閃輝暗点

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記事作成日:2022/10/25
最終編集日:2022/10/26
ここでは、当サイトの管理人が少なくとも40年以上抱えている持病の一症状である閃輝暗点(せんきあんてん)という症例と、それに付随する頭痛についてまとめている。

殆どの方はまず聞いたこともない語であろう。閃輝暗点とは病名と言うよりは視覚に関する異常な現象であり、後述するように偏頭痛を伴うものである。偏頭痛という病状の先駆的現象とも言える。

すべての人は、自身が見ている映像とまったく同じものを他人に正確に伝える術を持たない。通常の状態なら今見ているものは誰もが同じことが殆どなのだが、この症状が出ているとき見えているものを視覚化するのは困難である。一般的事項については[1]にあるものの、掲載されている画像には概ね同じものと全然違うものがある。発生したときの見え方に個人差が出てくるようである。以下では私の場合大体どのようなものが見えてどういう顛末を辿るのかについて、実際の見え方を加工した画像で説明している。
《 概要 》
殆ど覚醒時に起きるが、稀に寝ているときも起きる。目が覚めたとき症状が現れている途中ということもある。

症状の始まりには先駆的現象がある。まず、何の前触れもなしに目にズキンとした感覚が走り、視野の中心部分が見えづらくなる。ズキンという感覚だけで別に痛みはない。太陽や蛍光灯を凝視すると、顔を背けて目を閉じても黒いシミのようなものが視野の中心に現れるのと似ている。これが第一フェーズ。
イメージとしてはこんな具合である。
カメラのレンズに異物を付着させて擬似的に実現している


普通は強い光源を見つめた場合、時間が経てば暫くして消える。この症状が現れると視野の中心にあるシミがいつまでも消えない。気にせずに居るとそのまま何事も起きない場合もあるが、特に強いときはこのフェーズと次の事象が同時に起きる。

やがてそのシミの中心から銀色の粒が発生してユラユラと蠢きながら広がり始める。ここまで到達することで閃輝暗点という現象の発生が確定的となる。どのような手立てを講じても発生を止めたり以後のプロセスから逃げることはできない。

ユラユラ動く銀色のものは、次第に視野の中心から楕円形に広がっていく。片目を瞑ることで左右どちらかの目に起きているかが分かる。両目に発生したことは今のところない。
このイメージを視野に重ねるとこんな感じである。これが第二フェーズ。
周囲の円形はこれほど綺麗に整っているわけではなく不定形である


楕円状に拡がる銀色の虹は拡大しながら上下と目尻の方へ移動する。この段階になると視野の中央は普通の見え方を取り戻し、端の方が見えづらくなる。目や頭の痛みはないものの、常にユラユラ動いているため目障りであり慣れていてもかなり気持ちが悪い。

概ねこのような具合に見えている。この形状は虹とか歯車と形容されることが多い。個人的には初期にはワニが口を開けたときの様子に思われた。目を閉じても暗くなった中で見え続けており、逃れる方法はない。


蠢く虹が視野の端まで到達した後、完全に消失して正常な見え方に戻る。これで現象としての閃輝暗点は終了する。

これだけで終わってしまえば、閃輝暗点は一時的な視覚異常という現象だけで終わってしまうだろう。症状が発生する前の平穏な状態で居られるのは数分から十数分で、その後かならず強い頭痛が発生する。この痛みの強さは虹の出方の範囲に比例する。粒が少し広がった状態で消えるものは軽い。前述の写真例のように視野の半分が覆われるほどの虹が出たときは頭痛も強い。

初期の頭痛は目の奥が痛む感じであった。現在では通常の頭痛とあまり変わりがなくなってきている。何も対処しなければ痛みが半日くらい続き、頭重感が暫く残る。翌日までには完全に回復し、回復後は症状が出る前よりも快適な状態になることが多い。
《 症例の歴史 》
あまりにも激烈な症状なので、初めて体験したときのことは日記に正確に記録されている。(→関連記事リンク)外部記事に書かれている内容をここに補足する。
【 初めての症例 】
初めて経験したのは、高校受験の合格発表のときだった。発表は学校の授業がある平日だったので生徒は受験校まで観に行くことができず、職員室で順次名前を呼ばれ合格者には合格証と必要な手続き書類を渡す形で行われた。授業中だったので、受験した生徒は組ごとに呼び出され職員室の前に集まった。

