方程式

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記事作成日:2019/6/30
最終編集日:2019/6/30
ここでは、学童期から大学時代に至るまでの間に接した方程式に関する個人的関わりについてまとめている。現時点で自分にのみ分かる下書き同然の状態であり、細部の検証や推敲は行われていない。また、数式のテキスト入力を可能とするためにプログラミングなどで見られるような略記スタイルとなっている。将来的にはこれらは整形された上で公開される。現時点ではレクリエーション数学の項目から呼び出されている。
《 中学時代まで 》
それまでの数学に関する取り組みはその他の主要教科と同様で、学校のカリキュラムにしたがって与えられた課題同然で、点数をあげ単位を取得することのみをモチベーションに行われていた。他の一般的な生徒と同じ受動的な勉学に過ぎなかった。

初期の兆候として今思い出せたものとして、高次方程式の解法が例に挙げられる。現在も大方変わらないと思うが、当時はまず多項式の割り算から剰余定理に入り、その特殊なものとして f(a)=0 であれば代数方程式 f(x) は x-a で割り切れるという因数定理があった。こうして3次方程式の解法として、まず f(a)=0 となる整数 a を探す。もし見つかれば x-a で整除されるので次数が一つ下がり2次方程式となるのでそこから先は(中学3年生で既に習っている)解の公式を用いてすべての解が求められるというものである。a の候補として与えられた3次方程式の定数項の約数を試してみることも教科書に述べられていた。

自分は当時、この手法について「それでは3次方程式を解くことにはならない」と考えた。例えば f(x) = x3 + 3x - 4 であるとき、f(x) = 0 の解を求めようとするなら定数項4のもっとも小さな約数である1を試すことによって f(1) = 0 が確認される。このことから f(x) は x-1 で整除されるので実際に割り算を行って f(x) = (x-1)(x2 + x + 4) と因数分解できる。残りの2次式について x2 + x + 4 = 0 は解の公式を援用して虚数解が得られる。しかし自分が思ったのには、たまたま f(1)=0 が見つかったから解けただけである。実際、定数項と符号を少し変えた f(x) = x3 - 3x + 1 の場合は f(x) = 0 となる解を一つも見つけることができない。では、それらは全く解を持たないのかと言えばそうではなかった。

このときは高校1年生であり、おかしな話だと思いながらもそれ以上追及しなかった。ところが2年生になって導関数を求め、3次式の増減表を作成してxy平面上に曲線の概形を描くカリキュラムに臨んだ。このときちょうど先述の3次式が現れたのである。教科書には f(x) = f(x) = x3 - 3x + 1 の事例があり、y = f(x) の増減表を作成しグラフの概形を描く例題が提示されていた。このグラフは2つの極値をもつ典型的な例で、x軸との交点の値がいくらかは記載されていなかった。そしてそれはまさしく先の例題の f(x) = 0 となる実数値を求める問題に帰着されるのだった。

それは一体どんな値を持つものか?。1年生で習った因数定理が使えないのは明白だが、x軸を3度横切っているので異なる3つの実数解を持つことになる。しかし当時自分が持っていた知識では大体近い値の解を求めることはできても、それを代入すればきっちりゼロとなる解(厳密解)を導き出す術がなかった。このとき恐らく初めて職員室を訪ね、当時の数学の教諭に質問しに行っている。このときの教諭の回答は如何にも現実的なものだった。即ち「そういう問題が大学入試で出る可能性はまずないから忘れてしまいなさい」だった。ただしそのとき「答は間違いなくあるし求める方法もある」とだけ示唆された。

しかしこのときも直ちに自分で調べようとはしなかった。モヤモヤ感が残ったが、当時のカリキュラムは大学入試に何の役にもたたないことのために立ち止まっていちいち検証する余裕などなかったからである。この意味で当時の教諭も責められはしない。余計な情報を与えてそっちに興味を持たれて肝心の受験戦略が疎かになったら責任問題になることだろう。

この問題を解決するには、正規に高校を卒業した後に補習科へ入るまで待つこととなった。大学受験を目指すことに変わりはないのだが、補習科の雰囲気は些か現役高校生時代とは雲泥の差であり、十分にゆとりがあった。高校ほど責任問題がかからない点もあったからと思われる。自由な雰囲気でやりたいことは何でもしたし、補習科の教諭もそういう姿勢を容認した。補習科でも高次方程式を解く問題はあったが、現役時代に教諭が指摘していた通りどれも因数定理を用いるものに限定されていた。このとき私はこう自問した:因数定理を使うことができないが解を求めることのできる3次方程式は存在するか?

