門前池【4】

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(「門前池【3】」の続き)

余水吐の縁部分まで接近する。
浅いところに落ち葉が見えていたから急には深くなっていないようだ。


撮影はしなかったが、やはり余水吐の対岸側には道は見つからなかった。コンクリートの側壁から先は完全な原生林だった。
あれでも堰堤が整備されたのが昭和 50年代前半ということなので、それ以前には堰堤上を伝う山道があったかも知れない。

もう他に調べることは何もないだろう。
走水路を引き返すことにする。


ここから再び堰堤に上がることもできたが、そうするとまたU字溝渡りの妙技を試されることになる…踏み外してぬかるみに足を突っ込む心配があったので、リスクはあるものの走水路の急斜面を下ることにした。


足元の状況。
至る所苔だらけでさすがに怖い。側壁に手を添えて登るとき以上に慎重に降りた。


水路側の堰板は設置されていなかった。
至る所で崩れていた水路なので今は使われていないかも知れない。


門前池に関しての写真は以上だが、帰りは往路と違う道を通ったのでその部分も含めて報告を…

来るときは右側の斜面を降りてきたのだった。
帰りはこの水路沿いに辿ってみることにした。多分あの場所に出てくるだろう…という憶測がついたので。


ところがこの水路沿いの道には、先ほどの走水路歩き以上に怖い場面が潜んでいた。

水路は門前池から面河内池に繋がる沢に沿って伸びていたのだが…何やら工事中のときの仮設足場のようなものが見えてきた。


斜面が崩れたのか水路がなくなっており、仮設足場が設置され一部はパイプになっていた。白岩公園の水路を辿ったときにも同様のものが観られた。
反対側は巨岩聳える崖で、沢の方は大きく抉れていて地面が見えない。


仮設足場の部分は底の板がしっかりしていて手すりも付いていたので問題はなかったのだが…
パイプだけのこの場所が怖過ぎる…sweat


この場所は完全にあぜ道の部分が失われていた。パイプの下はみっしりと藪が詰まっていてどれ位低い場所に地面があるやらも分からなかった。パイプは番線で数ヶ所吊られているだけで、この上を人間が歩いたら重さを支えきれずパイプもろとも崖下に踏み落としてしまうのではないかという心配があった。
さすがにこれはスリルを愉しむどころではない。落下したら上がって来れる場所はないし、何よりも灌漑用水需要期は整備して使われているかも知れない水路なのに、パイプを落とせばただでは済まないだろう…ここで引き返そうかとも思ったが、延々遠回りすることになるのは嫌だった。

パイプの両端は地山に支えられているから、そう簡単に崩れ落ちるものでもないだろう…さすがにこの区間だけはカメラをポケットに仕舞い込み、両手でバランスを取ってそぞろ歩きした。

何とか渡り終えた。
通路部分が崩れてかなり長い期間が経っているように思われた。


地図では概ねこのあたりだろう。


この場所を正確にポイントしているかは自信がない。写真のタイムスタンプを観ると、最後に余水吐下の写真を撮ってから3分経過していることから割り出した。
どう思っても実際の地図に記載されている山道が異なっている。地図では戸井ヶ浴池の堰堤を通って山の尾根を伝い、門前池の余水吐側に到達するようになっている。これは来るときに辿った尾根越えの道だろう。今歩いているのは、面河内池の北側右岸をなぞる部分だと思う。水路があるので記載されている等高線とほぼ同じ経路になる。

この近辺が面河内池の北端部になるなら、やはりここへ到達する経路は今歩いている道だけだ。
細長い沢部分に水の動きがないので、川ではなく溜め池の延長と思われる。


岸辺までみっしりシダが生えまくっていてとても踏み込める状況ではなかった。
対岸を含めて恐らく人が接近したことは一度もない場所だろう。


細い水路とあぜ道は延々と続いていた。
体感的にかなり長く、いつまで経っても景色が変わらないという感じがした。


やはり…と思う場所に出てきた。
水路が分岐していて山道の登り坂が始まる場所だった。


往路ではここを真っ直ぐ進んで山の尾根を伝ったのだった。
奥の方の水路と小道は戸井ヶ浴池に向かっているものと思われる。


ここでも小さな事件があった。
上の写真を撮ろうとするあたりから何やらザクザクと落ち葉を踏み締めて歩くような足音が聞こえていた。
いわゆる「プーさん」ではないことは明らか(この程度の浅い山には熊は棲息していない)なので恐れる心配はない。暫くすると音が止んだので空耳かも…と思っていた。

その後、戸井ヶ浴池に向かうあぜ道からヌッと人の姿が出てきた。お互いこんな山奥で人に出会うなど思いも染めなかったので、お互いがほぼ同時に…
ぬおぉおぉおおおーーーーっ!!!!
…となってしまった…^^;

一組の親子連れで子どもは手網とバケツを持っていた。溜め池でヤゴを獲っていたと話していた。むしろデジカメ片手に深山の溜め池へ写真を撮りに行っていた私の方がかなり怪しく映ったに違いない…^^;

戸井ヶ浴池から流れ出る沢部分を横切る水路。
石積みを造って高度を上げており、かなり昔からのもののようだ。


そして面河内西分岐まで戻ってきた。
さすがにそろそろ歩き疲れてきた。帰りは負担の少ない経路を選びたい…


来るとき辿った八十八箇所は距離こそ近いが坂道が大変だ。あまりにも急な坂はやっぱり右膝に堪えるので、やや遠くても坂が緩い道を選んだ。

自分としては見慣れた分岐場所。
左の方へ進むと常盤用水路のNo.3隧道の下流側坑口付近にでてくる。初めて面河内池踏査を試みたときはここから藪の中へ踏み込んだのだった。


今回は通ったことのない右側の分岐を進んだ。
この道は常盤用水路に出会うことなく(No.3隧道の上を通っている)県道のこの場所に出て来た。


急坂を登ってそれから一旦下る八十八箇所を通る経路とは違い、県道からのこのルートは一本調子の登りなので、白岩公園などへ歩くときには使えるかも知れない。
そこから県道沿いに歩いて中山観音の駐車場に戻った次第だ。

こうして市内あちこち観て回っているのなら一度行ってみたらいい…という勧めにしたがって足を運んだ初めての溜め池ということになった。そして、
門前池は、確かに秀麗な溜め池だった…


天気が良く水位も最高位だったことも追い風だったと思う。
ただそこには溜め池があるのみで他に観るべきものは何もない。道としても門前池の堰堤で行き止まりで、少なくともハイキング気分でその先を歩けるような道は存在していなかった。

しかし名前だけ見聞きし地図で位置を確認するだけではなく一市民として間違いなく自分の足で到達した…そして現地の写真をここに提示した。
門前池は遠いが、ネット界に提示すれば自宅へ居ながらにして「訪れる」ことができる。足腰の悪い高齢者や病院で寝たきりになっている方でも散歩気分程度は味わうことができるだろう…

市内の未だ一度も訪れていない場所を一つずつ潰して行きたい…今回の踏査は少なくともそれだけの成果はあったと言えるのだった。

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