ヘビ

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項目記述日:2022/9/27
最終編集日:2022/9/28
ここでは、居住地域である宇部市周辺で今もみられるヘビについて記述している。よく見かける順に記述し、毒蛇については個別名称ではなく一括して掲載している。ただし写真を元にネット上にある各種のヘビと比較した結果で、誤認があるかも知れない。

ヘビが嫌いという人はとても多い。実物を見るだけでなく写真を見るのもゾッとするという人もかなりある。以下ではヘビの写真を載せているため閲覧には注意を要する。
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《 シマヘビ 》
シマヘビはこの辺りでは最もポピュラーなヘビである。
身体に沿って濃い筋状の縞が伸びる薄茶色をしていて、公園や里山で普通にみかける。


大変に警戒心が強いヘビで、姿を見つけたと思ったらすぐに草むらへ逃げ隠れてしまい撮影が難しい。毒はないが牙が鋭く噛まれると大変に痛いと言われる。現在ではヘビを目撃することがあればその殆どがシマヘビである。

長い縦縞が特徴的でありすぐ見分けがつくが、同じ種とは思えない外観の亜種がある。また、マムシほど目立たないが類似する斑点をもつシマヘビがあり、毒のあるマムシの擬態と考えられている。
【 カラスヘビ 】
同じ体系で真っ黒なものがあり、その色彩からカラスヘビと呼ばれる。
写真はある公園で目撃されたカラスヘビの小さな個体。
この日はこの場所を含めて野山のすぐ近くで大きなカラスヘビを目撃している


普通のシマヘビよりも個体数は更に少ないが、極めて稀少という程ではない。外観の毒々しさから、一部でカラスヘビは毒蛇で噛まれると血清がなく危険と言われたこともあった[1]が、実際はシマヘビの亜種に過ぎず誤りである。警戒心が強い点は一般的なシマヘビと同じである。全身真っ黒な個体の他に、やや茶色が混じった黒色の個体も見つかっている。
《 アオダイショウ 》
民家の周辺や公園などに棲み着く些か緑青っぽいヘビである。
写真は妻崎神社の土手に発見された大型の個体。


警戒心が強くすぐ逃げ出すシマヘビと異なり、アオダイショウは大変におっとりしている。人の姿を見ても逃げ出さず襲っても来ない。人や家に付くヘビと考えられており、人里離れた山野ではあまり見かけない。人の暮らしがある家の軒先に鳥が住み着いたりネズミが寄ってくるのを期待し、それらを捕食して生き延びていると考えられる。ネズミの捕食は家主にとって有益であり、このため昔から家の主のように扱われてきた。昔はアオダイショウが家から出ていくのは病人が出るなど不吉なことの始まりとも考えられていた。

シマヘビがすぐ逃げて撮影が困難なのに対してアオダイショウは悠然と構えているので、見つけたときにはかならず写真を撮っている。表皮に艶があるのでまるでビニールのおもちゃのヘビを思わせる。
《 毒蛇の類 》
以下は、少なくなったとは言え今でも里山などで出会う可能性がある危険な毒蛇である。その他にはよく分かっていない種も含む。
【 マムシ 】
胴体に判を押したような茶色い部分が並ぶヘビである。この模様でシマヘビとは容易に見分けがつく。
写真は男岳の登山道で見つかった個体。


下山中にたまたま登山道を横切っていたようで、足音に反応して草むらの中に隠れていった。地面の色に近いためすぐ近くまで歩くまで存在に気付かなかった。

単独でこのヘビのことを指すとき地元ではマムシという語が使われることは少なく、専らハミと呼ばれる。これは「食む」(噛み付くもの)という義である。典型的な毒ヘビで、その名の通り噛み付かれることによって毒を注入される。対処しなければ現在でも命にかかわるヘビで、畑や里山に出没するため昔は噛まれて命を失う事例がとても多かった。里山へ分け入る機会が多かった昔は脅威で、特に多かった地区ではマムシ避けの祠がみられる。また、特異的に多かった地域では小字名に遺っている(→関連性が考えられる地名

現在ではシマヘビ以上に出会うことは少なくなった。人が近づくなどで危険を感じたとき悪臭を発するようで、一部の古老の話では「ハミの匂いがする」と察知することがあった。ただしこれは無毒とされるナメラ属の一部のヘビが危険を察知したとき悪臭を出すのをハミと誤認した可能性もある。
【 ヤマカガシ 】
身体の紋様と色彩が鮮やかなヘビで、典型的には赤系が体色の一部にみられることで区別がつく。
写真はある河川の近くで見つかった死んだ個体。
鳥に襲われ死んでいた…内蔵がはみ出ていた部分を隠蔽加工している


川岸や沢地など水場を好んで棲み着くようだが、今までのところ個人的に目撃例が数回しかない。水場でカエルなどを狙っているようであり、岩の上などでじっとしていることが多い。登山道が洗い流しの小さな沢地を横切る場所は注意が必要である。
《 その他 》
過去に目撃されたヘビで、写真が少数しかなく同定が困難なものを含む。

宇部丸山ダム湖の東岸側で発見された個体。
ダムの上からズームで撮影している。撮影は2013年だった。


誤って落ちてしまったのか、泳ぎながら上陸できる場所を探しているようだった。見ての通り非常に大きいヘビで、目視でも長さが2m近くある。身体の模様も独特で、今まで見てきたどのヘビにも似ていない。ウミヘビのようでもあり、ダム湖の主かも知れない?

