宇部丸山ダム・注水口

インデックスに戻る

現地踏査日:2010/2/27
      2012/8/31
記事編集日:2012/9/9
2年前の初回踏査時の写真と記述を中心に、一部最近の写真と考察を追加して再編集しています。

---

丸山ダムは国道2号付近で薬師川を締め切り元からあった丸山溜め池を取り込む形でダム湖を形成している。このダム湖に注がれる河川流域は極めて狭いにもかかわらず不相応に広い範囲で水を湛えている。その裏には小野湖から導水路によってダム湖水の供給を受ける仕組みがあるからだ。即ち小野湖と丸山ダム湖を連絡する圧力隧道が布設されており、相互にダム湖水の行き来が可能である。この導水路は厚東川2期工業用水道事業として丸山ダム築造と並行して施工された。

特別な操作を行わない限り、小野湖の水は圧力隧道および鋼管によって自然と丸山ダム湖に向かっていると思われる。丸山ダム取水口からは有帆方面に送水する流れがあるからだ。恐らくその意図もあって企業局では丸山ダム湖側にある導水路の接続部を「丸山ダム注水口」と呼んでいる。

丸山ダム注水口はダム湖の南に張り出す半島の先端部に存在し、流量計測・制御のための塔(以下「注水塔」と表記)が半島部分よりやや離れて建っている。この塔はダム上部の駐車場や堰堤からも見える。

注水塔の位置を地図に示す。


丸山ダム湖の北側には市道薬師堂立熊線が小さな入り江の先端を切り取るように伸びており、この半島に向かう細い道も記載されている。
しかし後述するように半島を周回できる道は存在しない

経路の記載がある以上、注水塔まで行ける道があるはずだ。
野山時代は丸山ダムはそこそこ近い距離にあったのだが、国道2号から行くには最後にきつい坂を登らなければならず敬遠されていた。活動拠点こそ遠ざかったものの逆に車ならハードルはかなり低い。

丸山ダムのT字路より国道2号を離れ、市道薬師堂立熊線に入る。急な坂を登り、ダムへの分岐に出会う。ここで左に曲がればダム堰堤に行くが、今回は右だ。


注水塔は半島の先端部分に存在することが分かっていた。それなら半島部分に向かうまでの間、どこか市道から見える場所があるのではと思った。

市道沿いの適当なところで車を停め、ダム湖の方へ歩いてみた。
木々の切れ目に比較的容易に見つけられた。


入り江を一つ挟んだ隣接する半島から水色の桟橋が伸びていた。
ダム湖の中に建屋があり、その手前には別の建屋らしきものも見える。


ズーム撮影。
建屋の屋上にはプレハブの小屋らしきものが置かれていて、半島部分から電線が伸びている。
側面には明かり採り用の小さなアルミ窓が見えている。


まさか建屋の上には登れないし、それ以前にあの鋼製の桟橋を渡ることもままならないだろう。この辺の事情は、野山時代に有帆向けの取水口を訪ねたときと同じと想像された。いずれにしろここから注水口へ向かう道は伸びておらず、もう一つ先の半島部分に管理道があるらしい。

しかしこのアングルからの撮影は無駄ではなかった。
この映像でも分かるように、桟橋が接続している半島部分は木々の繁茂がもの凄い。後から思えば、注水塔の全体像を最も近くに観察できるのは結局この場所だったからだ。

直線路の先に同じような規格の分岐点が見えてきた。
あの半島部に向かうのはここを左だろう。


その先でいきなり対面通行の道から狭い道に変わった。そして予想通り、半島方向に進む車止めが設置された管理道を見つけたので、適当なところで車の向きを変えておいた。

今入ってきた道を振り返って撮影している。
市道の分岐点は広場のようになっていて、車を停めて寛ぐ人の姿があった。


この道で間違いないだろう。
普通車でも通れる幅があるものの、この先に用事がある車両は取水塔のメンテナンス関連業者くらいのものだろう。道間違いや不法投棄車両の進入を防ぐために紅白の車止めが設置されていた。


もっとも進入路に立入禁止の立て札などは全くなく、車止めといっても歩行者や自転車なら問題なく抜けられる。別に入っていけない場所ではないようだ。

今回は車で訪問している以上、この先を歩かなければならなかった。
大した距離ではない筈だが周囲の景色が開ける場所が殆どなく単調な道だ。

自転車で至るところ巡るのは好きなのだが、歩くのは正直とっても苦痛だ。自転車のテンポに慣れると、歩くのは疲れるし景色の変わるスピードが遅いのがかったるく感じられる。地図ではバリカーのある位置から200m程度なのだが、なかなか本命が現れないのでじれったくなって軽くジョギングしてしまっていた。

漸く注水口が見えてきた。
その手前には、小野湖側の取水口にもあったような建屋が据えられていた。


進入路に対してダム湖とは反対側にサイコロ状の建屋があり、電線が引き込まれていた。小野湖で見たものよりは随分と小さい。
コンクリート建屋の正面には両開きのアルミ扉が付いている。


