市道丸尾岐波浦日の山線・横話

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ここでは、市道丸尾岐波浦日の山線の派生記事をまとめて収録している。
《 古い防火水槽 》
現地撮影日:2015/4/28
記事作成日:2015/5/5
本路線の起点付近、恐らくは昔の海岸べりの道だった路地に何処にでも見かけそうなコンクリート槽のようなものがある。
写真は去り際に撮影し直したショット。


位置をポイントした地図を示す。


タイトルの通りこれはちょっと古い防火水槽というだけで特に著名なものとは思われない。郷土マップに掲載されているわけでもなく、予備知識なしにここを通りかかって撮影した行き当たりばったりの物件である。どうして撮影するに至ったかの経緯を以下、時系列で書いておこう。

この日はまだ一度も訪れたことのない丸尾漁港を撮影し、ここから近い三神公園への移動途中だった。
先を急ぐ理由もなかったから昔からの道のように見える一本内陸部の細い道を通っていた。このとき冒頭に掲載した防火水槽の前を通った。

何か古めかしいコンクリート水槽だなぁーと思いつつ最初は通り過ぎた。
実際、最初に撮ったのはこの一枚だ。自転車で一旦は通り過ぎたもののこの物件は何となく私を振り返らせた。


コンクリートの防火水槽なんてそう珍しいものではない。新規に設置されることはかなり少なくなっているが現在も郊外の結構あちこちにみられる。赤い円形の鉄板に「防火水槽」などと白抜き文字で描かれた看板を観たことがあると思う。しかしこの水槽は如何にも古そうに見えた。外壁部のコンクリートの日焼け具合で分かる。

それでちょっと戻って2枚目のこの写真を撮った。
これっていつ頃造られた水槽なんだろう…


恰も私の問いかけに返事をするが如くその回答がすぐ近くにあった。
何か文字が書かれているらしいことに気づいていたからである。


昭和廿九年九月竣工と刻まれていた。
文字部分のズーム映像はこちら


昭和29年と言えば既に60年以上経っている。その年号は見かけの古さに呼応するものだった。
しかしなお不思議に思ったのは、こんな一見何処にでもあるようなコンクリート水槽に竣工年月を記すものだろうかという疑問である。それは竣工記念碑のような大層なものではなく、ごく簡潔にコンクリート壁の側面に棒きれのようなもので描かれていた。最初、古い落書きだろうかと思ったくらいである。

竣工年月を記録するくらいなら、よほど重要だったか当時待ち望まれた構造物だったのだろう。
水槽のように見えるこの構造物の正体は一体何だろうか?

現地では外観そのまんまで防火用の水槽ではないかと推測した。
その理由としてまず上部にマンホール蓋のようなものが置かれているからだ。


蓋は恐らく開口部を塞ぐだけのサイズだろう。そのままだと子どもが開けて中へ落下する危険があるからか、容易には開けられないように墓石みたいな大きな石材が載せられていた。

ここまでの写真からも分かるように上部は全体を覆うようなコンクリート板構造になっている。しかも同じコンクリートながら蓋部分と側面では色と材質が違う。恐らく当初は蓋のない水槽で外側に柵などがあったのだろう。

防火用水槽ではないかと判断するもう一つの根拠がすぐ近くにあった。
このコンクリート桝の市道を挟んで反対側には消防器庫のようなものがあったからだ。


内容的にはこれだけで、年号が刻まれているということ以外特に興奮を呼ぶ構造物ではない。一連の写真だけ撮っておいて特に記事化までは考えていなかった。
アジトへ戻り、このようなマイナーに思えるネタを投げてどの程度の反応があるのかリサーチすることも兼ねてFBページ側へ写真付きで提出してみた。
この防火水槽を理解する読者が少なくともお二方いらした。
今や600人を超える読者が入れ替わり立ち替わりで閲覧して頂けている中、確証をもって情報提供して頂ける方の存在があったのは驚くべきことだった。この地区在住か消防関連の仕事に携わっていらっしゃるかだろうか…
予想通り如何にもこれは公設の防火用水槽ということだった。さすがに建築当時のことは分からないにしてもかなり詳細な情報が寄せられた。

見かけによらず中には約50m3の消火用水が貯留されている。これは四畳半換算で3部屋分程度にあたるというから結構深い水槽ということになる。常用されているわけではないが現在でもいざという時には使える現役設備となっている。[1] 西岐波地区の給水が完工したのは昭和33年、東岐波地区はその翌年より一部給水が始まっている状況だった[2] から、昭和29年なら火事などの非常時の貯水が重視されていたのだろう。

FBの投稿は個人のタイムラインもページも時系列で一元配列され、古い記事はどんどん後ろの方へ追いやられる。特にページに関しては古い投稿は後から探せなくなってしまう。[3]せっかく現状が分かる方の情報を頂いておきながら参照できなくしてしまうのは勿体ないので派生記事として作成した次第だ。この物件はカテゴリ分類が困難だし追加情報を書くこともなかろうからこのまま派生記事のままで終わるだろう。
出典および編集追記:

1.「FBページ|2015/5/3のタイムライン(要ログイン)

2.「宇部の水道」p.181

3. FBページに投稿された日々の情報は近日分はそのままページ繰りで閲覧できるが、日付が古くなると数日分に対して一投稿の掲載程度まで間引かれる。自分のタイムラインにも同様の処理が行われているが、まとめられた日付のリンクを展開することで参照可能である。しかしページの方はその機能がなく、間引かれた投稿分はパーマネントリンクを得る手段がないため参照不可能となってしまう。
酷い不具合とも言えるが今後の改訂で変更されるかも知れない

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