最も簡単な3次方程式は x3 = 1 である。これは1という実数解の他にしばしばωと書かれる共役な虚数解2つを持つことが知られている。因数定理を使えば共役な虚数解を持つ2次方程式が得られる。しかしこれにもう一つ項を加えた x3 - x + 1 = 0 となるともう解きようがない。因数定理を使うにも定数項に基づく±1以外候補がない。そのいずれも等式を導かないので解ではないことは明らかである。ではどんな解を持ち得るのだろうか?

原始的な方法だが、電卓などを使ってちゃんとした解があるらしいことの検証はできる。f(x) = x3 - x + 1 とおいたとき f(-2) = -5 であるが f(-1) = 1 である。この間で符号が変わっているということは、どこかで f(x) = 0 となる解がある筈(実際は厳密な理論が必要なのだが)ということになる。しかしその解は因数定理などで容易に求められるタイプのものではないことだけが分かる。

どうしても解は得られなかったので、ここで発想を転換している。逆に「因数定理では得られないがある特定の値を解に持つような3次方程式を構成できないか」と考えた。例えば x3 = 2 の実数解は一つしかなく、2の立方根である。これを(テキストで容易に書けるように)21/3と書こう。この x を一つずらすことによって (x-1)3 = 2 という方程式を考えることができる。明らかに x-1 =21/3 が解である。そして元の方程式を展開整理すれば x3 - 3x2 + 3x - 3 = 0 が得られる。こうして一つの実例が得られた。

しかし上の例は如何にも作為的である。係数の並びからすぐに (x-1)3 が想起される。それで更に先を考えた。そしてある整数の立方根は1乗、2乗、3乗の3サイクルで再び整数に戻り、このとき整数にならない1乗、2乗に相当する無理数を組み合わせたものは何乗しても類似する形で表せることに気付いた。例えばx3 = 4 の実数解は22/3 であり、x3 = 8 では21 即ち2である。21/3も22/3も累乗を繰り返せば3乗するごとに有理数となる。そこで x = 21/3 + 22/3 という実数を考えて同様に累乗を繰り返してみた。そして何乗しても a,b,c を整数として常に a + b×21/3 + c×22/3 という形になることに気付いた。

特に上の x を3乗すると、無理数部分に再び x と同じ形が現れる。x3 = 6 + 6x である。このことより x3 - 6x - 6 = 0 という3次方程式は x = 21/3 + 22/3 という実数解を持つことが分かった。これは因数定理では解けずしかも2次の係数がゼロとなる事例となった。

このように順次拡大して考えていくことにより、立方根の中に入るべき数の条件を検討したところ整数でなくてもよく、2つの数を掛けたときに立方根が外れる数でありさえすれば足りることに気付いた。2と4の積は23 だから、これが立方根の中にあれば根号は外れる。しかし 2 + 31/2 と 2 - 31/2 のような無理数でも良いことに気付いた。即ち一般に a,b,c を整数、s,t を二次方程式の共役な解として x = a + b×s1/3 + c×t1/3 という形で書ける。この x を解にもつ3次方程式を導くなら、x - a = b×s1/3 + c×t1/3 と移行して両辺を3乗し、右辺を整理して現れた s,t を含む項を再度 x で表してやることで得られる。こうして当時は求めることが不可能と思えていた x3 - x + 1 = 0 の厳密な実数解を得ることに成功している。

当時、これで3次方程式の解はすべて求めることができるようになったと考えていた。しかしこのとき「代数的には間違いはないが数値として意味不明」な事例に出会うこととなった。それこそが f(x) = x3 - 3x + 1 の場合の f(x) = 0 となる実数解を求める場合である。今までの方法を適用しようとすると x = ω1/3 + ω2/3 となってしまう。まったく形式的に書かれたこの数式から両辺を3乗し整形すれば与式が得られる。したがって解であることに間違いは無い筈なのだが、そもそもωは1の立方根のうちの虚数解である。正確に書けば x = ( -1/2 +31/2/2 )1/3 + ( -1/2 -31/2/2 )1/3 である。
y = f(x) のグラフを描けば、それは x 軸を3度横切る。したがって f(x) = 0 は異なる3つの実数解を持つパターンなのだ。それにもかかわらず途中で複素数の立方根を求めなければならない事態となる。このとき自分は、一般にa,b を実数として ( -1/2 +31/2/2 )1/3 = a + bi と書けるなら、( -1/2 -31/2/2 )1/3 = a - bi となるので虚数部が消えて最終的な答えは x = 2a となるだろうと思った。そこで虚数を容認してその立方根を求めるべく代数式を立てると、結局また始めの式に戻ってしまうという訳の分からない状況に陥ったのである。

この現象はタルタリアから解法を教わった(と言うよりは「強奪した」とされる)カルダノも認識していたようで、今では「不還元の場合」と呼ばれている。マイナス1の平方根なる虚数単位を真に実在するものか否かの議論は当時ならずとも虚数単位を習った学生なら等しく疑義を差し挟むものであろうが、実のところ実数+実数×i(虚数単位)で構成される複素数なるものまで拡張しなければ、代数的に解を得る方法はないことが現在では知られている。

