山口変電所【3】

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(「山口変電所【2】」の続き)

最初ここへ来たときの分岐を右に入ってきた。
歩く距離を切り詰めたいので、車で行ける一番奥にある門の近くに車を停めた。

文字が小さくて読めないが、東門2段という表示がある。
追加の設備を造る予定があるようで、敷地内の一角に工事中を示すバリケードやコーン類が置かれていた。


敷地内を観る前に一つ気になる点があるので、確認のために奥へ向かって歩いた。

門の前を過ぎると、敷地の方は雛段状に高くなっているのに対し、そのすぐ右下に空き地があった。
きちんと舗装されており、一番奥には転落防止のフェンスがあった。


フェンスの右半分は設置されておらず、山の方へ分け入る道があるように思われた。


この場所を地図で示しておこう。
私が何を確認したかったかが分かるだろう。


地図表示でも航空映像でも分かる通り、この場所は丸山ダム湖の周回管理道から非常に近い。直線距離で100m程度の筈だ。しかしここには正規の道が表示されておらず、直接行き来する道はないことになっている。
国土地理院の地図にも道は何も表示されていない。


車で行けそうにないことは明白だが、野山時代、自転車でここを行き来できるなら、丸山ダムへ立ち寄る近道になると考えていたのだ。
丸山ダムと山口変電所はかなり離れて方向も違うイメージがあるのに直線距離で僅か100m程度とは意外だ

この近距離を往来したいという需要はさすがにゼロではないらしく、山道らしき踏み跡はあるようだ。
舗装が切れた先もそれは奥に向かって伸びていた。


ものの100mなら進攻して本当に丸山ダム湖の周回管理道に出てくるか確かめる余地はあったが、如何せん今はまだ時期が良くない。鬱蒼とした木々の垂れ込める中に踏み込む勇気はなかった。
まだ野山に暮らしていたなら確認していたと思う

車を停めた門まで戻り、今度はこちら側から敷地内に見える奇妙な機器群を眺めた。

工事をしていた一つ下の雛段にあたる場所に、一台の営業車が停まっていた。
写真には映っていないが、その横に現場ハウスが建っていた。今日は平日だが門は閉まっていたから、営業用に常時この敷地内へ留め置いているのだろう。


その奥に見える化け物のように巨大な機器。
片側だけで8つのファンが取り付けてあり、すべて回っていた。よほど熱を発する機器で放熱ファンが必要なのだろう。


先ほど反対側から見えていた、奇妙な碍子と配線群。


直立した鉄棒の先に、串刺し状態で2個の碍子が取り付けられている。
そして離れた場所にある端子への接続が、何故か上向きにウェーブを描いているのである。


3年前、初めてここを訪れたときも配線が宙に描く奇妙なオブジェに気付いていた。
直線的に線を張らないのは、恐らく冷温の差で鉄線が伸縮したとき接続部分に負担がかからないようにするためだと思う。

それにしてもズラッと揃いもそろって同じ形状の曲線を描いている様子は、観ていて如何にも奇妙だ。身の回りで芸術作品以外でこんな形状をしているものを探すのも難しいだろう。


それから、更に気になると言うか、もはや 気持ち悪いと言いたくなるこの碍子群。
まるで 真っ白いヒダヒダ付きのケヤリムシ である。


3本並べられた円筒形のパイプの上に、それぞれ反発し合うように巨大なケヤリムシたちが植え付けられている。見るからに不安定そうだ。四角い台を造ってその上に設置すればいいものを…

気持ち悪いと、余計ズームで観たくなってしまう変な心理だ。
昔の漫画で電気をイメージするオモチャや機器と全く同じ実物がそこにある感じだ。


この気持ち悪さは、碍子が共通して持つあの奇特な形状にも原因があると思う。あの形状を観れば碍子と分かるし、更に電気を連想してイメージするだろう。
碍子は電気がなるべく漏れ出ないよう高度に絶縁されたセラミック製の素材で、中を導線が通されている。外側のヒダは雨水が早く垂れ落ちるようにするためで、お皿を重ねた構造になっていると聞いている。電圧が高いほど絶縁を破ろうとする力も強いので、碍子自体が大きく重ねる枚数も多くなるという。
超高圧幹線鉄塔などでは人の背丈を超える化け物のような碍子がぶら下がっている

碍子の先端部分は、他の碍子から反発するような向きに設置されている。
同様の構造は、1本の線が接続されているものにも観られた。短絡を避けるために一定の距離を確保しなければならないようだ。


もう、これ位撮ればいいだろう。
デジカメをポケットに仕舞い車の方へ戻るとき、先ほど観た敷地内にあるユニットハウスから作業員が出てきたのには驚いた。
現場は動いていないのだが、どうやらハウスで書類作業などしていたようだ。

まあ、怖れることはない。敷地内に入るとかの不審な挙動は何もしていないから、一つのミッションを終えたとばかり淡々と車に乗り込んで来た道を戻った。
何か変わったことでもない限り、当然来ることはないだろう。

そうそう…
例の分岐点で、一つお伝えし忘れていたものがあった。


この付近で
ゴルフの練習を
しないで下さい


この立て札があるということは、手入れされた芝生をお目当てにパットの練習に来る人たちでもあるのだろうか。
それも近くに民家もなく、ここまでパターとゴルフボールを持参して練習するとは…
それほど芝生がキレイに刈られていたのは確かだが

既に日はかなり傾いていた。
存分に写真を撮り終えた後、本日のミッションを終えて自転車II世を積んだままアジトへ戻ったのであった。

【追記】(2012/10/8)

現在ある山口変電所は昭和35年7月に造られたもので、かつてこの場所には昭和18〜20年においては陸軍弾薬庫が建設される予定地だった。
山陽本線厚東駅より弾薬庫予定地まで輸送用の鉄道を敷設する計画もあったが、終戦により弾薬庫建設と共に頓挫している。

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