青岳

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記事作成日:2018/3/13
最終編集日:2019/4/20
青岳(あおだけ)は、瀬戸原と山口市阿知須青畑の市境に位置する山である。
写真は瀬戸原三差路から撮影した青岳。
正面やや左に見えるピークが青岳の山頂


山頂部をポイントした地理院地図を示す。


青岳は地理院地図にも記載されている山岳であるが、一般に公開された登山道が存在せず登る人は殆どない。北東側が宇部カントリークラブの広大な敷地でアクセス路が遮断されているのが理由である。後述するようなトリッキーな方法によってしか山頂へ到達する手段がない。ゴルフ場の管理地は山頂近くにまで及んでおり、クラブハウスからの管理道途中に鉄柵が設置されているだけで立入禁止などの標識は出ていない。このため青岳の山頂を含めた周辺すべてが社有地で一般の立ち入りが容認されていない可能性もある。本件に関してはまだ充分に調べられておらず、当面は青岳への登山は自己責任となる。

山頂からの眺めは意外に良く、また未解明の史跡が存在する。山頂は宇部市瀬戸原と山口市阿知須青畑の市境にあり、そのまま周防と長門の国境に位置している。比較的起伏が緩い山で、国境ラインにほぼ一致する尾根伝いの道は善和と阿知須を連絡する古道だった可能性がある。[1]

青岳という名称の由来は分かっていないが、山口市阿知須側には青畑という集落があり、関連性が考えられる。宇部市側には青岳の名称に類似する小字名などは知られていない。
《 山頂 》
広く平坦なエリアがあり、ゴルフ場整備にあわせて手を加えられた可能性がある。古道が接続する南寄りに最高地点があり、祠と国土地理院の三角点が存在する。


この祠の正体については何も分かっていない。形態としては八王子神を祀ったものに類似している。2基とも青畑地区を見下ろす方向に設置されているため、国境関連とは無縁かも知れない。

平坦なエリアの端は高い樹木が刈り払われているため、眺望は意外に良い。東側は足元の万年池を通して日の山や阿知須方面が眺められる。


平坦なエリアはゴルフ場側へ長く続いており、北の端は土を平坦に盛り大きな岩が並べて置かれている場所がある。


史跡的な石棺のようにも見えるが、昭和40年代の航空映像ではこの場所は自然の山野となっていることから、ゴルフ場整備などで造成したとき出土した岩を並べたものに過ぎないと考えている。

平坦エリアの西側端には鉄骨造りの巨大なバスケットのポストのような構造物がある。
これは瀬戸原にある中国電力制御室が使用している電波反射板である。


この反射板の近くから瀬戸原の集落が俯瞰される。
国道490号県道西岐波吉見線の交点の一つである瀬戸原三差路がここから見えるのは意外な風景である。


なお、山頂周辺から善和交差点は視認されない。逆に善和交差点周辺からも青岳の山頂部は不明瞭で分からない。
《 登山ルート 》
前述のように青岳へ至る登山道は公開されておらず、山頂を含めた周辺が社有地で事実上の立入禁止区域となっている可能性もある。以下では物理的に到達可能な経路を記述するが、いずれのルートも未確認事項が多く登山自体推奨されないことに注意を要する。
【 宇部カントリーコース 】
県道善和阿知須線から宇部72カントリークラブ万年池西コースのクラブハウスへ至る道を経由するルートである。

県道よりクラブハウスの前を通過してコース内を通り、そのまま青岳山頂まで至るアスファルト舗装路が存在することは判明している。ただし一般車両の到達はクラブハウスまでであり、そこより先はコースを回る来訪者が歩けるのみである。この場合も山頂に向かう最後の坂道手前には通常鉄柵が設置されているため、ゴルフ客と言えども歩いて山頂へ向かうことはできない。

