守っていただきたいこと

補助ドキュメント・インデックスに戻る

記事作成日:2012/3/23
当サイトでは工業用水や溜め池など観察するにはあまり一般的ではない対象を訪ね、写真や動画を採取し、解説を交える記事が主体となっています。こうした種の娯楽がただちに爆発的人気を呼ぶとは思えませんが、送電鉄塔や鉄道、各種遺構など一部の対象についてはかなり以前から先人たちの取り組みがあります。その他の対象にも興味の対象が及ぶであろうことは自然に想像されます。

テーマの設定は取り組む人の興味や得意分野によってほぼ無限に可能なものの、自身が現地へ赴いて観察する点は共通しています。そして多くの場合、寺院や景観などの名所巡りとは違います。訪問対象が一般向けではないために、危険が伴ったり予想しないトラブルに巻き込まれる恐れがあります。

ここでは、同様のテーマ踏査を志す方に注意して頂きたいことをまとめています。それも単に「〜すべき」「〜してはならない」の列挙ではなく、その理由も書き添えています。”何故そうなのか?”を考える習慣は、踏査の意義を深める役割もさることながら、安全な踏査を行う必須条件だからです。

(1) 怪我をしない

怪我を”完璧に”避けるには、危険な場所へ一切行かないことです。しかしそれでは多くの場合テーマ踏査が成り立ちません。大変に興味深い観察対象や、未だ誰も調べていない物件なら、危険を承知で近づきたいと思うものです。私も数多く経験したし、公開している踏査記事でも安易な接近が危険な場面が現れます。それ故に私も”危ないところへ行くな”とは言いません。

テーマ踏査に限らず、日常生活においても我々は経験と学習によってリスクを自然と意識して行動しています。人々の行き交う駅の階段でも不適切な出で立ちで不注意な行動を取れば、転んで怪我をします。このような場所は平坦な歩道に比べてリスクが高いことを心得ているので、普通の人は相応に注意を払って行動します。ある程度の危険が伴う場所を踏査するには、まず最低限この程度の注意力と判断力は求められます。

もう少し危険度が高いと思われる場所での振る舞い方は意外に簡単です。ご自身がその行動を数回反復したとして、毎回必ず安全に遂行できる自信がある場合に限られます。これには現場の状況のみならず、踏査を行う人の身体能力も関係するでしょう。
”ダメかも知れないが一か八かで…”のアクションは、テーマ踏査では有り得ません。予期せず運が味方してくれることを否定はしませんが、最初からそれを期待して行動するのは無謀です。何度か試行してして一度でも運が見放せば、あなたは失敗することになります。

むしろ怖いのは、現地では予想だにしていなかった危険の発生です。太く堅牢な枝だからと判断して体重を預けたら、枝は折れずに根元から抜けたとか、足元は確りしていたが不意に現れた蛇に驚いて転落してしまったなど…このような事態を回避するには、その場で起こり得る危険を想起する能力が必要です。

怪我をして痛いのは本人です。しかし自分だけの痛みとして片付けられない場合もあるのです。元から危険が指摘されながらも訪れる人が後を絶たない物件の場合、そこであなたが重大な怪我を負ってしまったら、それを契機に立入禁止になってしまうかも知れません。そうなるとあなただけの痛みでは済まず、同志が現地を踏査する機会まで奪うことになってしまいます。

元々は自己責任で観察できる筈のものを、危険だからという理由で無闇に立入禁止措置を施すのは、個人的には反対です。しかし重大事故が起きれば子どもが真似をしたら危ないという現地の声が予想されるし、行政としても管理責任が及ぶ前に対処せざるを得ないのが実情です。

(2) 事件を起こさない

踏査対象によっては、民家の近くを進攻する場面がよく起こります。その場合、これから赴こうとする場所(現在自分の居る場所も含めて)が”身を置くことを禁止されていない場所”であることが必要です。何か興味深い場所があるもののそこへ至る経路が唯一で、しかもその場所に立入を拒否する旨の表示があるなら当然進攻はできません。また、明らかに外部からの侵入を強硬に阻むと認められる物理的障壁(有刺鉄線付きフェンス、監視カメラなど)が施されている場合は侵入禁止の立て札などが無くとも一般常識的に進攻すべきでない場所と考えられます。

