とん堤【1】

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現地撮影日:2016/3/21
記事公開日:2016/3/23
気になる名前の溜め池が村松にある。
如何にも何かの由来ありそうなその名前は、既にこの記事タイトルに明示している通りだ。
溜め池の位置を地図で示そう。


周囲が200m程度のそれほど大きくない溜め池だ。真ん中がくびれたひょうたん形をしている。航空映像で眺めると海に近い側は湿地帯のようになっているらしく池の水が見えていない。堰堤は北側にあるので、溜め池の西側にある吉田川へ流れ込んでいるようだ。

目立たないサイズの溜め池なので地図には名前は記載されていない。国土地理院地図でも同様だ。溜め池の名称を知ったのは、現況の溜め池などの名称が詳しく記載されている市の防災マップ関連のページだった。その奇妙な名前が気になり、もしかすると溜め池に築堤記念碑のようなものでもあれば由来が分かるかも知れない…と興味を持ち始めた。

自転車で丸尾方面に行くとき、単一の目的地へ急ぐのでなければ大抵は海沿いの道(市道西岐波東海岸線)を経由する。比較的アップダウンが少なく海の眺めが良いからだ。とん堤はその道から割と近いところにあるので、次にこの方面を訪れるとき調べる予定にしていた。年明けすぐに村松の嶽ヶ鼻を2度ほど訪れ、2度目のとき溜め池のことを思い出して立ち寄ろうとしたのだが見つけることができなかった。

初めて溜め池攻略を企てたときは、地図のこの分岐点から左側の道を下った。


現地ではこの場所になる。
写真は以下のものと同一日の撮影


遠巻きに眺めるだけならまだしも、この溜め池の堰堤部へ行くには経路は複雑だ。ここからの場合、一旦北上してバス停サインの見えている道近くまで出て折り返す形になる。このときはどっちへ行けば良いものかすら分からず同じ道を再び辿ってしまう誤りも犯して退散している。

そして今回が2度目だ。かなり暖かくなってきた3月下旬、天気が良いので海の写真を撮ろうと東岐波方面へ行く折りにこの溜め池攻略を組み込んだ。前回かなり道に迷ったので、狭い道も漏らさず野帳にメモ書きしたマップを準備していた。それでいながらやはり迷っただけでなく、前回よりも酷い道誤りを犯していた。時系列記事として記録として書き留めるだけなので現地到達までの過程を小さめの写真付きでざっと報告しておくと…

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このたび選択した枝道。
実はここからして間違っていたのだが現地では気づいていなかった。


この分岐路は上の地図では前回の「正しい分岐点」を300m程度も行き過ぎた場所だ。「クランク状になっている分岐点」として頭に入れていたこと、前回の分岐路が正しかったのにその時到達できなかったので違う道だと誤判断していたこと、目標となる商店などが沿線にないのが原因だった。

舗装路を進むと下り坂となり、沢地を横切るような場所を通る。


この時点ではもう現在いる道のどちら側に堤があるかも分からなかった。
そのため道路のなりを見たとき前方の直線部分が探している溜め池の堰堤部分では…と感じた。


そこは確かに道路より一段低くなっていて一面荒れ地になっていた。


地図では一部に水が溜まっておらず草地のようになっている様子を覚えていた。
しかしいくら何でもこれではないだろう…と思いつつ通り過ぎたのだった。
以前もお伝えしたように私は未だガラケー使いで外へ居ながらにしてネットに接続できる手段を持っていない。この時点でバッグに入れていた野帳のメモを取り出した。もっとも分かりやすいランドマークとしては市道吉田丸尾線のバス停くらいのものなので、まずは本線まで出ることにした。

この場所は前回も通った記憶がある。
メモを持っていなかったのでまったく見当であちらこちら奔走していたのだった。


市道吉田丸尾線へ出るのは容易だったが、まだ行き過ぎていると思っていなかったので危うく東側へ行きかけていた。真逆の西へ進むことでやっと村松のバス停を見つけることができた。
簡単に見つかるだろう…とたかを括っている物件に対しては我ながら案外、アナログなことをやっているのである。


手元のメモではバス停の西側にある道を降りるようになっている。
この枝道だろう。


市道と枝道の角地にはごく小さな溜め池がある。それも野帳に書き留めていたので、今度こそこの道で間違いないと確信した。


この先は確か道がなくなるところまで進めば自然と目的の溜め池に行き着く筈だ。
下り坂なのでサドルに跨がったままごろごろと下っていく。


溜め池の近くに枝道がいくつかあることは分かっていたが、そのどれもが堰堤に向かっているので細かなメモはしていなかった。しかしいざ分岐路に出会うと、さてどっちだろうということになるものである。地図では分からないが下った先の住宅地周辺は結構なアップダウンが多く、無駄に漕ぎ回ると体力を消耗するのでしばし自転車を停めてサドルに跨がったまま再び野帳を参照していた。そのとき…一台の普通車がこの道に入ってきた。

私は邪魔にならないよう分岐路の枝部分へ自転車を移動したのだが、その方は予想外に枝道の方へ車の頭を突っ込んで自分の居る方へハンドルを切られた。運転席のパワーウィンドウが開いた。
「すみません。バックで入りますんで。」
いえいえ…私こそよそ者な訳でしてご迷惑をお掛けして申し訳ない…何だか絵に描いたようなバッティング劇だ。私はここから溜め池が近いことは確信していたので聞いてみる必要はなかったのだが、わざわざ運転席の窓を開けられて話ができる状況だったので何か有用な情報が得られるかも知れないと思いとっさに尋ねた。
「あの…すみませんがちょっといいですか?この辺りに溜め池とかありますか?」
運転席にいらしたのは私より若い方だったがまったく迷うことなく答えられた。
とん堤のことですか?。この先ですよ。もう草地になっているかも知れないけど…何か?」
「市内の溜め池を訪ねて写真を撮って回っている者です。名前が独特だなーと思って…何か由来とかご存じですか?」
「さぁーちょっと分からないなー。」
車庫入れの途中だったのでそれ以上私は尋ねはしなかった。しかしおおよそ生活とは関わりの薄い小さな溜め池なのに名前をご存じということは、地元では結構知られているのだろう。灌漑用水の利用がなくても小さな子どもが居れば不用意に近づかないよう教える中で名前を耳にすることがあるのかも知れない。

バッティング劇があった場所を振り返って撮影している。
写り込んでいる家や車はお尋ねした方とは無関係です…まさか記事になるとは思わなかったでしょうね


宅地内の道を下るだけ下っていくと…やがて舗装路の末端部に来た。その先には草地状の道がみえる。
この先にありそうな気配だ。


自転車を降りて押し歩きモードに切り替える。
やはり、あった。ここだったのだ…


到達を確信したところでいつも通りのクリックで拡大する画像サイズに戻すとすると…堰堤への道はあったが、殆どここへ来る人は居ないらしく草だらけであった。


堰堤はコンクリート製らしくその上にネットフェンスが設置されている。
草地になっているかもという地元民の話があったが、普通に水が貯まっていた。


コンクリート堰堤にネットフェンスは近年の施工だ。特にアルミの被覆なしフェンスは昭和50年代以降でないと現れないので、近年改修したのかも知れないと思った。

(「とん堤【2】」へ続く)

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