県道宇部空港線・横話

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《 新塚穴橋(仮称) 》
暗渠や排水路を除けば、県道宇部空港線が横断する川は塚穴川だけである。その塚穴川も灌漑用溜め池として造られた夫婦池から流れているので、大雨のとき以外流れる水量は極めて少ない。

地図で塚穴川の横断箇所を示している。


県道は全区間4車線なので、塚穴川を渡ると言っても橋の部分は道路幅よりもはるかに狭い。欄干は地覆コンクリートだけで親柱は存在せず、車で通過するならよほど注意していなければ川と認識できないだろう。


後で観るように下部構造は単純なコンクリート床版である。
ところが…その一部に何故そうなっているのか理解できない構造部分が観察されるのである。

まずは上流側の階段から塚穴川に降りてみよう。
押しボタン式信号のところから左へ入る細い道(市道草江野中線)があり、その護岸の一部が切れていて昇降用階段が設置されている。


護岸の一部が切られて昇降可能になっていた。
脇には増水時には予告無く扉を閉めるとの但し書きが見られる。


護岸の切れ目から階段を伝って下りた。
勘の鋭い人なら何か奇妙な眺めに気付くかも知れない。


こうなっていた。
市道側から見れば普通のコンクリート床版なのだが、下流側の一部に半円形のポータル構造がみられる。


しかも塚穴川は途中から幅が変わり県道交差の中央部付近で倍近く拡がるという奇妙なことになっている。しかし下流側出口ではあの半円形の幅しかない。


立体交差部の真下で塚穴川の幅が拡がっている理由は、後から県道を拡幅して4車線化したからである。海側はそのままで陸地側を拡幅した結果、ラッパ状に拡がった塚穴川の先端部分がコンクリート床版に取り込まれたらしい。

上流側からズーム撮影している。
アーチ状になっているのは河口部のごく短い部分だけのようだ。


階段部分に立って内部を動画撮影してみた。

[再生時間: 20秒]


この構造は意外だった。
後述するように、下流側にあの「半円形構造」があることは恐らく幼少期に海へ遊びに来ていたときから見つけていた。3年前に初めて自転車で訪れたとき下流側から写真を撮っていたが、そのままの断面で上流部まで続いているものと思われていた。

県道を渡り下流側に向かう。


まるで隧道のポータルを思わせる造りになっている。
側面部分はアーチに合わせて後からモルタルを塗りつけたようにも思われた。


右岸側にある階段から降りてみた。
潮が満ちているのでこれ以上の接近はできない。


この時点で半円形構造をしている部分が精々数メートルしかないことが分かる。県道の自歩道相当部分になる。

転落に注意してカメラを差し出して撮影してみた。拡大対象画像です。
画像にマウスをかざすと拡大、ダブルクリックで最大化します。
クリックすれば元のサイズに戻ります。


このアーチ構造は鉄道の立体交差部に見られるものとは明らかに異なる。即ちレンガで巻き立てた上からコンクリート補強したのではなく、当初から現場打ちだったようだ。
側面部分には垂直に立つコンクリート壁があり、アーチはその途中から継ぎ足す形で張り出している。骨組みがなければ安定するとも思えないので、何か芯になるような構造があって後から肉付けするようにアーチを造ったのかも知れない。
天井部分は一定幅の型枠を並べて曲線を造った痕が観察される。スラブ打設時には型枠を保持する仮設材を河床に建てなければならず、施工にはかなり苦労したのではなかろうか。

次の2枚は3年前、初めて自転車で訪れたとき撮影されたものである。


アーチを形成している部分の幅は明らかに県道の車道幅よりずっと短いことがこの写真からも分かる。しかし当時はそのことに気付いていなかった。


水の通り道で隧道様のポータルを持つ構造は、常盤用水路で一般的に観察される。しかし幅広の水路や川を跨ぐ橋で側面がこのような構造をしている例は少ない。
県道妻崎開作小野田線の山陽小野田市街部に観られる

成り立ちからして、現在の車が通れる県道が誕生する以前は塚穴川を渡っていた橋はこの部分だけだったかも知れない。どうしてこの部分だけアーチ構造の橋にされたのかは不明だ。現在は県道のコンクリート床版に併合されて下流側から眺めなければ分からなくなっているが、造られた当初はかなり目立つ橋だったのかも知れない。

名称が判然としないので、上流側にある塚穴橋と思われる橋のすぐ下流側にある県道の橋ということで「新塚穴橋」と仮称しておくことにする。正式名が判明次第書き換えて一般記事として移行する予定である。

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