明確な禁止場所ではなくとも、進攻途中あるいは現地で地元の住民に誰何され、あなたが踏査理由を話してもなお強硬に退去を求められたなら、たとえそこが問題なく踏査できる場所であっても一旦は引き下がるべきです。
もしそこで食い下がり強引に踏み込んだなら、そのときは踏査できても次回あなたを含む別の人が同一物件を訪れようとしたとき、進入路に柵が施され”無断侵入者は警察に通報”の如き札が貼られるかも知れません。

実際には誰でも問題なく進攻できる場所だったにしても、トラブルを起こせばその住民には心証を害されるし、近隣住民にも伝わる恐れがあります。そうなれば仮に現地での聞き取り調査を行いたい場合でも協力的な態度が期待できないかも知れず、現地での怪我と同様、他の同志が踏査を行う障害になってしまいます。

(3) 事件を誘発しない

これは主としてあなたの行動を見ている第三者(特に子ども)に対しての振る舞い方の注意喚起です。

いくらあなた自身が注意深く行動していても、あなたほど注意力や経験がない人が同じ行動を取れば大怪我を負ってしまう事例が有り得ます。特に児童や幼児は大人以上に観察力が優れているものの、身体的特性や学習経験不足から、危険に対する認識度が低い場合があります。大人のあなたなら一跨ぎして越えてしまう側溝でも、幼稚園児なら転落するでしょう。しかも転落して脱出できず大事故になる恐れもあります。経験の浅い子どもにそこまで注意喚起することはできず、大人が配慮してやる必要があります。

子どもが同じ行動を取れば危険だと思われる場所へ進攻する場合は、必ず周囲を見回してください。たとえそこが進攻して問題ない場所でも、徒に子どもの興味を惹いてしまわないような行動が必要です。即ち近くを子どもが歩いていれば一旦足を止め、行きすぎるまでちょっと待ってください。あなたの行動を見て真似をした子どもが怪我を負ったなら、あなたにも責任皆無とは言い切れません。

また、相手が子どもでなくとも踏査中誰かに遭遇し誰何されたなら、事件を避けるためにもあなたの目的を明確に話してください。溜め池の写真を撮りに来た、送電鉄塔を辿っている…等々、あなたの純粋な目的を話して相手に呆れられようが笑われようが構いません。
言葉を濁すのは良くない態度です。仮にそこが私有地だったり民家の近くだった場合、口ごもってしまうと相手には不法投棄物の場所探しをしているのではないかとか、空き巣の下見をしているのでは…と邪推されることになります。

(4) 責任転嫁しない

一連の記事を書いたのは私であり、触発されて現地へ行ってみたくなる方がいらっしゃると思います。あるいは、同一物件ではなくともテーマ踏査の奥深さを理解し、別のジャンルを開拓しようと試みる方があるかも知れません。そのこと自体は大変意義深いし、地域再発見の裾野が広がることは歓迎すべきことです。

しかし、中には稀に「記事を元に現地へ行ったがそんなものは何処にもなく無駄足だった」とか「現地へ行って住民に叱られ怪我も負って酷い目に遭った」というケースがあるかも知れません。

遺構探索など同種のブログやホームページの但し書きで頻繁に見られるのと同様、私も記事を参考に現地へ向かう誰に対しても一切の責任を負わないことを言明します。むしろ再三指摘しているように、現地で重大なトラブルを起こされれば、以後の踏査が困難になってしまい私を含む同志が迷惑します。

責任転嫁する傾向が強い人は、計画性、先を読む力、そして自己責任が要求されるテーマ踏査活動には不向きです。そのような方は記事を読むにとどめ、ネットの上で安全にお楽しみ下さることをお勧めします。
なお、現地への踏査を行わない場合でも一連の記事の信頼性についても同様です。元から誤った情報を知りつつホームページに掲載するわけもなく、予想や推論を交える部分は除き少なくとも9割以上は真実の筈です。たまたま残り1割以下の誤った記述を信じ込んで恥をかいたとしても、その責任を負わされても困ります。
誤った記録を掲載し続けた私などもっと恥なわけですし…

以上、よろしくお願いします。

※ この記事は、当初Yahoo!ブログ版に掲載されていたものに編集追記し作成されました。

トップに戻る