受験校は私立香川学園高校で、私立高の受験は公立に先だって行われて発表も早い。ここと公立校を受験していて私立高は滑り止めだった。公立校の方が合格率が低く、私立を不合格になったら行く高校がなくなるかも知れない恐怖があった。
恐らく救済措置があったと思われるが当時はそのことについて何も語られなかった

受験者は受験番号順に職員室の外に並び、一人ずつ呼ばれた。多くの生徒が満面の笑みを浮かべて合格証を手にして出てきた。合格証兼手続き書類は茶色い紙だったと思う。不合格者は手ぶらで出てくるので誰が合格・不合格かがすぐ分かった。私は自分が不合格だったら行くところがなくなる不安を友達にも話していた。友達は「大丈夫…お前が不合格だったら高校に行ける奴が居らんようになるって」と言ってくれたが、私立の問題は難易度が高く自分としての出来映えは非常に悪かった。

自分が呼ばれて中に入ると、そこには担任教師が居た。そしてごく事務的に名前を呼んで「君は合格してるよ」とだけ言って書類一式を渡した。この瞬間、ホントに一気に緊張が解けた。職員室を退出したとき安堵のばかりに大声で「ヤッター!」と叫んだところ、たまたまそこを通りかかった体育の教師が「こんな所で大声を出しちゃいかん!」と叱って持っていたノートで頭をしばいた。しかしその後で「おめでとう」とフォローしたのを覚えている。

教室に戻って友達と話をしているとき、目の前の物の見え方がおかしいことに気付いた。銀色の虹が出てキラキラしていたのである。目を開けて居られない位だった。5時間目の授業は技術・家庭で、すべての生徒が技術室と家庭科室へ移動した。友達は技術室へ行く前に具合が悪いなら保健室へ行った方が良いと忠告した。私は暫く様子を見ると言ってそのまま教室の机に突っ伏していた。

教室から生徒が誰も居なくなった後、猛烈な吐き気を伴う頭痛に襲われた。それは今まで体験していた頭痛とはまったく異なり、眼球を抉られるような吐き気を伴う痛みだった。本当に吐きそうな気がしたので、吐瀉物で机を汚してはいけないと思って男子トイレに移動した。いつ吐いても良いようにずっと男子トイレのタイルの床にしゃがんでいたが、結局吐くことはなかった。頭痛が酷いので6時間目の授業を受けずに早退した。

帰宅して滑り止めの高校に合格したことを告げた後、発表後に目がおかしくなって早退したことを親に話したと思う。銀色の虹が目の前をチラチラしたことを話すと、親はまったく聞いたこともないと驚き、重い病気が隠れているかも知れないと心配した。翌朝もし頭痛が酷くチラチラが出てきたら医者へ行こうと思っていたが、翌朝にはまったく頭痛はなくなっていた。
【 最初の眼科の診断 】
中学校卒業まで症状が出たのはこのときだけで、2回目が起きたのがいつかは記録がない。しかし高校へ通うようになってからも授業の最中などで症状が出ることがあり、学校の帰りに当時新川地区島にあった永谷眼科を訪れている。
写真は永谷眼科があったと思われる場所付近。高校の通学路でもあった。


親を含めて身の回りに同じような症状が出た人が誰もなく、重大な病気が隠れているかも知れない懸念があった。このとき院長から初めて閃輝暗點症という症例を知らされた。

難しい名前と奇異な症状に反して、とてもありふれていて虹が出た後に頭痛がするのは典型的なパターンらしかった。この症状は若い女性に多く、またインテリ層に目立つと院長から言われた。失明など危険な病気が隠れている心配がないことが眼底検査から説明された。何故虹のようなものが出て頭痛がするのか原因が分かっていないと言われた。不定期に起きるので、何かの薬を飲み続けて症状が出るのを防ぐ手段がないらしかった。そこで対症療法的に血行を良くする薬(Kallikrein)を処方された。次に症状が出たとき一度くらい服用したことはあると思う。しかし全く効いた気がしなかった。