霜降山配水池に向かう管理道を歩いていて遭遇したヘビ。2021年秋に撮影。


障害物のないアスファルト舗装路まで出てきてしまったせいか、隠れることもできずじっとしていた。その習性や体色からアオダイショウとも思われるが、管理道周辺は普段ほとんど人が訪れることのない場所である。アオダイショウだとすればこんな人里離れたところで見たのは初めてとなる。
《 一般的事項 》
ヘビが嫌いな人はとても多い。爬虫類独特の模様が嫌だとか目つきが如何にも悪意に満ちているなどと言われることがある。更に噛み付き攻撃することと、稀に毒を持つ種は噛まれれば相応な手当をしなければ生命に関わることも嫌われる原因である。そして恐らく最大の原因は、ヘビが不意打ち的に突然目の前に出没することである。びっくりして大声をあげて逃げてしまうのだが、その声よりも早く反応してヘビ自身の方が逃げることが殆どである。

飼っている小鳥や卵を飲み込んでしまうことからも好きになれない人は多いのだが、嫌ってはいけないとは言えないにしてもヘビを無益に虐めてはいけない。ヘビとて里山に住む生き物の仲間であり、普通の行動をしている限り積極的に人を襲ってくることはなく、足音に反応し即座に逃げていく存在である。それを追いかけて行ってまで虐めるのはまったく酷である。虐められたヘビは種を問わず人間に対して攻撃的になることが分かっている。

殆どの場合でヘビの方から逃げていく半面、産卵直後のメスは気が荒くなっており、晩夏の産卵を経て秋口には卵を護るため不用意に近づくと攻撃される。秋口は登山シーズンとも重なるため不意に遭遇する確率は高い。足元のよく見えない草むらを裸足のサンダル履きで歩き回るのは危険で、丈夫な靴を履いて歩く方が良い。

ただし近年は近隣地域でヘビの絶対数が減っていること、歩く振動を察知して事前に逃げることから草むらを歩いていきなり足に噛み付かれる心配は殆どない。やむを得ず足元が見えない深い草むらを歩く必要がある場合は、長い棒を持って足を踏み込む前方の地面をまさぐりながら進むと良い。

春先はワラビ採りの好適なシーズンだが、ワラビの生える乾燥した草むらには大抵シマヘビが潜んでいる。草むらの中に大きなワラビを見つけたときも摘み取ろうと不用意に手を突っ込むのではなく、ワラビの周辺を意図的にガサコソと掻き回してから手を入れるようにする。畑の雑草取りを行うときも同様である。

里道がガレ場のような水気を含む場所や小さな沢地を横切るような場所はヘビが多いので注意する。沢地や溜め池の土手で園芸素材となるミズゴケを採取できる場にも多い。
《 関連性が考えられる地名 》
ヘビの存在そのものが由来になったと考えられる地名として、東岐波の蝮迫(はみざこ)が知られる。
写真はJR宇部線の蝮迫橋りょう。


蝮(はみ)とはマムシを指す語で、この辺りに特異的に多かったことが想像される。この他に宇部という地名が初めて現れることで知られる持世寺文書では、厚東氏が寄進した地として川上にある椙原(すぎはら)、桜ヶ谷とともにハミと書かれている。前者2つは現在も小字名として遺っているが、ハミが何処の地名を表しているのかは未だ明らかになっていない。

ヘビの漢字そのものを含む地名としては、小羽山地区の蛇瀬(じゃぜ)池が著名である。溜め池以前は田であり、地下上申絵図には「じゃで田」という記載がみられることから江戸期には存在していた地名と言える。ただし蛇の漢字は音に合わせて後付けで与えた可能性もあり、ヘビに由来するかどうか明らかではない。ヘビのように曲がりくねった川筋由来と、土砂崩れの多かった地に由来するなどの説もある。
《 個人的関わり 》
藪漕ぎを始めとして足元が見えない草むらへ踏み込むことがこの十数年のうちに数え切れないほどあったが、今までうっかりヘビの尻尾を踏むなどして攻撃されたことは一度もない。ヘビの目撃自体が少なくなっており、たまたま踏み込んだ場所にヘビが居て踏んでしまうリスクは低い。

ヘビを写した手持ちの写真を見る限りでは、6月と9月が多い。田に水を引き入れて苗が育ち始める頃と、稲刈りが終わる頃である。野山で遊び回っていた学童期、祖母から「9月のハミは酷いから山に入っちゃあいけん」とよく言われていた。マムシ自体は確かに昔より減ったが、居なくなったわけではない。更に9月は産卵期で攻撃的になることからもこの教えは理に適っている。
出典および編集追記:

1. 母から常々そのように言い聞かされていた。実際は別種ではなくシマヘビの亜種である。

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