レンガ

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記事作成日:2019/11/24
最終編集日:2020/1/5
ここでは、一般的なレンガと同じ形状をしている素材と、形状は異なるが出発材料や製法が同じ素材について市内および当サイトの管理者視点に限定して記述する。レンガの一般的事項については[a1]を参照されたい。

素材の使われ方や製法を元に当該構造物の施工時期などを解析することを主な目的としているので、地域性や時期的な情報を得る参考にならない輸入された特殊なもの、ごく少数しか確認されていないもの、近年の家庭で意匠向けに使われている多種多彩なレンガ素材は含めていない。
出典および編集追記:

a1.「Wikipedia - 煉瓦
《 同一形状のレンガ様素材 》
日本における標準的なレンガの寸法は縦210mm、横100mm、厚さ60mmとなっている。これとほぼ寸法が同じ異種の素材によるものもここに含めている。
【 標準的なレンガ 】
全国的にみられる赤茶色をした外観のレンガである。
写真は東岐波地区にみられるレンガ塀。部分的にレンガをずらして透かし構造を造っている。


当サイトでは後述する桃色レンガとの対比として従来型と呼ぶこともある。粘土を主体として素材を高温で焼き固めて生成するもので、概ね明るい朱色から暗い赤茶色までの色彩である。この色は粘土に含まれる酸化鉄に依る。焼成されているため表面は緻密でつやがなく硬い。表にワックスをかけたような光沢を持つものは近年造られたものである。

市内においても地元で採取された粘土を元に製造されたものが多いため、色調に差違がある。混入物によるものなのか後述する桃色レンガに近いような薄い色のものが知られる。他方、鉄道の橋台に使用されているレンガの橋台は広域で建設するために大量製造されたものが使用されたためか、場所による外観の差がまったくない。また、橋台の角には縁を丸く削り取ったような特異な役物レンガが使われている。
桃色レンガ
標準的なレンガよりも色調が薄い桃色をしたレンガである。
写真は居能町にみられる桃色レンガ塀。


寸法は標準的なレンガとほぼ同一だが製法がまったく異なる。石炭の焼却灰を主原料として石灰を混ぜ込んで叩き固め天日干しすることにより造られていた。可燃物の残っているボタを混ぜることも多く、混合物を寝かせることで発色したようである。石炭が産出する宇部地域など沿岸部に固有のもので、火力発電で使われた石炭の焼却灰やボタから製品が生まれることから初期のリサイクル事例とも言える。昭和40年代頃から製造されなくなり、一時的に製法が喪われていた。詳細は項目に設定されたリンク先を参照。
【 セメントレンガ 】
練ったセメントをレンガと同じサイズに成形したもので、素材としては前者2つのレンガとは全く異なる。
写真は西梶返に里道にみられるセメントレンガ塀。


部材がレンガと同程度の重さで扱いやすいため、塀としての利用が多い。モルタルと同素材であることから仕上がりが一枚物となってレンガほど目地が目立たない。新しいものは明るい灰色を呈しているが、経年変化で濃い灰色や別の色調を帯びてくる。これを避けるために表面を塗装したりモルタルを塗りつけて一枚物のように仕上げることもある。倉庫の建屋に及ぶほどのものが造られることがある。

素材としてのセメントレンガは現在もホームセンターなどで売られており、簡素な花壇を造るときなどに使われる。土木施工では玄翁などで半割りに打ち欠き、間知石積みや間知ブロックを積むとき裏込材が背面に回り込むように透かしを造るときの位置決め用に使われる。
【 鉱滓レンガ 】
セメントレンガと同じ形状で更に黒っぽく質感も異なる素材が知られている。
写真はある場所で見つけた同種と思われるレンガ塀。上になっている4段が該当する。


今のところレンガ塀としての使用例のみ確認されていて、素材の状態で散らばっている場所も知られる。水濡れに弱いようで永年雨に打たれると表面がぐずぐずと崩れてくる。


セメントレンガの表面が経年変化で汚れたように見えるが含まれている素材が明らかに異なる。これは鉱滓を混ぜ込んだものではないかと考えられている。この部材は非常に限られた場所でのみ観測されており、実例が少ないため詳細がよく分かっていない。鉱滓ではなく別の素材をセメントで繋いで製造されている可能性もある。鉱滓には有害な重金属が含まれている可能性もあるので、一般向けには出荷せず工場敷地内など限定的に使われたのかも知れない。
《 使われ方 》
元々が直方体であり複数個を積み上げて使われることから、家や庭の囲障材料としてレンガ塀の形で使われることが一番多い。塀以外でも素材の単位が小さく施工が容易なことから小規模な構造物にも使われる。屋内でも倉庫や台所の壁を類似素材のレンガ塀で施工されたものがみられる。
【 レンガ塀として 】
レンガ積みの方式としてイギリス積みとフランドル積みが知られる。[1]ただしそれらは倉庫など比較的規模の大きなものにみられるものであり、民家を囲障する塀としては特に目立った積み方の別はない。