高校の初期に平方してマイナス1となる存在を虚数として導入するとき「虚数なんて大小関係がないどころか実在もしないモノなど無意味だ」と考える初学生も結構あったことだろう。それを言うなら実のところ負の数とて、個数をカウントする上ではまったく無意味である。誰しも「マイナス3個のリンゴ」がどういうものか想像もつかない筈だ。しかし反対方向への動きとすればマイナスは意味をもち、その度合いを絶対値として定義できる。同様に、そのままでは大小関係が複素数も、複素平面上において原点から当該複素数までの実数距離とすることで大小関係を定義することができる。数学とは「意味がないからそれより先へは進まない」ではなく、当初は苦し紛れながらも「何とか妥当な意味づけを行って外の世界へ拡張する」ことで発展してきた学問なのである。

先の例に戻れば、因数定理を使って異なる3つの整数解が得られる問題は高次方程式の問題集でしばしば見受けられるものの、それは代数的手法で解こうとしたとき一番困難な部類であることが分かった。実際、最も簡素なものと思える x3 - 3x + 1 = 0 の場合も結局どうすれば「意味のある厳密解」が得られるのか分からなかった。

この問題に決着を付けようとしたのは、補習科時代である。既に高校へ在籍はしていなかったが、高校には図書館がないため図書カードを作成して隣接する短大の図書館を利用することができた。ただし貸し出しはできなかった。ここで確か岩波の事典だったと思う。高次方程式の解法を調べていて「三角法を用いる方法がある」という書き出しで解説されていた。一般的な解法で示されていたのでよく理解できなかったが、異なる3つの実数解を持つような3次方程式において因数定理が適用できないものは、どれもある三角関数の値を解に持つことが分かった。即ちどの実数解も 2cosθ(ただし0<θ<2π)といった形になるらしかった。

更に別の書籍を調べていて、ここで三角関数が突如現れてくる根拠は、複素数を極座標表示と呼ばれる別の形式にしたときある強力な定理が使えることに依るらしかった。絶対値が1である複素数はすべて cosθ+i・sinθの形に書けるのだが、この形式に変換すれば累乗や累乗根を求めることがそのまま関数値θの積に変換されるという定理による。現在では de Moivre の定理と呼ばれていて一般に n を整数として (cosθ±i・sinθ)n = cos nθ±i・sin nθ が成り立つ。高校3年の理系ではかならず登場し、これから高校2年の文系でも習っていた倍角の公式などが導出される。正の整数 n に対してかならず成り立つことは同じく高校2年の数学的帰納法の援用で証明可能である。そして n は整数のみならず実は有理数まで拡張適用できる。そして先の問題では n = 1/3 とすればそのままωの立方根を求めることができる。ωの立方根は実数ではないが、先に書いたように虚数部が相殺され最終的には実数となる。なお奇妙なことに、形式的に x = ( -1/2 +31/2/2 )1/3 + ( -1/2 -31/2/2 )1/3 と書かれて最終的に実数となるこの値は単一の値を示さない。θは三角関数の引数であり複数の値を取ることができてそこから3通りの異なる 2a が得られる。即ち先の方程式の解は、x = 2cosθ(θは余弦の引数)として表されるということで決着したのだった。

aを有理数として a1/3, a2/3 とした無理数に対し、有理数を加減乗除して生成される無理数はどれも係数が整数の3次方程式の解となり得る。このことから、a1/5, a2/5, a3/5, a4/5 という無理数に対して同様にして得られる無理数は、係数が整数となる5次方程式の解となるのではと思った。それから5乗根の中に入る数値の条件を拡張してやることによって複雑な形態の解をもつ5次方程式を生成できるかも知れないと考えたのだが、すぐ後に代数的解法が存在しないことの証明が得られているという事実に接した。結果が分かっていることに加えて、いくつかの項から成る値を5乗するのは手計算では大変骨の折れる作業であったことからそれより先の追求を止めている。

式のもつ対称性と係数の状況によっては、更に高次の方程式で因数定理が適用できそうにもないものでも厳密な代数解を得られる場合がある。この最も典型的な事例は、y = x2 なる放物線の上に正三角形を成す3点の座標を設定する問題において生じた。(1,1) は明らかにこの放物線上に存在するのだが、この一点を固定して正三角形を成すように他の2点を放物線上に取ることが可能である。その座標値は加減乗除と立方根のみで表すことのできる非常に複雑な代数的数である。得られた代数的数は完全な厳密解であることは証明できているが、より簡素な形で表記可能であるかはまだ検証できていない。
出典および編集追記:

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