高校の間も症状は不定期に起きた。もっとも酷かったのは最初の大学受験のときで、緊張を強いられる局面で出やすいことが自覚された。一番酷いときは一両日おいて現れたことがある。この頃には飲んでも効かないと分かっているために薬を服用せず、ただひたすら頭痛が治まるのをやり過ごす以外なかった。ただし初めて起きたときよりも状況は飲み込めていたこともあり、吐き気を伴うほど酷い頭痛ではなかった。
【 大学時代の眼科の診断 】
この症状は緊張とは無縁である筈の大学入学後も単発的に起きた。どこの医院かは忘れたが、山口に下宿していたとき最寄りの眼科に行っている。このときジヒデルゴットとカフェルゴットという2種の薬を処方された。[2]症状が出たとき即座に前者の薬を飲むよう指導され、後者の薬は作用が強いので本当に症状が酷いときだけ飲むように言われた。

いつでも飲めるように2種の薬は常に携行していた。前者の薬は服用しても症例を短縮することはできず頭痛も回避できなかった。あるとき、大学で講義を受けているときかなり酷い症例が現れた。頭痛が酷くなるのが予想されたので、このとき初めてカフェルゴットを服用した。虹が収まる頃に酷いめまいを感じた。教室じゅうがグルグル回転しているようで講義室の椅子にキチンと座っているためには机にしがみ着いていなければならなかった。机に突っ伏したまま講義が終わるまで安静を保つ以外なく、これは今までに経験した中で最悪の薬の副作用だった。その薬はそれ以上服用することなく廃棄した。

他にもう一ヶ所くらい別の医院を訪れたかも知れない。このときは確かバランスという薬を処方された。何処で知識を入れていたのか分からないが、帰宅して親に薬を見せたとき「それは危険な薬だから絶対に服用していはいけない」と言われたような記憶がある。折しも若者の服薬遊びが社会問題化していた時期で、名前を聞き覚えてしていたのかも知れない。[3]親から言われていたのでこの薬は一度も服用することなく廃棄している。

何度もこの症状を経験することで、どういう状況で起きやすいかについて自分なりに知見が集まった。大学を卒業して社会人になる頃には状況が変化した。
【 社会人になってからの対処 】
社会人になってバドミントンを始めるようになってからは、この症状の発現が激減した。このことは最初の医院で血行を促す作用があるとして処方された薬の効能と同じことを実行していたからと考えられる。幼少期から社会人になるまでおよそ運動に縁がなく、スポーツは何でも嫌いなことが遠因だった。

学童期から運動を嫌って遠ざけていたせいで、血管が細いと言われたことがある。恐らくそれは後天的なものだろう。運動する習慣がないために全身激しく血がめぐるような体験が少ないため、血流が良くなかったと思われる。実際、学童期は極端な寒がりで冬場に寝るときは足を温めるあんかが離せなかった。高校から大学時代は布団を敷いた上にコタツを置いて電源を入れたまま寝ていた。

バドミントンのような激しい運動を日常的に行うことによって血流が改善され、冷え性が解消するのと同時に目の症例も出なくなったことが考えられる。この記事を制作する現時点ではバドミントンは止めているが、代わりに自転車で努めて身体を動かすようにしているからか症状が多発する状況にはない。
《 症状が起きる原因 》
偏頭痛に関してはかなりのことが分かってきている。現在では、この症状は何かの弾みで目の回りの血管が収縮し、次にそれが元に戻るとき周囲の組織にある神経を圧迫するために痛みが出ると説明されている。したがって頭痛も風邪のときのように頭全体に感じるのではなく、目の近くやその周辺の狭い部分に痛みを感じることが多い。

閃輝暗点という奇妙な症状が発生する原因も同様によく分かっていないと思われる。視野の一部にユラユラ動く虹が出る現象は、視覚情報を脳に伝達する部分の痙攣を想像させる。この症状が出ている段階で停止させることは未だにできていないものと思われる。
《 症状を抑える方法 》
閃輝暗点が出てしまうと、程度の差はあってもほぼ間違いなくその後に頭痛がやってくる。対処法は閃輝暗点が出るような行為を控えることと、出てしまった後の頭痛を軽微にやり過ごすことの2つとなる。

