荒来橋【1】

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現地撮影日:2016/11/16
記事公開日:2016/11/22
総括記事で先行して書いたように、荒来橋は厚東川に架かる沈下橋である。そして沈下橋を公表しているわけではないが、似たような種の橋が真締川の上流にあることは知っていた。
この案件をFBページ側に投稿したところ、思いの外反響があった。沈下橋という存在は知られていたもののそれが宇部市内該当地区にあるとは思われていなかったらしい。近くを通ったら立ち寄ってみたいという声もあった。そこで当サイトでも総括記事と現地踏査の時系列記事を個別に作成することとした。[1]

私がこの橋の存在を知ったのは今年の8月に東吉部地区を訪れ、郷土資料「ふるさと吉部ガイドマップ」を手にしたときである。マップには現物の位置とモノクロ写真、解説が添えられていた。もう少し正確な位置を知るために、まずはYahoo!の航空映像を参照してみた。

これが荒来橋の航空映像である。


県道小野田美東線の荒滝集落にあり、地図ではバス停の記号が描かれている近くであった。次に Google のストリートビューで画面上で県道を「運転」してみた。ストリートビューには橋は写っていないが、バス停付近から空撮モードへ移行すると間違いなくその橋が見えていた。バス停は個人商店らしき手前にあり、その端には車が停められるスペースが見えていた。また、厚東川の方向にはガードレールが切れている場所があったので、ここから降りられるだろう…というところまで現地の行動を想定していた。

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荒来橋の吉部側は荒滝集落なので荒滝山からは遠くない。そこで荒滝山に登った後、帰りに立ち寄るスケジュールを組んでいた。天候はまったく申し分のない快晴で、登山後の疲れもほとんどなくほぼ当初の予定時刻をもって荒滝集落に向かっていた。ところが…総括記事にも書いていたように想定外の事態で当初の行動計画が狂うことになる。
県道の工事で現地が様変わりしていた。
総括記事に埋め込んだストリートビュー画像とほぼ同じ場所で採取した現地の映像である。


Google ストリートビューではバス停すりつけも右側のコンクリート護岸もない状態で写っているので、まず車を停められる場所のあてが外れた。
県道のこの辺りは直線区間で、運転していて早くからストリートビューと違うことに気がついた。後続車両もないほど交通量の少ない県道なので、かなり減速してバス停付近を眺めることはできた。しかしバス停外の余剰地は歩道で分断され、車が置けないようにポストコーンで塞がれていた。反対側にあった筈のガードレールもすべて撤去されてコンクリート壁に置き換わっていた。車を置ける場所がまったくなく、そのまま一旦走り去る以外なかった。

県道から枝道は何本か出ていたが、どれも幅が狭く車を置けば邪魔になるのは明らかだった。かなり先の方で車を転回させ、再びバス停付近に戻ってきた。コンクリート壁は県道に沿って延々と続いていて車を寄せられる場所は皆無である。
通りすがりならもういいや…ってなるところだが、そもそも橋を観るために遠回りして車を走らせたのだから諦める選択肢はない。往来の車には歓迎されないのを承知で思い切りコンクリート壁に寄せて車を停めた。

ハザードを出して車を停めているところ。
コンクリート壁の切れ目が見えたのでそこで車を寄せたのだが…中へ入ることはできなかった。


いやはや…こんな中途半端な場所に停めるくらいだったらバス停の中に停めた方が潔かった。現地は見通しの良い直線で駐車禁止にもなってはいなかったが、私が車から降りてまもなく大型車が数台連続してやって来た。更にまずいタイミングで対向車もあったために、私の車が邪魔で大型車2台を一旦停止させてしまう羽目になった。運チャンから「こんな所に車停めやがってangerって思われただろうなぁ…

さて、気を取り直して行動開始だ。
ここへ車を停めたのは仕方なしの面があったのだが、転回して引き返すときコンクリート壁の切れ目にアルミ門扉らしきものがあることに気づいていたからだ。


これって…荒来橋に通じる里道なんだろうか。もしそうだとしたら…この橋ってもう誰も通っていないのでは…そう感じさせるほど先行きは塩梅の悪い状況だった。門扉はコンクリート壁を施工したとき一緒に設置したらしくまだ新しい。ラッチで固定されていたが鍵は掛かっておらず容易に外れた。

少し進攻したところ。
いや、行って確かめるまでもない。こんなの無理です。行きたくありませんっ (>_<);


藪を突っ切れば橋のところまで出られるのかも知れないが、何しろ足下がまったく見えない状況だ。まして今回は山登りを想定してはいたものの藪漕ぎなど考えてなかったので、履いているズボンはホイトプルーフではないタイプだ。このまま進攻したらほいとだらけでエラいことになる。