青岳へ登る目的でこのコースを通ることが認められているかは確認を要する。しかしこの経路は完全にゴルフコース内部を通っており、プレー中のゴルフボールが飛来する恐れがあるため、安全上の理由から関係者以外の通行は(車か徒歩かを問わず)まず認められないと予想される。状況が判明次第追記する。

山頂には中国電力の管理する電波反射板が設置されている。反射板の維持管理業者はクラブハウスに申し出た上で車を通している。その場合も車を入れた後は鉄柵を封鎖し、ゴルフ客が誤って山頂へ向かわないよう措置されている。
写真は次項のコースより山頂を経由して到達したときのもの


このように宇部カントリーコースを援用できる可能性は甚だ薄い。もしこの経路を通行できた場合、青岳山頂までは車を使って県道分岐点から1.2km程度であり、所要時間数分で到達できることが示唆されている。
【 市道瀬戸原2号線コース 】
2017年に山口市阿知須青畑地区と繋がり供用開始された市道瀬戸原2号線の市境から古道を辿るルートである。
写真は市道の市境付近を宇部市側から東向きに撮影している。


現地には何の案内も出ていないが、市境付近で尾根伝いの道が分断されている。通行する人は皆無なものの、恐らく里道の通行補償の兼ね合いから平ブロック積みの一部を開けてスロープが造られている。青岳に向かう古道へ上がるには北側、即ち写真では左側のスロープを登ることとなる。

スロープを登って市道を見下ろしたところ。
反対側にも古道に接続されるスロープが設置されている。
ただしこちら側の古道はまだ辿っていない


市境の堀割は青岳のある北側の方がずっと高い。小段2つ分をよじ登って古道へ到達する。小段部分には踏み跡などまったくないが、古道はほぼ完全な形で遺っている。


これより青岳まではそれほどのアップダウンがない一本道である。山道にしては幅が広く、大八車も通せていた程度の規格がある。ゴルフ場以前までは通行されていた可能性があり、沿線には切り出されたまま放置された石材がみられる。

尾根伝いでありながら周辺の樹木は自然な状態で放置されているため眺めは殆ど効かない。途中で瀬戸原と青畑を連絡する配電線経路の痕跡と思われる場所[2]を横切るが、目立った痕跡は認められず正確な場所の特定も困難である。足元に砂利が目立ち始めた頃に最後の緩やかな斜面を登ると山頂の三角点が見え始める。

この経路は以下の通りである。


道中には人工物が殆どまったく見られない。案内板やこの先立入禁止などの標識もいっさいない。古道を素直に辿るだけで青岳の山頂に到達する。
最初に市道の法面を登攀する部分に若干の危険が伴うだけで古道の通行自体に困難な部分はない。以上の意味で青岳に向かう安全な経路であるが、片道は徒歩で20分近くかかる。不法侵入などのリスクを負うことなく青岳にアクセスしたい場合、現在のところもっとも安泰なルートである。
【 その他のコース 】
青畑地区から沢地を伝ってこの古道へ合流すると見られる経路が有志メンバーにより報告されている。かつて青畑地区を訪れたとき、山道の奥に立入禁止標示板を見つけており、同じ道かも知れない。

瀬戸原側は工業団地により山腹のかなり近い部分まで削られているものの、社有地が隣接しているため充分に調べられていない。工業団地の一角に給電するための送電鉄塔が数基あるため点検用索道の存在が示唆されるものの、現在は供用されていないせいか索道自体喪われている模様。
少なくとも古道からの分岐路は見つけられなかった

宇部観音千佛寺裏手より尾根伝いの道が存在するかも知れないがまだ調べられていない。山頂からこの方面へ下る道は存在しない。
青岳の北側、県道善和阿知須線から南下する経路には土取り場が存在し、山頂の下近くまで作業道が伸びているものの立入禁止標識が確認されており接近は無用である。
何処の山かを伝えず山頂周辺の様子を写真で提示したときの投稿。
外部リンク: FBページ|青岳山頂周辺の様子(2018/2/27)

