分かっているカップを1つ開ける。
(4) この結果を元に参加者はカップを選びなおすことができる。
重要なのは私は3つのうちどれが当たりかを知っていること、参加者がカップを選んだ後に私が外れと知っているカップを開いて参加者の選択肢から外してやることです。これが私もあなたと同様、どのカップにお宝が入っているか分からない(私が1つ開けるカップが外れとは限らない)場合には上記のことは成り立ちません。

更に注意したいのは、当たる確率についての言及であって、実際には上の戦略が推奨するのとは異なる結果が起きるかも知れない点です。即ち青に当たりが入っていたのに黄へ変えたばっかりに外れてしまうことは起こり得ます。しかし同様の操作を十分に多数回シミュレートすれば、カップを変えなかった回数よりも変えた回数の方が倍近くの当選確率であることを確かめることができます。

自分の中では納得できたけど、この確率的事実を「誰にでも分かりやすいような文章で説明せよ」と言われたら相当に苦労しそうです。また、設定条件が正しく理解されなければ容易に誤謬へ陥ってしまうので、諸条件の提示の仕方も留意が必要になりそうです。この点でここでの書き方や説明はなお誤解を生む要素があるかも知れません。どうにも納得できない方は [1] をどうぞ。
1.「Wikipedia - モンティ・ホール問題
Yahoo!ブログに公開していたのは冒頭のタグからこの項目の直前までの内容である。閲覧回数は不定であり、読者コメントやSNS連携シェアの操作は行われていなかった。テキストの彩色やサイズ変更だけで、記述内容には手を加えていない。

モンティ・ホール問題は「直感的に理解される内容と論理的に導かれる真実が著しく異なる(ように思える)典型的な問題」として知られる。このためパラドックスとして取り上げられることもあるが、確率論の欠陥や不備によるものではないので(パラドクシカルな問題と言うことはできても)厳密にはパラドックスではない。

ブログで記事を制作してみようと思った動機は、この混乱しがちな問題に対してどれほど分かりやすい説明を書くことが可能か自分なりに試してみたことにあった。ブログ記事で登場する紙コップは、会合などを行うときいつでも使えるよう買い置きしておいたものだった。

演出で紙コップを撮影する過程で500円硬貨を集めて写した同時期の映像が存在する。


このことより枚数を数えようと取り出したとき思い付いたのかも知れない。
【 類似する問題 】
これにかなり類似する3囚人問題というものが知られている。[a2]本質的に同じ問題なのだが、モンティ・ホール問題と異なり正しい答が数値で示されるのではなく囚人の下した判断の是非を問う形式になっていることもあり、分かりやすい問題とはなっていない。
出典および編集追記:

a1.「モンティ・ホール問題|Amebaブログ
当初Yahoo!ブログで公開していたが、Yahoo!ブログのサービス終了に伴いAmebaブログへ移植している。

a2.「Wikipedia - 3囚人問題
説明本文中で当初は「3人のうちランダムに選ばれた1人だけ助かることになった」とありながら、看守が「Bは死刑になる」と答える下りがある。恩赦の対象者がランダムに選ばれるも看守が問われて答えるまでに”誰が恩赦で助かるのかを(事前に)知っていた”が本文中に明示されなければならない。

ホームに戻る