以下の状況や行動は閃輝暗点を発生しやすくするので避ける。
(1) 生活リズムが乱れること。(極度な夜更かし)
(2) 身体的な疲労を高めること。(長時間の屋外行動、極度に激しい運動)
(3) 極度の緊張状態に身を置くこと。
(4) コントラストの強い色調のものを凝視し続けること。
(5) 回避できない現象なので出現してしまったら慌てずむしろ開き直ること。
共通するのは極度なストレスに身を晒すことである。この総括記事を作成している現時点でも睡眠時間を極端に切り詰めたり、長時間外で自転車を漕いで撮影して回るなど、自分が好きで行っていることでも身体的に無理がかかれば起きやすくなる。ちょっと今日はムリな行程だったかもと感じたときの夕刻や就寝時に出やすい。そのことで以後は行程を緩めにするなどの対処をしている。

極度のストレスに置かれる状況としては、番組の枠撮りやスタジオ収録など限られた時間内に所定の台詞を正しく詰まることなく唱えるような局面が該当する。しかし今まで数回そのような場面に遭遇しているが、症状が現れたことは一度もない。自分の置かれている状況を理解できているからだろうが、例えば生放送に出演して自分のしゃべることがリアルタイムで配信されるなんて状況になったら、対処しきれないストレスから症状が起きるかも知れない。

目を酷使するの症状を誘発する。初期には画面を凝視するテレビゲームをしている最中に起きたこともある。また、真っ白な紙に黒々とした活字が印刷されている書籍を熟読するのも目にはストレスになる。コントラストが大きいと文字の識別が容易である半面、知らないうちに目を疲れさせていることになる。

成人になってから初めてこの症状が現れると間違いなく慌てるだろう。そして失明するのではないかと恐怖を感じ、重い病気が隠れているかも知れないと心配になる。実際その可能性ゼロとは言い切れないので、最初にこの症状を発現したら一度は眼科を訪れて重大な病気が隠れていないことを検査してもらうべきである。

目に異常がないと判明したなら、開き直ることも必要である。一度出てしまった症状は消えないので甘受して、慌てないことで軽めにやり過ごすことができる。
【 近年の状況 】
現在でも症状が発現して頭痛を感じることがある。しかし正体が完全に分かっているので、視野に虹が出ても慌てることがない。ああ、また例のやつが始まったか…位のものである。そして頭痛のとき自分に一番効くと考えている薬(大抵はイブプロフェン)を服用する。虹が出ている段階で即座に服薬することで、後続する頭痛をいくらか軽くすることができる。虹の規模が小さいときは、それが消えた後の頭痛が起きないことも多い。

したがって現在では閃輝暗点と頭痛自体がごくありふれた現象であり、無理やり完治させようとすることなく症状が起きるような無理をしないよう自重することで折り合っている。
初めて症例を発した中学3年生から高校、大学、社会人に至るまでの間の体験と自分なりに体得した症状のやり過ごし方を記録した記事。全3巻。
外部ブログ: 閃輝暗点物語【1】|Amebaブログ(2007/5/31)
出典および編集追記:

1.「Wikipedia - 閃輝暗点

2.「Wikipedia- カフェイン・エルゴタミン
現在ではより安全で効く偏頭痛の薬が開発されており、この薬は効能のメリットよりも副作用のデメリットが大きいためか単剤としては使われていない。

3.「Wikipedia- クロルジアゼポキシド
それまで自殺目的で用いられるなど弊害が大きかった睡眠薬や精神安定剤に代わって登場した新世代の薬で、当時「自殺目的で茶碗一杯ほどの薬を服用した人が翌朝正常に目を覚ました」という安全性を謳った新聞記事を読んだ記憶がある。しかしこの当時は服薬における依存性は殆ど議論されていなかった。現在では依存性が認識され、使用はされているものの麻薬及び向精神薬取締法の第三種指定となっている。

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