門前池【3】

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(「門前池【2】」の続き)

堰堤左岸から山の斜面を一旦登る道があり、それは再び下って小屋の前で終わっていた。
樋門小屋は何故か左岸の急斜面にへばりつくように建てられていた。


池に向かって伸びる棒と階段がある以上、樋門小屋であることはかなり確かだ。
堰堤と同時期に造られたのだろうか。コンクリート製の建屋でそれほど古い感じはしない。


小屋の横から池に向かって鉄棒が伸びている。


小屋の中は後回しにして、まずは階段を下りてみた。

あいにくちょうど階段の伸びる方向と太陽の位置が同じだ。
モロに逆光でまともな映像を結ばない。


階段は水中に消えていて水位が高いためここからは左右どちら側の岸辺も辿れなかった。

階段下から撮影。
小屋の壁に後から削孔して樋門を操作する鉄棒を通している。


樋門小屋には当然鍵が掛かっていたので外から覗き込んでみた。
ブルーシートに覆われているのは樋門のハンドル部分だろう。そんなに何年も放置されているという感じではない。


この位置に樋門があるということは、どうやら左岸側に沿って排出用の管を布設しているらしい。堰堤からも水上に立ち上がるパイプが見えていたからだ。
どうしてこの場所に造ったかという理由は想像もつかない。現地はかなり急な斜面で、小屋一つ建てるのも資材を運ぶのに難渋しただろう。普通なら堰堤の中央に設置するものである。

考えられそうな理由は、堰堤を築いて門前池が誕生する以前の川が左岸寄りに流れていて深くなっていたこと、堰堤中央付近に浅い場所か岩があって斜樋を設置できなかった…などだろうか。

先ほど堰堤からも見えていたあのパイプを確認した。
肉眼では見えているのだが、カメラでは前方の木々に邪魔されて分かりづらい。もちろんこの斜面を下って岸辺に近づくなど危なっかしくて出来るものではなかった。


可能な限り斜面へ踏み込み、木々をかきわけてズーム撮影している。
空気抜き用の縦樋だろうか…プラスチックのパイプが水上に立ち上がっている。


左岸側には樋門小屋へ向かうこの通路以外に踏み跡は見つけられなかった。
白岩公園に観られるような大岩が転がっていた。


結局、門前池の堰堤へ到達する道はここで終わっていると考えざるを得ない。少なくとも更にここから池の両岸を辿って北へ向かう道はまったく見つからなかった。
先ほど見た門前池の北の縁へ向かうには、尾根伝いを進む白岩公園コース以外なさそうだ。


事実上ここで行き止まりなので、来た道を引き返さざるを得なかった。

最後にもう一度堰堤から撮影。
勧められたとおり、門前池は確かに秀麗な溜め池だった。しかし歩いて来るには遠い。再びここを訪れるときがあるだろうか…


堰堤に向かうとき登った斜面にも管が覗いていた。
先の樋門小屋から続いているのだろう。


再び「U字溝渡り」で走水路のところまで戻る。
気温が高いせいか、ぬかるんだ周囲にはアブなどが飛び回っていた。自然の湧水でこれほどぬかるむとも考えがたいので、本来側溝を伝うべきものが漏れているのだろうか。


走水路のところには堰堤に向かって伸びる暗渠があり、赤い水を吐き出していた。
しかし実際にはこの方向には樋門はない。


左岸に設置された樋門からは堰堤内部を通って中央部の暗渠に排出されるのだろう。

このまま帰ろうと思ったものの、考え直して最後に余水吐から伸びる走水路をちょっと登ってみようと思った。
余水吐の反対側に道があるか観ておきたかったのである。


走水路には水が流れておらず内部を歩くことができそうだった。最初にあの「赤い水」の溜まり部分を越えるのに注意を要しただけで、問題なく走水路部分に移動できた。
人が歩くための通路ではないのでお行儀が良くないことは確かだ…^^;

勾配はかなりきつい。障害物はないものの底の至る所に苔が生えていて見るからに滑りそうだ。


実際には底部分のコンクリートは適度にザラついていたので足掛かりは良かった。しかし何処に滑る場所があるかも分からないので、側壁部分に手を添えつつ登った。

振り返って撮影。
いくら足掛かりが良いとは言っても転倒したらまず一番下まで転がり落ちてしまうだろう。
そして肥溜め色の溜まり水の中へ…^^;


余水吐の上部はラッパ状に広くなっていた。
歩きづらいとは言っても最初にこなした「U字溝渡り」よりはむしろ安全だった。


余水吐部分に到達する。走水路の倍以上の幅があって底は全面コンクリート張りだった。
堰堤側の側壁は1m程度の高さで、やや苦労するが堰堤上から降りられないこともない高低差だ。


水位は本当に上限一杯まで達していて、余水吐へ僅かながら流れ出始めていた。
今日のような晴天でこの状況だから、雨が降って流入量が増えれば普通に余水吐から余剰水が流れ出るようだ。


ここまでは本当に人が訪れることがないらしい。周囲にはゴミが落ちていなかったし、あるのは堰堤が築かれた当初から存在する構造物と昔からの門前池の眺めだけだった。

(「門前池【4】」へ続く)

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