亀浦水路(仮称)

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記事作成日:2025/12/31
最終編集日:2026/1/5
亀浦水路(仮称)は、夫婦池の灌漑用水を供給する用水路である。
写真は住宅地の下を流れる水路。


夫婦池の築堤された大正6年にあわせて造られ、則貞、草江、亀浦方面を灌漑した。常盤池の切貫から流れる経路(西幹線)、本土手より流れる経路(東幹線)をそれぞれ第一幹線水路、第二幹線水路と呼ぶのに合わせて、亀浦水路は第三幹線水路と呼ばれていた時期もあった。[1] 建設当時は途中に隧道やサイフォンを有する大規模なものだったようで、工事代金は石炭掘削に伴う陥没などの補償金を積み立てておいた代金が充てられている。

水路幅は深さ50cm、高さ50cm程度で、コンクリートとレンガの混成である。水に浸らない部分には一部に桃色レンガが使われている。用水路の素材として桃色レンガが使われるのは珍しい。沖宇部村エリアは多くの炭鉱があり、低コストで製造される桃色レンガが素材として多用されたと考えられる。

亀浦水路は既に機能していない。用水の取り出し口からの水路が大きく破損し、堰堤下より漏れ出た水と合わせてそのまま塚穴川に注いでいる。下流側も土砂などで殆ど埋まり線形が分からない区間がある。 住宅地の間を流れる区間は現在もそのまま遺っていて、降雨による雨水排水路としては機能している。この区間はレンガ水路にコンクリートの袖壁を打ち継ぎ足す形である。隧道やサイフォンの区間は今のところ知られていないので、宅地造成などで改変されたと思われる。
《 経路の概要 》
推定される用水路の経路を地理院地図に重ね描きした画像を示す。は後述する取り出し口の桝、破線は暗渠またはサイフォン、水色の実線は開渠を表している。
流路のGeoJSONデータは こちら


今まで調べられている範囲で、用水路は塚穴川の右岸側中腹を流れている。水路の末端部が何処に接続しているかはまだ調べられていない。サイフォンがあったとすれば、上の図の2番目に現れる破線の区間と推定される。まだ全線を追跡できておらず、途中で土砂に埋もれて分からなくなっている区間もある。
【 用水取り出し口 】
夫婦池の堰堤右岸側寄りにある。


取り出し口自体の高さは堰堤の下部に近く、現在の国道路面との高低差は10m以下である。

内部の様子。
奥で右に曲がっている。


この構造は、当初開渠であったものを後から上部を覆ったためと考えられる。用水取り出しの隧道を曲線で造ることはほぼあり得ないので、元は右岸側の地形に沿って流れる開渠であったものを、後年の国道整備で堰堤幅を拡げた部分の法尻が開渠にかかるので、その区間をスラブを追加したのであろう。内部の水路断面は下側がレンガ積みで上部がコンクリート打ち継ぎ足し構造になっていることからも分かる。

暗渠内部をズームした上でのフラッシュ撮影画像。
一番奥に断面が円形に変わる部分が見える。


この部分はスラブを追加施工する前の用水取り出し口と思われるが、詳細はもっと近接して撮影しなければならず危険を伴うためまだ実施されていない。

暗渠化したのは堰堤上を通る道路の影響であろう。
地理院地図の航空映像を参照すると、昭和30年末版では堰堤上の道路は対面交通仕様だが、昭和40年の末には常盤公園入口三差路まで現在と同じ4車線仕様に変わっている。4車線化は夫婦池側に向かって拡幅しているので、この暗渠区間は下流側を盛土して対面交通仕様にした昭和中期と推測する。側面の石積みも同時期であろう。

夫婦池の樋門からこの排出口までは(常盤池の本土手と同様に)まったく観察できない地中化を通っている。どのような構造になっているかは資料がなく分からない。
【 開渠区間 】
取り出し口を出た直後の水路。
基礎がからげていて水が漏れ出ている。


開渠部分の天端の様子。
レンガの基本の1個半ほどの幅で積まれている。


レンガ積みは沢地側だけで、山側はコンクリート壁である。コンクリートには丸みを帯びた河原の石が含まれ、海砂か川砂を採取して造られたものであることが分かる。

これより下流側は土砂や枯れ葉が詰まって何処を通っているか分かりづらい。女夫岩の滝の下に向かう道との交差部には、小さな石橋が架かっている。これより住宅地に入るまでの区間は部分的に消失していて充分には調べられていない。
【 宅地通過区間 】
引き続き塚穴川の刻む谷地の右岸側中腹に沿っている。住宅地に接する場所の殆どは山側が練積ブロック擁壁で、山側がコンクリートで谷側が桃色レンガ積み構造である。

道路の下を横切る部分はコンクリート水路となっていて、恐らく宅地開発時に改変されている。


宅地側は練積ブロックで谷側にレンガ積みした構造が多い。
水路の底はコンクリートであり、これは取り出し口付近も同様である。


水路内に蹲踞し下部構造を撮影している。
下側2段程度にコンクリートを塗りつけ、水に浸らない上側は桃色レンガのままにしている。


素材としての桃色レンガの総括記事でも触れているように、桃色レンガは石炭の焼却灰を漉き込んで日干しして造られており焼成していないことから水濡れには弱い。水に濡れる部分でなくても桃色レンガを水路に使うこと自体が稀であるが、沖宇部村エリアでは他の水路でも同様のものがみられる。
出典および編集追記:

1.「わたしたちの宇部・昭和36年度版」(宇部市教育委員会)p.21〜22

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