連続した整数に含まれる最大素因数

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記事作成日:2008/4/2
最終編集日:2020/6/28
情報この記事はYahoo!ブログで公開していたもの[1]を元に作成されています。

ついこの間、素因数に関する単純明快ながらどこか奥深い内容を含んでいそうな問題に出くわしたので少しばかり考察してみようと思う。
11より大きい4個の連続した整数の中には、11よりも
大きな素因数が少なくとも1つ存在する
これは D. ウェルズの「数の事典」(これは数のレクリエーションを愉しむには古典的な名著である)の p.110 に掲載されている。断定口調で書かれているので、証明済みであることは間違いないと思うが、出典は明らかにされていない。簡単に証明できるものやらどうか分からないし、もしかすると少しばかり考察すれば証明可能なのかも知れない。

自然数を列挙し素因数分解してみると、確かに上の事実が成り立ちそうなことが分かる。それも絶対値が小さなうちは、当然ながら 11 より小さな素因数を持つケースが続出する。しかし先へ進むにつれて、条件を満たす合成数を見つける方が困難になってくる。

11 から先を検証するにあたって、まずそれは当然素数であってはならない。連続する組を見つけるには素数の集団を避ける必要がある。しかし合成数であっても、条件を満たさないものの方がずっと多い。26 のように最小の素因子 2 を持つにも拘わらず、その「相棒」が 11 を超える場合があるからだ。

11 以下の素因数のみで構成される合成数を考えると、結局 2, 3, 5, 7, 11 からいくつかの素因数を組み合わせた形でしか有り得ない。単一の素因数で構成した場合、等比数列レベルで増加していくからこの中から組み合わせても、絶対値が大きくなるにつれて条件を満たす合成数は次第にまばらになっていくのではないかと想像される。即ち、条件を満たす3連続が無限にあるとしても、その分布状況はいくらでも疎になっていくように思われる。

これを検証するもっとも素朴な方法は、配列 D(a,b,c,d,e) を準備しておき、各変数にゼロ以上の任意の整数値を取らせ、N = 2a*3b*5c*7d*11e を計算して小さい順に並べてその分布を調べることだろう。

実演していないものの、かなり速いスピードで疎になっていくだろう。のみならず、その状況は出現する素因数の種類をもっと増やしても恐らく同様と思われる。そして条件を満たす連続合成数の最大個数は、結局、絶対値の小さな「数の幼少期」に依存し、十分大きなオーダーに到達すれば、2連続するものすらゼロ個になってしまうのではなかろうか。

この予想は、以前書いた有限個の素数または素数ベキを2つのグループに分け、差が1になるような分け方を無限に構成できるか?という問いに関連している。出現する素数の種類が少なく、絶対値もさほど大きくないうちは簡単に構成できた。しかし素因数の種類が増えると、構成される積は爆発的に増大するので、差が1になるような組み分けを探すのは非常に困難だし、かと言ってそのような分割は存在しないことを証明することも更に困難であろう。

あまりに一般例が先行し過ぎてワケが分からなくなりそうなので、具体例で説明してみよう。
100 以下の 25 個の素数 2,3,5,7,11,13, ‥ , 89, 97 を採用する。この素因子を自由に組み合わせて
2a * 3b * 5c * 7d * 11e * ‥ * 97y
の如き素数および合成数を作り上げる。(ただし指数はゼロ以上の任意の整数)
そして全部の数値を小さい順に並べ上げたとき、2連続するものはあるとしても有限個である?
・・・という予想である。

そして根拠のない直感的な予想だが、組み合わせる材料に用いる素因数の個数が有限個なら、こうして構成された数値が隣り合うケースも有限個しかないような気がする。隣り合うどころか、最も近接する条件を満たす数値すら、その差は無限に大きくなっていくのではなかろうか。

もちろんまだ数値演習は行っていないが、これとよく似て条件をもう少し緩和させた別の種の問題なら過去に検証したことがある。もちろん証明はできていないものの、その問題にあっては、7〜8桁程度の数値レベルで 10 連続、20 連続 ‥ という数値的な実例が見つかっていた。(甚だ遺憾なことに、この数値データおよび検証プログラムは、去年起きた「ハードディスククラッシュ事件」[2]で全部失われた)

いずれにしろ、この種の問題は「証明も反証もされていない宙ぶらりんな状態」に辿り着くことが多い。素因数の問題は、そのまま素数の分布に帰着される。そして素数分布に関しては、大局的にはどのような性向を持つか解析されているものの、ミクロに見れば大変に不規則であり、その状況を描写する数学的に簡単で扱いやすい記述法がない。このために多くの問題が未解決のままで宙づりになっているのだろう。
《 解説 》
書籍の記述を元にした考察であり、コンピューターによるデータ採取や演習は行っていない。着手する前から満たされるべき条件が厳しいため絶対値が進むに従いいくらでも疎らになると考えていたからである。特に97以下の素因子のみから成る合成数の集合に関する予想は、現在も恐らくそのまま正しいと考える。

後半で「これとよく似て条件をもう少し緩和させた別の種の問題」について触れている。本文にある通り、この検証プログラム(Excel付随のマクロで動かしていた)は2007年12月に起きたハードディスククラッシュにより失われたが、最近の調査でプログラムを走らせた結果の出力データを印刷したファイルが倉庫から見つかった。


