琴芝公会堂

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現地撮影日:2012/7/15
記事編集日:2015/7/29
市道琴芝梶返線の起点、琴芝通りの端に琴芝公会堂がある。
市内に散在する公会堂の多くは一般の民家や事務所とあまり変わらない外観なのだが、琴芝公会堂は如何にも古めかしい造りで目立つ。


位置図を示す。


少し市道を進んだ場所から撮影。


入口には一部石段が遺っている。


板に筆書きされた琴芝公会堂の文字。


さて、琴芝公会堂でとりわけ目を惹くのがこれだ。


手押し式ポンプである。


井戸部分は見あたらず、比較的早い時期に台座部分をコンクリートで固めたようだ。コンクリート部分には錆が流れて付着している。

残念ながら私の世代で既にこのような手押しポンプは絶滅危惧種の部類だった。地下水を汲み上げる井戸自体は親元にあったが、よちよち歩きの幼児が転落すると危ないということで早くから蓋が掛けられ電動式になっていた。このような手動式は一度も扱ったことがない。


「優秀號」という文字が見える。表面が浸食されどうにか読める状況だ。当時の手動式ポンプのブランドだったのだろう。


素晴らしい。これは地域の宝物だ。
現地に設置されている現物はもう市内でも数える程しかないのではなかろうか。


この手押しポンプが井戸用のものであるという前提で、かつてはこの場所で地下水を汲み上げることが出来ていたことになる。

琴芝通り側から公会堂を撮影してみた。
石積みは2m程度の高さがあり、その上に公会堂が建っている。


即ち井戸も琴芝通りの現在の路面より2m程度高い位置に設置されていることになる。
琴芝通りの縦断勾配がきつくなるのを避けるために道幅を拡げるとき切り下げたか、元々こちら側が斜面になっていたのだろう。

自然石の乱積みで間詰めモルタルで固められている。
十数年前は空積みで、石積みの上は自然の土でフェンスもなかった。
後述の「個人的関わり」の項目を参照


琴芝通りより井戸が高い位置にある以上、必然的に竪坑は深くなる。施工の手間を考えればなるべく浅くしたい筈だ。この高い場所に設置されているということは、地区の人々が誰でも利用できることを意図していたか、この付近に水脈があったからだろう。

ちょっと裏手に回ってみた。
窓枠や瓦は更新されているが、外壁の横板や通気口の造りが如何にも古めかしい。床が高く、湿気を溜めない構造になっていることが分かる。


小さな窓があるのはお手洗いだろうか。
昔は何処にでも見られていたのだが、気が付けば殆ど見かけなくなってしまった家の造りの一つだ。


もちろん現在も地域の住民によって大事に使われている。あの謎の手動式ポンプの遺構と共に、大事に保存され続けることだろう。
《 近年の変化 》
外観に大きな変化はない。(2016/7/1)
《 個人的関わり 》
町内在住民ではないので利用したことがなく、中に入ったこともない。ただし前職時代に公会堂周辺のフェンス設置工事の見積依頼を受けて現地を調べたことがあるような気がする。これは記憶違いかも知れないが、もしその通りなら現地のフェンスは平成10年代頃に施工されたものと思う。

前面の市道は自転車でよく通っている。
出典および編集追記:

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