端が留まる便せんの折り方

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記事作成日:2020/3/9
最終編集日:2020/3/18
ここでは、学生時代に行っていた女の子との文通を介して知ったエキゾチックな便せんの折り方について、端が留まる便せんの折り方として記述する。
写真は実際にこの折り方で差し出された文通相手からの手紙の例。


現在ではプライベートな手紙をやり取りする場面が稀なので、近年の実生活でこのような折り方がされた紙を目にする機会はない。しかしインターネット以前の昭和中後期に文通で手紙のやり取りをしていたティーンエイジャーを中心に流行した。これらのうちから実際に私が目にすることとなった折り方のいくつかを映像記録する。自然発生的に伝播された文化であるため、特定の名前があるかも知れない。

紙を折る技法は一般論が研究されており、山折り・谷折りに代表されるような基本的なものは手順が記号化されている。[1]しかし記号を書き込んだ図を作成するのは面倒であり、折っている最中の手順を映像化する方が簡単なので要所を撮影して表現している。
《 意義 》
二つ折りに出来ない重要な文書や収集品などを除き、便せんに書かれた手紙のような一枚物の紙を郵送したい場合、封筒に入るように適宜外側の辺に沿って折り畳む。事務文書であれば二つ折りや三つ折りが殆どである。


しかしこの折り方の場合、写真でも明らかなように折った後そのまま机の上などに置くと自然に開いてしまう。爪先で折り目を強く押さえても端が留まっていないため浮いてくる。事務文書であれば頓着しないが、この状態でプライベートな手紙が机の上などに放置されると覗き見できてしまう恐れがある。受け取った人が能動的に開いて読む演出性と覗き見を避ける意図から、以下に述べるような端が留まる折り方が発生した。便せんの端が留まることで封筒の中での収まりが良くなるという効果もある。
《 折り方の再現 》
呼称は暫定的であり、一般に知られている名称があれば置き換える。ここでは一般的なA4サイズのコピー用紙で折っている。
【 丸め折り 】
初めて文通した女の子が折っていた方法で、私が最初に接した端の留まる折り方である。

レターパッドを横置きにして左下の角が上部の辺に接するように折る。


短くなった下側の辺が上部の辺に重なるように折る。


通常のA4版レターパッドであれば、左上に生じる直角二等辺三角形の右端の位置で右側に長方形を作る形で裏側へ折り込む。
縦横比率の異なる用紙の場合、この位置を若干調整する必要がある(後述する)。


残っている三角形の尖った部分がある側も同じように長方形に折り込む。


更にパッドを回転させて三角形の尖った部分を裏側まで折る。
このとき小三角形が少しばかり覗いていなければならない。


尖った小三角形を鍵状に折って内側へ差し込むことで完成。


比較的シンプルな折り方であり、最後に小さな鍵型を作って引っ掛ける形になるため収まりが良く、受け取った人もここを手前に引くことで容易に開くことができる。ただしA4版比率とは異なる長方形のレターパッドで折り始めた場合、ステップ3で長方形を折る位置の調整が要る。折ったものの最後に小三角形の先端が折り込み部分に届かない場合があるので、A4以外のレターパッドをこの方法で折る場合は事前に軽く試し折りするのが良い。

サイズがコンパクトになる半面、レターパッドの重なり枚数が増えるため封筒の中ではややがさつく感じがある。小さくなるメリットを利用して、郵送ではなく学校でサッと書いたメモ書きを女の子同士で手渡しする目的で折られることもあった。
【 平板折り 】
紙飛行機の折り始めから作るタイプの折り方で、正方形以外で縦が長すぎない比率の便せんで可能である。

便せんを横に置いて長辺に対して半分に折り、片側2箇所の隅を谷折り線に添って折り曲げる。
三角形に折られた部分は一直線に揃う。


反対側の角一箇所をこの揃った部分へ接するように折り曲げる。
A4サイズであれば折られた角は上側の直角二等辺三角形の辺の上部に収まる。


正方形の便せんでは角がこの位置に来ない。また、極端に縦長の便せんだと直角二等辺三角形の辺ではなく元の便せんの対辺までしか届かない。この場合には以下のような折り方ができない。

上側の直角二等辺三角形の辺上に、反対側へ折り込む位置を決める。
写真では爪楊枝を置いた位置で折っているが、直角二等辺三角形の辺上の任意にとることができる。


直角二等辺三角形が外側に来るように、爪楊枝で示した位置で反対側へ折る。
写真は折った後に裏返したところ。このとき折られてできた五角形部分の先端が折り込める状態になっていなければならない。


裏返したところ。


この五角形部分を巻き付けるように折り、先端部分を折り込まれたパッドの下へ差し込む。


完成。


手順が極めて簡単であり、縦横比率の異なる長方形でも正しく折ることができる。五角形部分を作るように折り返す位置は若干動かせるので、封筒に収まるサイズを考えて仕上がりを調整できる。

前述の折り方では便せんの厚くなる部分が生じるのに対し、この折り方では全体がほぼ均一な厚さとなる。封筒の中での収まりも良く、端が留まる折り方の中では恐らくもっともポピュラーであろう。

初めてこの形態の手紙を受け取ったとき、レターパッドのどの部分を引けば開くのか少々分かりづらい。せっかちな男の子では違った部分を無造作に引っ張ることで便せんを破ってしまうかも知れない。
【 六角折り 】
正方形のレターパッド限定の折り方である。
最初に線対称に軽く2度折って中心の位置出しを行い、対角の位置にある角が中心点に重なるように折る。


元の正方形の一辺を内側へ折り込んだ三角形部分に接するように折る。


反対側も同様に折る。


レターパッドを45度右へ回転し、直角になっている部分を持ち上げて辺が中心点を通過するように折る。
反対側も同様に折る。


持ち上げた直角部分2ヶ所を折り込まれている紙の下へ同時に差し込むことで完成。
写真は上の状態から更に45度右回転している。


尖った三角形2箇所が折られた紙の下へ差し込まれる形になるため、今までの中では最も端の留まりが良い折り方である。折られたレターパッドの厚みもほぼ均質で封筒の収まりも良い。仕上がりの形も対称形で美しい。ただしこの折り方の手紙を受け取ったときどこから開けるかかなり困惑してしまうので、遊び心を理解してくれる人限定である。

長方形の便せんでも同じ手法で途中まで折ることができるが、最後に直角部分2ヶ所を差し込むと片方が90度横になった非対称的な形となる。審美性には欠けるが3方向から「押さえ合った」状態なので収まりは良い。
《 その他 》
些か遊び心を兼ねたエキゾチックな折り方であり、プライベートな場面でのみ通用する。会社宛へ郵送する書類をこのように折って差し出すなどおよそ考える人もないだろう。

便せんの枚数が多い場合、一連の折り方をしても全体が少し浮いてくる。それでも通常の二つ折り三つ折りよりは収まりは良い。ただし通常の折り方よりも便せん上に多数の折り目線がつくため、小さな字で書かれた手紙は読みづらくなる。

これらの他に、学校内で小さな紙片を複雑なパターンに折って手渡されたことがある。開ける場所が分からないと思ったのか紙片の端に矢印が書かれていた。折ってみたいが受け取る相手が戸惑うかも知れないなら、同様に指先でつまむ部分に★を書き込むなどするのが無難だろう。
出典および編集追記:

1.「Wikipedia - 折りの技法|折り方の約束記号

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