面河内池

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記事作成日:2022/3/26
最終編集日:2022/3/29
面河内(おもごうち)池は、2級河川中山川の上流にある溜め池である。
写真は堰堤からの撮影。


位置図を示す。


面河内池は真締川ダムの未来湖のように、堰堤を中心として両端が北へ伸びて鳥が羽ばたくような形をしている。東側の門前池水系と西側の砥石ヶ浴池水系の合流点に堰堤があるからで、この点も未来湖と同様である。

堰堤は県仕様のコンクリート張りブロックで、中央に余水吐がある。


ほぼ同じ時期に再整備されたらしく、他の溜め池と同様に余水吐の走水路は深い三面張りコンクリート構造である。


溜め池の西岸側は奇妙に段々畑のような手の入った地形である。これは昭和後期まで溜め池に面して棚田が存在していたからである。

この状況は地理院地図の昭和49年度版でより明確に分かる。


溜め池に面して田になっているのは珍しい。動力を使わない限り高い位置に面河内池自体の水を導くことはできないので、この田の水は北にある門前池や砥石ヶ浴池から導いている。現在は休耕田となって相当な期間が経つらしく、雑木林になっていて棚田の地形が観察できるのみである。

遠浅になっている入り江はなく、岸辺の殆どが寄せ付ける水に侵食されて著しい段差が生じている。このため水位が下がっても水際まで降りるのは困難である。

堰堤以外にこの溜め池を観察できる場所は殆どない。砥石ヶ浴池側の外周に沿って用水路があり、用水路沿いに管理道もあるが、岸辺に雑木が多く水面が殆ど見えない。
門前池側の谷地の東側は道そのものがなく接近は不可能である。


東側の谷地は河川状の自然流路を介して上流の門前池に繋がっている。
《 アクセス 》
時系列記事で悪戦苦闘しているように、初期は溜め池から流出する水路はあるものの接近できる道がなく、中山観音裏手から堰堤に向かう道も整備されていなかった。

2020年までに山岳会メンバーにより霜降 山登山ルート周りの山道が再整備され、行き先を示す道標も設置されている。


現在は中山観音裏手から八十八ヶ所を経て白岩公園ルートに向かう途中から容易に到達できる。

水路沿いの道は存在しないものの、市道門前馬の背線に沿って歩いて民家の庭先前を通る経路(おそらく里道)が確認されている。途中で橋のない水路を飛び越えるようになるが、この経路から直接面河内池の樋門まで到達可能。
《 成り立ち 》
現地には溜め池の改修記念碑などもなく、初期の築堤期はもちろん改修時期も不明である。
東側の谷地上流に門前上池・下池があり、この門前とは廣福寺付近の小字名であることから、最初に門前池が築堤され面河内池の場所はただの沢地だったのかも知れない。

面河内池より下流は狭く傾斜も急な谷地を経て中山川へ流入する。この地勢故に中山観音から中山川県管理上流端にかけては土砂災害警戒区域に指定されている。[1] 蛇瀬川との分水界に不自然な地形がみられ、過去に土砂崩れが起きて分水界が変わった可能性がある。

戦時中に面河内池を利用して射撃訓練が行われている。対岸に的を設置して狙い撃ちし、命中したら鐘を打ち鳴らすなどの訓練状況が地元在住者から報告されている。面河内池の水際には当時使った弾丸が落ちているかも知れない。的を設置した正確な場所は不明であり、仮に判明しても前述のように現在では接近が非常に困難である。
《 個人的関わり 》
市内の溜め池を撮影するようになった中で、かなり初期に踏査が試みられた溜め池である。

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《 地名としての面河内について 》
面河内池(おもごうち)とは藤山区中山にある小字である。地名明細書では沖ノ旦村の中山小村にある字法尺(ほうしゃく)配下の小字の一つに面河内が収録されている。
小字絵図では中山観音のある裏手に面河内と書かれているだけで範囲は定かではない。


防長風土注進案ではかつての沖ノ旦村は奥壇村と書かれている。この由来については「奥の谷」の転訛に漢字を充てたものと考えられている。面河内は中山小村にあってその一番奥にある谷地と言えるので、主要な谷地を意味する「主な河内」に由来するのではないだろうか。同様の由来として考えられるものに、真締川(宇部本川)の上流にある面井手(おもいで)という字名がある。これは宇部本川に存在する11の井手(井堰)のうちの主要なものとして与えられた地名と推測される。

面という漢字に「おも」の読みを充てた地名は市内では他に知られていない。そのうちの2つの面河内と面井手は、村こそ異なるものの双方の距離は2.5km程度である。面井手はテクノロード沿いに通された水道の本管に面井手水管橋という名前が与えられているが、面河内を現地で確認できる構造物は知られていない。
面河内池の堰堤を訪れようとする中での悪戦苦闘。序章+5巻の全6巻。
時系列記事: 面河内池【序】
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出典および編集追記:

1.「宇部市防災マップ|宇部市」(藤山地区

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