試すまでもなかったがアルミ扉は施錠されていた。扉のガラス部分は厚い磨りガラスで内部は見通せなかった。側面にあるルーバーは換気用だろうが、みっしり並んでいて全く中は見えない。

建屋の詳細は後回しにして、まずは注水塔に接近する。
予想された通り、半島の突端部は木が生い茂っていて注水塔の上部建屋が僅かに見えるだけだった。


汀にはメタボ坊や(?)が池にハマる漫画で危険を知らせる立て札が設置されていた。
同じものがダム湖周辺一帯に立っている…デザインが一種独特でシュールですらある…^^;

アスファルト舗装された進入路は、注水口へ向かう鋼製の桟橋手前で終わっていた。
最後の一本の電柱からは、先の建屋と注水塔に電源を供給していた。


その先も一応窺ってみたが、木々の繁茂が薄い時期でも人がやっと歩けそうな踏み跡が見えるだけだった。国土地理院やYahoo!の拡大地図では半島の両側から同等の道が伸びているように記載されているが、ここから先は自転車の押し歩きでさえ不可能だ。

作業員が一人通れる程度の鋼製桟橋が架かっている。
しかし予想された通り、部外者が注水塔へ侵入できないように柵が設けられていた。


桟橋入口の扉に取りあえず有刺鉄線は施されていない。立入禁止の文言の札もない。
しかし進入阻止の意図は極めて堅い。それと言うのも有刺鉄線より更に厳しい障壁が設置されていたからだ。


扉の上部と側面には水管橋の両端によく見られる鋼棒を並べた「クジャク」が植わっている。しかもよく見ると鋼棒の先端は若干切り欠かれており、こんなのを跨いで入ろうものなら串刺しになってしまう。
桟橋の側面はいきなり急な崖になっていて、よっぽどの酔狂な人間でもなければこれを巻いて侵入しようなどという気は起こさないだろう。

大丈夫…無鉄砲して進行しなくてもカメラが先を窺ってくれる。柵に貼り付いた状態でカメラを保持し腕を伸ばした。
桟橋の中ほどまで両側から張り出した木の枝が視界を遮った。伸び上がったりしゃがんだりしてアングルを調整したが、これが精一杯だった。


この注水塔の左側遠くにダム堰堤が見えていた。


正面の扉をズームする。
桟橋は真っ直ぐ扉へ向かっていて、注水塔の前面に少し余裕があるだけだ。塔を周回する通路はない。


あの扉の向こうには何があるのだろう…
注水塔の上部にも物置のようなものが2基設置されていたから、内部には屋上へ登る階段があるはずだ。
ではダム湖水面より下に隠れる部分には何があるのだろうか…圧力隧道の流れを制御する巨大なゲートが隠されているのだろうか。

宇部丸山ダムは毎年夏季に実施される見学会ダムの対象外である。ましてダムから離れたこういう付帯設備が見学対象となる見込みは限りなく薄い。この内部がどうなっているかは、一般人には知ることのできない謎であり続けるのだろうか…

次は後回しにしたこの建屋だ。
背面には電気メーターと排気ダクトのようなものが取り付けられていた。


電気メーターは殆ど回っていなかった。
後から気付いたのだが表面のペイントはイタズラ書きではなく「うべ企(業局)」という意味では…


排気ダクトからは空気も音も漏れていない。
また、内側は細かなフィルターが設置されていて中はまったく見えなかった。


少しでも内部を観られる場所はないのだろうか…

金網が欠落した換気扇の排気口にを見つけた。そこから天井部分と換気扇が見えていた。しかし足場は何もなく覗き込めない。


カメラを頭上一杯に差し上げてフラッシュ撮影。それでもこれが限度だった。


換気口の金網は経年変化で破れ、中に見える換気扇羽根も錆び付いている。その隙間から天井が微かに見えた。今は殆ど見られなくなったアスベストの天井ということしか分からなかった。

それ以上の成果が得られそうな見込みもないので、これだけ撮影して管理道を戻った。
歩くのがかったるくてまたしてもジョギングで…^^;

これが注水塔と連携して働く設備で、圧力隧道がこの真下を通っていることもほぼ確実だろう。では何のためにあるかというと…さすがに想像の域を出ない。
物理的な導水量の監視や制御は注水塔の方で行っている筈だ。通常の操作は遠隔制御されているので、ここに担当者が来るのは緊急時や定期点検・部品交換のとき位のものだろう。

人力による定期点検がもしあるなら、両側の取水口・注水口を遮断し内部の水を排除した上で圧力隧道や鋼管内部に作業員が入る筈だ。この建屋は注水塔の手前に位置しているので、もしかするとこの建屋の内部に圧力隧道へ降りる点検用の人孔があるのではと想像する。
特に小さな建屋には不相応に大きな排気ダクト…隧道内部の空気入れ替え用ではなかろうか

残念ながら現地をいつ訪れようがこれ以上の情報が得られる可能性は薄いだろう。この記事の続編が書かれることがあるなら、よほど目に見えて大きな変化や成果が得られたときに限られるだろう。

ホームに戻る