市道瀬戸原2号線コースから青岳山頂に至ったときの概略レポート。写真5枚。
外部リンク: FBページ|2018/2/26の投稿
《 記事公開後の変化 》
・宇部カントリークラブは宇部興産(株)の社有地であり、地図では薄緑色に塗られている。しかし実際にはこのエリアの外側、少なくとも青岳にある三角点の位置までは同社の社有地であることが指摘されている。[3]現状は青岳に登る人が少ないから対処されていないだけであり、来訪者がゴルフコースへ入るなどしてトラブルを起こせば青岳を含めて立入禁止になったりフェンスで囲障され一切近付けなくなる事態が起こり得る。登山ルールの項で示したようにコース側は鉄柵で締め切られているものの、この方向へは接近も止めておくべきである。

・上記の反射板の写真では反射部が白くペイントされているが、これは下塗りの段階であり最終的には薄緑色に塗装された。また、塗装された反射板が瀬戸原三差路付近から視認できることが判明した。


・上記の地理院地図では三角点の標高が127.0mと記されているが、これは青岳そのものの標高とは異なる。現在は改変されているかも知れないが、昭和40年代に作成された二俣瀬区耕地字図には青岳の標高が130.65mと記されている。

・昭和初期に作成された地図(いわゆるスタンフォード版)でも標高は130.6mとなっている。現在の山頂周辺は平坦地が広がっているため、三角点や祠などは一旦山頂を削った上で再配置した可能性もある。


地図は牧場やゴルフ場などの開発以前のものなので、最初期の地形が等高線により間接的に確認できる。
出典および編集追記:

1. 瀬戸原地区で地元在住者に聞き取りを行ったところ、尾根伝いに古くから道があって今以上に「おもろ」(祠のことか)が据えられていたという。これは尾根伝いの道を延々歩いている途中に行き斃れて亡くなった無名の往来者を弔ったものと説明されていた。ただし後年尾根伝いの道を拡げたためかあるいは別の道であったかにより、現在は山頂付近以外に祠は一つも知られていない。

2. 瀬戸原と青畑地区を直線的に連絡する正体不明な何かの存在が航空映像より早くから知られていた。以下のものである。
地図の改訂で同様のものが見えない場合はこちら


地図ではこの場所に道はないため、瀬戸原側から給電するために設置された配電線を雑木との接触から護るためのの伐採痕ではないかと予想されていた。有志メンバーにより確認されたところによれば刈り払いらしき痕跡は判明したものの既に電柱は存在しておらず、撤去されたのではないかと思われている。
前項で青畑地区を訪れたときの登山口調査はこの末端部の位置特定も兼ねていた

3.「FBタイムライン|更新通知(青岳)」に対する読者コメントによる。
《 個人的関わり 》
青岳の北西に学童期よく遊びに行っていた野山がある。恐らく名称はその頃から知っていたが、当時の山遊びは霜降山(より厳密には男山)が舞台で青岳方面へ行ったことはなかった。特に西本牧場からゴルフ場に変容してからは、子どもにはまるで縁が無く「行ってはいけない場所」の一つとなっていた。学童期でもっとも近づいた体験として、青岳方向に見える6.6kVの送電鉄塔の真下へ行った程度である。
もっとも万年池コースには学童期に従兄弟と勝手に入り込んでいた模様

現在のような活動を始めてからも青岳はゴルフ場の内部に存在し、昔からゴルフにはまるで興味がなかったことから「到達できない山」でしかなかった。
2017年の半ばにFBメンバーの有志により地図に尾根伝いの道が記載されていること、昭和40年代の航空映像ではそれが明瞭に窺えること、更に市道瀬戸原2号線の市境付近にスロープを見つけたことから安泰な道の存在を推察した。この仮定の下で実際に法面の上を調査したところ分断された古道を見つけ、そこを辿ることによって青岳への到達を成し遂げている。

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