厚東川ダム取水口(宇部丸山ダム向け)【1】

工業用水インデックスに戻る

現地撮影日:2009/6/13
記事公開日:2011/12/14
注意この記事および後続記事はかつてYahoo!ブログに公開されていたものを移植しています。
誤記などの修正や読者コメントとリンクの除去以外は原文のまま掲載しています。

時系列では「厚東川ダム・右岸曝気循環設備棟」の続きとなる。 その後車を転回し、再び狭い県道を戻って一度は見逃してしまった建て屋の前に戻ってきた。


ここまで到達するにあたって、先の曝気設備以前も含めてただの一台の車にもすれ違わなかった。だから車の離合さえ可能なら、カーブの広い場所に車を停めることに躊躇はなかった。そこで行儀は悪いがカーブの外側へ逆向きに車を停めた。

この建屋のすぐ傍に取水口がある筈だ。
建屋は後で観に行くとしてまずはダム湖の方へ進んだ。

入江状の周囲はブロックの護岸で固められ、県道からも見えていた。湖側のガードレールは切れていなかったが、草が刈られていて点検用の階段を見つけるのに手間はかからなかった。


ガードレールを跨ぎ、下を覗き込んでみる。かなりの高低差があるし階段も急勾配で足がすくんだ。

階段はチェーンが張られ、関係者以外は立入禁止とでも言いたげであった。しかし施錠はなく、階段の脇をすり抜けるなりチェーンを跨ぐなりして階段を降りることができそうだ。
チェーンを跨ぎ越したが、足を引っかけて転落する恐怖が過ぎり、慎重にも慎重を期して跨いだ。階段の下はすぐ護岸で、天端幅もそれほどないので、躓きでもすれば須く湖面へ連れて行かれるだろう。


階段部も足元を確かめて慎重に降りた。

天端まで降りてきた。今降りてきた階段を横から写している。
県道からここまでの高低差は7〜8m位、コンクリート護岸から湖面までの高低差は2〜3mといったところか。


階段を降りるときから、取水口の様子は見えていた。
この先に続くのは紛れもなく4m×4mの有圧隧道であるから、スクリーンもそれなりに巨大である。護岸部分まで含めて写真に収めるためのアングルに苦労した。


この鋼製スクリーンは、厚東工業用水を知る上で最も重要かつ専門的な例のパンフで既に知っていた。しかしパンフの写真とは随分異なる印象を受けた。パンフの方はゲート上の練積ブロックがハッキリ写っていたが、現地ではツタ性植物にかなり蹂躙されていた。

この現地踏査は最近あった大雨以前に行われている。そのせいかダム湖の水位は低い。
鋼製スクリーンの青色が抜けている上端まで湖水が来るのが普通で、パンフの写真もその高い水位のものが掲載されている。最高位の水位よりは2m弱ほど低いようだ。


写真でも分かる通り、スクリーンへ安全に接近する術はない。コンクリート護岸の天端を伝うのは、足を捕られやすいツタ性植物に包囲された現状ではあまりにも危険過ぎた。

スクリーン周りの護岸はどこも急斜面を持つ現場打ちコンクリートもしくは練積ブロックで固められている。想像するもおぞましいのだが、万が一転落した場合スクリーン横のコンクリート壁は足場が全くなく、登攀は不可能。両脇の練積ブロックには表面に模様こそあるものの、濡れた足では滑る上に手がかりもない。

もちろん周囲に民家などないし、県道を通行する車の稀少性は先に述べた通りである。再上陸するには、何処にあるやらも不明な自然の護岸を求めて泳ぐ以外ない。湖水に殆ど動きはないせいか嫌らしく藻の色に染まっている。そうでありながら、どれほどの深みを持つやら想像もつかない。正直な話、こうして護岸に立ってデジカメを構えていても恐怖を覚えた。
それほど危険が予想される場所なのでここへ足を踏み入れることはお勧めしない

鋼製スクリーン部分をズーム撮影する。 スクリーンの下部は経年変化で一部は錆びつき、当初塗られた水色も汚泥で薄茶色に上書きされていた。


ほぼ予想されたことではあったが、スクリーン前の湖水に動きはなかった。即ちダム湖の水がこの有圧隧道を経てどちらへ移動しているかは判然としない。

しかし小野湖側が「厚東川ダム取水口」であり、丸山ダム湖側が「宇部丸山ダム注水口」と名付けられていることから、ダム湖水の相互運用とは言っても小野湖側から丸山ダム湖側へ流れる動きが殆どだろう。丸山ダム湖からは有帆方面へ自然流下する厚東川2期系隧道によって山陽小野田市へ原水を供給しているからである。

常時山陽小野田方面への水需要に応えているとは言っても、ダム湖全体からの水量に比べれば微々たるものである。スクリーン前部で有圧隧道へ流れ込む水の動きが目視できないのも当然だろう。

この入江部分に連結された浮きが並んでいた。
恐らく湖底に網を垂らしていてゴミなどが侵入するのを防いでいるのだろう。


対岸に何やらダムに関係在るかどうか分からない設備が見えた。

ズーム撮影する。
露出した土の斜面に鋼製梯子のようなものが見えていたが、ここからでは詳しいことは分からなかった。


さて、私は先ほど車を停めた先にあった建て屋を調べるために階段を経て県道に戻った。

先ほどの建て屋である。
8m四方くらいのサイコロ型の建て屋に青いプレハブの作業小屋みたいなものが載っている。


入口にやや低めのフェンス門扉があり、施錠されていた。
しかし殆ど人の出入りはないせいか敷地内は雑草の楽園で、フェンスと門扉の間も普通に通れる隙間があった。
フェンス自体そう高くないので、この隙間を使って片足ずつ跨ぎ越した。


この建屋が先のスクリーンを経て丸山ダム湖方面へ伸びる有圧隧道の真上に建っているのは間違いないだろう。ここで水量計測などを行っているのだろうか。
建屋には必要最小限のドアと窓しかなく、外側に面した階段などはない。屋上のプレハブも内部から昇降するようだ。入る前からこれといった成果が得られそうにない感触があった。
正面にある大きな建屋は横に出入口があったものの、当然施錠されているし内部は全く窺えなかった。

その奥に隣接する小さな建屋の玄関らしき入口。
倉庫のように見えて、何故かきちんとした玄関の外灯まで備わっている。


裏に回ってみた。
この真下に圧力隧道があるはずだが、地上からは何らの痕跡も窺えない。その先は急峻な地山なので、従来工法で隧道を掘ったのだろうか。


その奥はあまりにも雑草が深い上に周囲も暗く、踏み込む気が起こらず引き返した。

踏査にはまったく関係がないのだが、この雑草だらけの敷地にはヘビイチゴが沢山見受けられた。


結局、この敷地内には圧力隧道に関する何の情報も得ることはできなかった。

願わくば建屋の内部、それも可能なら圧力隧道そのものを見てみたい。しかしそれは恐らく物理的に適わないだろう。どのような方法で水を相互運用しているか未だに不明なものの、圧力隧道の内部は常時ダム水で満たされている。定期点検することがあっても双方のゲートを閉じて用水を排除し、内部を調査することがあるかどうか分からない。

追加の成果が得られたならまた記事を起こすことにしよう。
出典および編集追記:

1. 企業局作成による「厚東川・厚狭川工業用水道 事業概要」パンフレットでも経路図はこのように記載されている。破線が厚東川ダム堰堤から記載されている理由は分からない。この方面からの枝線が繋がっている可能性は恐らくない。また、宇部丸山ダム側の注水口まで破線が描かれていない理由も不明である。

ホームに戻る