このデータによって当時どういう考察を行っていたかの概要が判明した。(後述する)
【 拡張された予想 】
記事の中ほどにある予想は、以下のように一般化される。
素数を小さい順に並べ、n 番目の素数を pn とする。
また、正の整数 k を素因数分解したとき現れる最大の素因数を p(k) とおく。
n の値にかかわらず p(k) と p(k+1) が共に pn 以下となるような k は有限個しか存在しない?
本文中にある p25 = 97 を例にとると、p26 = 101 なので、1から100までの整数に現れる素因数はどれも 97 以下に収まり、この意味で条件を満たす100連続整数が存在していることとなる。しかし周知のように 101 から10個の整数区間に4個も素数が存在し、その先も3桁の整数で合成数が20を超えて開くものはない。それどころか前後の素数差が20となる区間(887の次の907)においても p(889) = 127 のように条件を満たさなくなる合成数が多くなる。結局、条件を満たす連続数は速やかに低下し、最終的には2連続するものさえ極めて疎らになってしまうのではないかという予想である。

実際の演習を行っていないので想像に過ぎない。しかし p(k) が有限な値である限り、それ以下の素数から(指数を自由に選択できるとしても)積を作ったとしても整数全体からみた密度は殆どゼロであるように思う。
【 コンパクトな整数 】
上述のようにデータ採取演習するにも実例が少なそうなことが見えていた。そこで合成数の最大素因数に着目するもののもう少し条件を緩まて、合成数がどれほど「合成的」であるかの指標を作れないか考えていたようである。

素数・合成数の判定法はいくつもあるが、このうちもっとも早くから知られた素朴なものは小さな素数から順に除算を試すものである。素数2は2つおきに、素数3は3個ごとに…の如く現れるから、整数中に充分長い区間を設定したとき小さな素数ほど含まれる個数(あるいは同じことだが素因子として持つ確率)は大きい。だから一般には小さい素数順に割っていき「これより大きな素因数は現れない」と判明する限界まで続ける。その上限は√n を超えない素数までである。何故なら小さな素数から順に除算している限り、√n より大きな素因数を持っていたなら、それ以前の除算でより小さな素因子として得られている筈だからだ。

この「√n を超えない素数」という上限は、整数 n が1と n 以外の約数を持つなら n = a * b と書けること、a ≦ b の元で a の取り得る最大値であることに依る。1 と n 以外のある数 a を素因数として持ち、その相棒たる b = n/a がもう一つの約数であるから、合成数は(重複を許して)少なくとも2個の素因数を持つ。奇妙な方向に定義を拡張しない限り「1.5個の素因数を持つ」ようにはならないのが除算候補としての素数が√n を超えない所以である。したがってある素数の平方となる合成数(p2)は、この素数判定法で最後に合成数と分かる数である。

当時の資料は印刷されたデータしかないので自分で考えたことながら推測になるが、数 n を素因数分解したときの最大素因数について√n を基準の指標とすることを考えた。その上で先ほどの p(k) 表記を併せて以下のような概念を定義している。
定義: p(n)≦√n を満たす整数 n を「コンパクトな整数」とする。
これは全く恣意的な定義づけである。殊に数学では一般に”コンパクト”とは位相空間に関する確立された用語なのだが、当時はそのことを知らずに命名したらしい。素因数分解したとき n に比較して大きな素因数が現れず「こぢんまりと纏まった」イメージからの発想のようである。

すべての素数 p はコンパクトではない。しかし1を含めて p2 は定義の等式部分を満たすからコンパクトである。p(10) = 5 であるから10はコンパクトではなく、30や70はコンパクトである。素因数を多く持つことから過剰数や高度合成数と類似する部分もあるが、28は完全数でありながらコンパクトではない。6より大きな6の倍数はすべて過剰数であるが、2と3以外の素因数が大きな素数であればコンパクトではないから、コンパクトでない過剰数が無数に存在する。逆に p2 は常に不足数だがコンパクトである。

この演習を行うのは容易だったらしく、既にマクロで作成していた最大素因数を取得する関数を駆使して連続的に p(n) を計算させている。比率から言えばコンパクトでない整数がずっと多いのだが、コンパクトな整数が連続する区間をいくつも見つけている。10連続するものが107以下に4組のみ見つかっている。非コンパクトな整数では106の範囲に1つだけ見つかっている。演習では32連続のものが知られている最大であった。本文中に「7〜8桁程度の数値レベルで 10 連続、20 連続 ‥ という数値的な実例が見つかって…」とあるのは、この実例のことと思われる。

以下に10連続する最小のコンパクトな整数群の素因数分解を示す。
4325170 = 2・5・617・701
4325171 = 53・79・1033
4325172 = 22・3・41・59・149
4325173 = 23・173・1087
4325174 = 2・7・172・1069
4325175 = 32・52・47・409
4325176 = 22・3・29・103・181
4325177 = 73・179・331
4325178 = 2・3・11・13・712
4325179 = 19・233・977
連続数が増えると最小解も急激に大きくなる。しかし条件を満たす連続個数に上限はないと予想している。

非コンパクトな数の連続個数の最小解は、コンパクトな数の場合よりも増加スピードは穏やかである。こちらも同様に連続個数に上限は恐らくないだろう。
出典および編集追記:

1.「連続した整数に含まれる最大素因数|Amebaブログ(2008/4/2)
当初Yahoo!ブログで公開していたが、Yahoo!ブログのサービス終了に伴いAmebaブログへ移植している。

2.「過去最悪規模のハードディスククラッシュ発生!!|Amebaブログ(2007/12/5)

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