いくら里山の往来が昔ほどなくなったとは言っても、郷土マップに掲載されている案件ながら現地への接近すら不可能なほど荒れているなんてこともないだろう。多分これは無関係な個人の敷地で、コンクリート壁で締め切ったら出入り不能になるので転落防止柵を門扉タイプにしたのだろう。大体、里道の入口に門扉があるなんてのもおかしい。
引き返し門扉を元通りにして県道から厚東川の方を眺めた。しかしコンクリート壁の外側は藪化が酷くて橋どころか水面すら見えなかった。

もう少し個人商店寄りのところだろう。県道を渡ってバス停沿いに歩いた。
本来ならこのバス停の端に車を留め置いていたところなのだが…


実はストリートビューを眺めていたときからこの辺りじゃないかと推測する根拠となるものを見つけていた。ここまで掲載したどの写真にも写り込んでいる家庭向けの電信柱である。

バス停のほぼ真上を県道や厚東川とは直角方向に電線が伸びている。
何もないのにわざわざこんな送電経路を設置する筈がないだろう。


電線が川を横切っているのは、対岸側に電力が必要な何かがある証拠だ。そして橋が近くになければなるまい。そうでなければメンテナンスのとき橋のある場所まで迂回しなければならないので。

実際、電信柱の立っているすぐ横だけコンクリート壁が階段状に加工されていたのである。
これはもう決定的だろう。


再び県道を横切って階段を上がったところ…見えてきた。
やっぱりここで良かったんだ。


ストリートビューなどで現地を運転して確認しても、その後に工事などで改変されればこういった事態が起こり得るという見本である。ただ、現地は何かの工事が始まっているかも知れないという感触はあった。[2]

ストリートビューには写っていなかったコンクリート壁。
恐らく厚東川が増水したとき県道の際まで水に浸って荒滝集落が脅かされるなどの事態があってのことだろうか。
もう少しコンクリート壁を川の方へ寄せた方が良かったのでは…現状では大型が二輪を追い越すとき路側が狭すぎだ


荒来橋への県道取り付け部。
ここだけコンクリート壁が切り欠かれて階段になっている。里道がある証拠とも言える。


さて、いい加減引っ張って来たんでそろそろ行ってみようか。
画像もいつもながらの標準サイズで。


階段から先は自然の河原特有の荒れ地で、川面近くまで下ったところでコンクリート路に変わっていた。

コンクリート路は橋に対して直角のスロープとなっている。
橋だというのに高度を上げるのではなく逆に下っていくというのが如何にも沈下橋らしい。


荒滝側から撮影した橋の様子。
上流側に川まで降りるためのスロープが設置されている。


渡る部分は平面で欄干は付属しない。橋脚がある部分はツノが出たような構造になっている。
高さは河原に対して80cmくらいだろうか。


半分以上渡りきったなら、そこからは小野区の来見地区になる。かつては宇部市と厚狭郡楠町を連絡する橋だった。
荒滝地区のある東吉部はかつて楠町に属していて、宇部市に編入されて今年が12年目である。現在なら単一行政区で橋を設置するのも協議は容易だろうが、架橋年の昭和41年当時は建設に係る費用負担の問題などもあったのではという気がする。

来見地区側にはホースのようなものが橋の袂に浸けられていた。
用水を汲み上げているのだろうか。


岸辺近くで流水に浸ったまま放置されていたコンクリートの筒のようなもの。何だろう…
畑の水を溜める目的でよく置かれているのを見かけるが、川の中にあるのは…さすがに分からない。


来見側では橋を渡ってすぐ山道になっていた。
先ほどのホースが繋がっているらしい小屋が見えている。


建築ブロック造りの小屋で、電気メータが設置されていてパイプが繋がれているとなれば…これは地区の灌漑用水向けのポンプだろうか。


ここから先の道は‥さて、何処へ繋がっているやら分からない。
自然の礫石を積み上げた石垣らしきものが見えている。


山道はそれほど酷く荒れていないので、普請する人が居るか相応に通る人の存在があるようだ。
もっとも先を辿るときりがないのでここで引き返した。

(「荒来橋【2】」へ続く)
出典および編集追記:

1.「FB|2016/11/21のタイムライン(要ログイン)

2. Yahoo!地図で現地を眺めると県道のこの区間だけ道路の外側に破線が記入されている。


道路の線形改良などの工事が予定されている場所はしばしばこのように記載されている。
既に工事は終わっているのでいずれ破線は消去されるだろう

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