荒来橋

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記事作成日:2016/11/21
最終編集日:2020/8/3
荒来(あらき)橋とは吉部の荒滝地区と小野の来見地区を連絡する橋である。
写真は荒滝側からの撮影。


橋の中央部をポイントした地図を示す。


荒来橋という名称は吉部地区の荒滝、小野地区の来見(くるみ)から一文字ずつ取った合成呼称である。架橋に両岸の地区が大きく関わっているような場合、命名は両岸の地名を元に採用する例が多い。[1]したがって地名としての荒来は存在しない。
《 概要 》
現在の荒来橋は豪雨などで川の水位が上昇した場合、橋そのものが水面下に沈むいわゆる沈下橋である。このため増水すれば橋の部材を撤収する手間が要らない代わりに(安全には)渡れなくなる。上流からの流木などが引っかかるのを避けるため当初から欄干が付属していない。橋の側面や橋脚も水流を逃がすような三角形状となっている。このような種の橋は四万十川などではかなり著名であるが、市内では現在も供用されているものは殆どない。[2]

橋の幅は1.5m程度しかなく、また県道側の取り付け道路部分も近年の護岸工事で階段に変更されたため四輪の通行はもちろん二輪の押し歩きも困難である。里道としては存在していることは確からしいが、どの程度通行需要があるかは調べていない。

旧楠町相当に存在する案件のせいか、荒来橋の市民における知名度はかなり低い。そもそも市内に沈下橋が存在していたこと自体かなり驚きを持たれたようで、FBページに投稿したところ読者からの関心がかなり高かった。[3]
《 橋の成り立ち 》
以下の記述は[4]および荒滝地区在住者からの聞き取り情報[5]を元に記述している。

最初期は恐らく定まった橋のない川と同様浅瀬伝いに渡っていたと思われるが、明治期には川の石を寄せ集めた簡素な橋脚に厚い板を載せた橋があったとされる。豪雨などで増水したとき、部材が流されないように板材を3枚にまとめて両岸の樹木にくくりつけ、水位が下がると両岸から再び橋の部材を人力で橋脚に載せていたという。それでも幾度か橋が流されることがあり、橋の補修は中央より半分づつを荒滝地区と来見地区との折半で賄っていた。

両岸の往来が相応にあった昭和期に入ってもそのような状態で、通行に不便で危険なため両岸の住民が楠町と宇部市に陳情し昭和41年に現在の潜水式の橋が設置された。一般的な架橋では川面より相応な高さで四輪の往来も可能なように設計するものだが、荒来橋は当初から精々二輪の押し歩き通行程度の規模である。往来需要とコストの兼ね合いからと考えられるが、両岸ともに居住区が川面からそれほど高くなく、高い橋を架けられなかったという事情も考えられる。

来見地区には商店がなく、荒滝側には橋を渡った袂に亀山商店と理髪店(現在は休止中)がある。このため昭和後期あたりまで来見地区から荒来橋を渡って買い物に来る客が多かったという。数年前に県道沿いにコンクリート護岸が造られた後も往来を考慮して荒来橋に向かう里道部分は階段状になっている。
《 アクセス 》
荒滝側からのアクセスが容易である。

船鉄バスの荒滝バス停前から近い。橋へ至る里道はコンクリート護岸が階段状になっているのですぐ分かる。周囲に車を停められる場所がないので、県道より一つ山側を通る市道中荒滝線の分岐点へ通行の邪魔にならないように停めて歩く。


来見地区からは橋までかなり距離がある。来見地区のほぼ中央に戦闘機墜落の慰霊碑と耕地整理記念の石碑がある十字路から厚東川方面へ下る川筋があるが、この農道は荒来橋より下流側へ接続されていて橋に至るまでの水路沿いの道は藪化していて歩行困難である。
初めて荒来橋を訪れたときの現地時系列レポート。2016年11月16日踏査。全2巻。
時系列記事: 荒来橋【1】
《 個人的関わり 》
各地のふれあいセンターに置かれている郷土マップを見て現地へ行ったのが最初である。過去に県道のこの場所を通過したことは一度くらいはあると思うが、荒来橋の存在には気づいていなかった。

2020年7月にサンデーうべのコラムが50回目を迎えたのを機に、コラム題材にして欲しい物件を求めたところ吉部地区を取り上げて欲しいという意見を2件頂いた。そこで以前より計画のあった荒来橋を Vol.51 として配信している。折しも7月は長雨に見舞われて荒来橋が完全に沈下している様子を採取できた。コラム本文そのものは早々に書き終えており、8月上旬という今までにない早めの提出となった。
出典および編集追記:

1. 同じ厚東川筋の下流にある倉子橋(ただし銘板プレートが逸失している)は、吉部地区の鍋と小野地区の二原から取ったと考えられる。厚南の州畑橋は中州郷と小畑領からの命名であろう。

2. 真締川の上流には同様の構造となっている無名の橋が確認されている。また善和川の字打越にも同種の橋が見つかった。

3.「FBページ|2016/11/21の投稿

4.「ふるさと吉部ガイドマップ」(吉部文化財マップ作成委員会)15番

5.「FBタイムライン|荒来橋の撮影中に地元在住者から情報が寄せられた(2020/7/16)

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