一般的なレンガ塀では、あらかじめ造られた基礎の上に基本を市松模様状に積み上げる。必要に応じて敷地側に控え柱が一定間隔に設けられる。里道の辻に面している部分は通りやすくするためにしばしばカーブ状に築かれる。このカーブを出すために半割が挿入される。

レンガは部材の単体が小さく目地モルタルのみで固着しているため雨晒しに弱い。このため民家の囲障に使うレンガ塀では大抵最上部に笠木が設けられる。これには基本を90度傾けたものを2段に積むものと、最下段の笠木を45度傾けて横向きに載せた上に基本を2段積むものが知られている。45度傾けたタイプのものは装飾性も持たせている。


墓石の囲障など小規模なものでは外周部のみで笠木を省略する場合もある。

天端となるレンガは最も雨の浸食を受けやすい部分である。桃色レンガやセメントレンガの場合、経年変化で削り取られて目地モルタルと段差ができていびつな形になっているものが多い。
【 構造体として 】
公共物では鉄道の橋台部分や立体交差の上部構造、トンネルのポータルによく見られる。建物の外周部に対しては従来型レンガが使われたものは皆無で、類似素材のレンガ塀も希少である。


部材そのものは硬くて強固だが、固着はモルタルによる接合のみであるため衝撃を受けると目地部分からずれ易い。また目地とレンガ部材との収縮差から間知石積みやブロック積みに比べて水濡れに弱い。したがって常時水で洗われる海岸の護岸や水路に使われる例は少ないが、間を透かせてスクリーンのように積んだ事例もみられる。
写真は長溝用水の取り出し部分に設置された例で取り壊され既に現存しない


同種のものが中山浄水場のスクリーンに使われていることが最近判明している。
【 敷き材として 】
他のブロック系素材に比べて単位当たりが小さく施工が容易であることから、表面が揃うように並べたレンガ敷き舗装として使われることもある。足元がぬかるみがちな坂では廃材として蓄えられていたレンガを敷き詰めたレンガ坂が市内でもかつて数ヶ所に見られた。


レンガを敷き詰めた通路は、後年のインターロック舗装の走りとも言える。未舗装路に比べて耐久性があるものの不陸が生じやすく自転車や四輪の走行安定性に欠けるため殆どみられなくなっている。
《 異形のレンガ素材 》
出発材料や製法は同一だが形状が一般的なレンガと異なるものを挙げる。
【 刻印のあるレンガ 】
従来型レンガと同一またはやや大きなレンガで刻印されたものが知られている。
写真は刻印が明瞭に読み取れる単材の例。


実際の使用例としては北琴芝で里道の側面補強として埋め込まれたもの、居能町で門柱に使われたものなどが知られている。サイズが従来型より若干大ぶりで、表面は緻密であり硬い。これらのレンガの来歴はよく分かっていない。レンガ素材を扱う業者などが外部から持ち込んだものの可能性もある。

この他にKTRの刻印があるレンガが浜町の里道沿い側溝壁に施工されたものが見つかり、九州耐火煉瓦(株)製造による刻印とされている。[b1]
【 自家レンガ 】
東岐波沖ノ山地区に通常のレンガよりかなり大きなサイズの素材を積んで造られた個人所有の小屋が知られる。


他の場所では一つも知られておらず、レンガ業者が自家消費用に製造したのではないかと思われる。
【 摩耗レンガ 】
質的な差ではないが、海浜で波に洗われ丸っこくなったレンガの破片が知られる。
シーグラスに準じてシーブリックとでも言えるような存在である。


海便でレンガを村外に出していた東岐波村相当エリアの海辺にこのようなレンガが大量に散らばっている。時代考証的な研究価値に薄いが、形の良いものはハンドクラフト素材として活用できるだろう。
出典および編集追記:

b1.「FBタイムライン|2020/1/4の投稿

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