白岩公園・今後の展望

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記事編集日:2014/9/20
白岩公園は一度でも現地に赴きそこに眠る数々の遺構に接した人なら誰もが認める文化遺産であるが、管理の手を離れているため少しずつ自然に還りつつある。樹木の成長によって石積みや石段の一部が崩れ落ちている場所がある。
こうした現状に鑑み、設園の経緯を知り現地を訪れた人の多くが歴史的建造物を後世に伝えるためにも何らかの形で保護が必要という考えで一致する。行政による整備や管理も必要ではないかという意見もある。昭和中期あたりまでは一般市民が憩う公園として愛されていた事実があり、当時を知る年配の方なら公園どころか庭園としても機能していない現状の荒廃した姿を痛々しいと嘆き悲しむだろう。

整備・改修・保全・現状維持などどの手法を採るにせよ、まず第一に白岩公園が私有地であることを考慮する必要がある。即ち来園者よりも創園者や末裔、管理を委託された者(もしあるならば)の意向が最優先される。[1]仮初めにも後述するような理由で現地を荒らすような来訪者が増えるなら、周辺住民に対しては負の遺産にしかならない。状況が悪くなれば私有地部分を立入禁止にされる事態も起こり得る。その如何なる判断も来園者は尊重しなければならない。

特に危惧されるのは「ジャングルの如く荒れ果てた白岩公園」というイメージだけが一人歩きし、一般市民の知名度を高めてしまう事態である。
元から廃屋のような廃モノに対して興味を持つ人々は多い。その中の一部には歴史的価値を認識せず面白半分に、あるいは肝試し的に現地を訪れ、騒ぎ、荒らす人々の存在がある。徒に知名度を高めてしまえば、そういった人々が押し寄せて現地を荒らしたり破壊的行為に向かわないとも限らない。これは近隣住民にとってはマイナスの影響しかもたらさない。

そうかと言って平成期の現代にマッチするよう多くの人々が気軽に楽しめる公園に改変することは個人的には強く反対したい。樹木を伐採し、周遊園路を新規に整備して一般来訪者が歩きやすくする公園にすれば治安および景観面ではプラスに働いても「あるがままの白岩公園」の姿を保存することに逆行する。荒廃した現状は必ずしもベストとは言い難いが、昭和初期に造られた庭園なら現代人にとっては如何にも訪れるには不便で、危険な場所もあり、ある程度は荒廃し古びていて当然である。

《 公園の再整備について 》
情報以下の記述には個人的見解が含まれます。

もし関係者も含めてどのようにするのが最適かと意見を求められたなら以下のように提言したい。
(1) 成長によって既存の構造物に悪影響を与えている樹木および草木は伐採または移植する。
(2) 緩衝池に溜まった落ち葉や土砂は適宜取り除く。ただし除去物を園外へ搬出する場合は時代考証可能な遺構が残留していないかチェックする。
(3) 転落防止柵やロープは元から在った場所および特に危険な場所に限定して設置する。
(4) 道標および構造物の説明板は鑑賞の支障にならない範囲で設置する。[2]
(5) 藪化によって失われた小道は、当時からの存在が検証されるもののみ復元する。
(6) 既に失われてしまった構造物(子安弘法大師など)の復元については別途考慮する。
(7) これ以外の来園者に便宜をはかるための施設は園内には設置しない。
(8) 県道の旧道路敷などの余剰地を来園者向けの簡素な駐車場として整備する。

即ち、昭和中期頃に子どもたちや家族連れが遠足で白岩公園を訪ねていた頃と同程度の復元が望ましいと考える。いずれもある程度の労務は求められるが、新規設置するものがごく僅かなので材料費は殆どかからない。

この程度の「好ましい不便度」なら、白岩公園へ大挙して押し寄せるドライバーが増えることはない。その不便をおしてでも現地へ行ってみたいと願う本気度の来園者に絞れば現地も荒れることはなく、公園の安寧が保たれるのではないだろうか。

《 考慮すべき問題 》
かつての白岩公園を復元させたい、あるいは復元とまでは行かなくとも藪の中で遺構が傷み喪われつつある現状をどうにかしたいという気運が高まっている。昔を知る人にはかつて遠足地として市民に親しまれていた公園が藪に包まれる状態は如何にも遺憾で、少なくとも一般市民の来訪可能な庭園程度には整備できればという意見はほぼ一致している。大小いくつかの問題があるが、ここでは思い付いたものを順不同で適当に列挙している。
情報以下の記述には個人的見解が含まれます。

【 樹木の伐採について 】
最盛期の白岩公園の写真を見ると、ほぼ地山が見える程度に疎らな樹木が生えているだけである。現状は当時よりはるかに多くの樹木が入り込み繁茂している。上池の北岸付近は竹の侵入が著しい。主要な樹木のみを残して伐採した方が景観は保てるが、地山の保水力が失われ土砂災害が起きないか懸念される。
白岩公園の周辺は土石流災害などの顕著な災害危惧区域には指定されていない。[3]しかし現状では南側斜面は殊の外傾斜が急で、梵字池付近から常盤用水路まで岩が転がり落ちている場所がある。設園当時は草木が少ない状態で保持できていたにしても、樹木が密に植わっている現状から一気に伐採を進めると山の保水力が低下するかも知れない。

【 地区道の車乗り入れについて 】
県道琴芝際波線から面河内池へ至る地区道があり、白岩公園へ到達するメインのルートとなっている。この道の沿線には数軒の民家があり、車の乗り入れは殆ど地元在住民ないしは面河内池周辺の管理を行う作業車のみである。外部車両の乗り入れが目立つからか、2014年の春に地区道入口部分にあった古い標識が更新されて行き止まりかつ侵入禁止を明示した立て札が設置された。
白岩公園の研究を志向する若干台数の車による進入だけで立て札対処されている位なので、将来的にもう少し整備が進む前段階でこの道の通行に対する地元協議が必要かも知れない。

【 傷みの目立つ部分の補修について 】
石段や石積みで元々の部材がずれているものは正しい位置へ修正して良いと思う。
部材が欠けている場合、同一のものが現地にあれば元へ戻したり接合する形で修復して良いのでは。
藤山八十八箇所のうち第6番の倒壊御堂は、既存のレンガ土台のみ利用して上部は新規構築もやむを得ないかも知れない。破損し散らばった瓦や御堂の部材は撤去せざるを得ない。
出典および編集注記:

1. 白岩公園の重要性を認識するメンバーが2013/12/8に笠井良介氏の末裔となる土地所有者と接触している。談話によれば、維持管理が大変なので昭和30年代に市へ寄贈したいと申し出たものの、当時市は常盤公園の整備に注力していた背景もあり断られたという。
私自身が当人に接触し情報の掲載について承諾を得たわけではないので、これ以上の詳細な情報掲載は差し控えるが、研究・鑑賞目的での一般人の白岩公園立ち入りや保存しようとする意向に対しては肯定的な回答を頂いている。

2. 2014年の春以降に白岩公園の下池へ至る石段の始まり部分に白岩公園跡という小さな標識板が設置されている。設置者は霜降山に係る山岳会の方々とうかがっている。同様の標識板が登山コース道中に案内板として設置されている。

3.「防災ハザードマップ」の藤山校区マップを参照。

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