塩田橋

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現地踏査日:2012/4/29
記事編集日:2014/4/14
「えんでんばし」ではなく塩田(しおた)橋である。
塩田は小字に由来しており、その名前からしてかつて製塩を営んでいた地ではないかという想像が巡る。

塩田橋の位置を地図で示しておこう。


この道は市道神原町草江線であり、斜めに横切るのは塩田川である。川の名前と橋の名前が一致しているということから、塩田川に架かるもっともメインな橋という存在らしい。
しかし塩田川はそれほど幅のない水路そのものなので、橋もそれなりである。

市道の下り線の歩道から撮影している。
左脇かすかに見えかけているのは神原中学校のグラウンドである。


市道の下り線側の欄干に橋の名前プレートが取り付けられていた。


こちら側が上流になる。
河川というか水路は二重構造になっていて、通常は幅狭な水路を流れる。増水したときは外側の護岸一杯に流れるのだろう。


二重構造の上段部には増水したとき上流から運ばれた土砂が運ばれるらしい。元は土がない場所なのに堆砂を糧に雑草が蔓延っている。大した生命力だ。

市道は大変に交通量が多く、車の切れ目を見つけるのは容易ではない。そんな中、たまたま反対側へ渡れるタイミングに恵まれた。


上流側と同様、塩田川に沿って砂利道があった。しかし通り抜けが出来ないのか私有地になるからか、侵入禁止の標識が立っている。


向かって左側に河川名を示すプレートが見える。


右側は平かなで表記された橋の名前。
「しおたし」と濁点表記されている…今まで見てきた平かな表記では大抵「しおたはし」のようになっていたのだが…


河岸段丘状になったサブの護岸は流水に洗われたのか清掃されたのか草が殆ど生えていない。


上流側を振り返って撮影。
塩田川は市道を斜めに横切っており、カルバートを据え付けた痕跡が路面に現れている。


川の両側にある細長い通路状の先がどこへ抜けられるのか気になったが、市道走破の途中だったので自転車の元へ引き返した。


塩田川のこの区間の整備は平成初期である。市の管理する川(水路)なので護岸整備工事は市から発注されていた。
河川の排水機能一本槍という考えから若干軌道修正し、景観に配慮された造りになっている。両護岸に設置された柵がその代表格で、通常のネットフェンスではなく擬木の柵になっている。

以下の2枚は3年前に撮影された写真である。”河岸段丘状エリア”に草が生えていないだけで現在と大きな変化はない。


竣工から相対的に経過年数が短いからか、護岸は新しく見えるし両側の空き地部分も草が生えていない。
しかし景観に配慮はされているものの、この区間に限って言えば親水機能を考えていなかったようだ。護岸からの降り口が見あたらない。
これより後年に整備された流川の西園にある中原橋付近は汀まで降りられるようになっている

塩田川の下流域ではこれよりもう少し景観的に考慮されていたと思う。あるいはこの空き地部分も整備され散歩道の一つになるときが来るかも知れない。
《 塩田について 》
記事編集日:2016/8/19
塩田(しおた)はこの橋の近辺にかつて存在した小字である。派生する小字として大塩屋[1]向汐田が知られる。また、同地区を流れる塩田川は現在も一定の知名度を持つ。いずれも「しおた」と読み「えんでん」と音読みされることはない。同様の読みの地名として床波地区に潮田(しおた)が知られる。

名称からすれば製塩が想起されるが、本編の冒頭に記載した内容に反して[2]この場所で組織的な製塩が営まれたことはない。ここでの「しお」は海の潮を意味している。即ち大潮や河川の氾濫などで海水が遡行し、田に潮水が入り込み作付けに悪影響を与えてしまう地という負のイメージによる。実際この辺りは遙か昔はしばしば大雨と海水遡上に伴う塩水混じりの水によるダメージを受けていたようで、作付けが期待できない地という意味で無毛上(むげじょう)[3]と呼ばれていた。ただし石炭を火力に僅かながらの製塩が営まれていた可能性はあり、上述の大塩屋はその由来かも知れない。

現在の市内全域まで含めれば製塩に由来する地名はむしろ随所に存在する。例えば草江に存在した塩谷(ないしは塩屋後)は小規模ながら製塩が営まれていたと考えられているし、厚南にある塩屋台は、採取された石炭を火力とする本格的な製塩の地であった。
出典および編集追記:

1. 現地付近の配電線に大塩田と記載されているものがあるが、大塩屋の誤りである。現存する小字絵図ではすべて大塩田と記載されている。大塩屋は大庄屋から変化したのかも知れないという指摘がある。「琴芝小学校三十周年記念誌」p.32(2016/9/12)

2. 最初に塩田橋の記事を作成するときはそのような想像が働いた。しかし後に海水の遡行で田が塩害を被ることに由来するらしいという説を書物で見た。冒頭の内容は訂正せずそのままにしている。

3. 毛上(けあげ)料が取れない地という意味。

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