山陽小野田市道・談合道上市線

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現地踏査日:2011/12/26
      2012/2/18
記事公開日:2012/3/9
市道レポートは原則、自分の居住地である宇部市道に限定する積もりで居たのだが…話の流れからお隣りの山陽小野田市道の記事を書くことにする。

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山陽小野田市道・談合道(だんごうどう)上市(かみいち)線は国道2号・談合峠交差点と国道190号・上市交差点を結ぶ道で、かつては国道2号の一部であった。
国道2号の厚狭および埴生地区の交通渋滞を緩和する目的で厚狭・埴生バイパスが造られた後、国道2号の経路が指定替えされた。
談合峠交差点以西は下関市の東端にある工領(くりょう)交差点までバイパス側を国道2号に指定替えする一方、旧国道2号の談合峠交差点から上市交差点までが山陽小野田市道の本路線へ、上市交差点から工領交差点は国道190号の終点を延伸することで分割された。
それまでは上市交差点が国道190号の終点だった

国道や県道が Wikipedia によってほぼ網羅されているのに対し、市道の路線名や経路などの情報は未だネット界では発展途上である。この市道については、Wikipediaの項目[1]に一部記述が見られるだけである。
道路の路線名は、起点と終点を2つ並べて構成する方法が一般的である。この市道の場合、終点の上市は現在も使われている明確な地名であるのに対し、起点の談合道という地名は一般的ではない。恐らく談合峠付近にある小字と思われる。

中国地方、特に山口県にあっては古い峠に対して「〜峠」をそのまま「〜とうげ」と読むのは稀で、「〜とう(どう)」「〜たお」などと呼称に揺らぎがあることが知られている。
これは峠の「談合峠」が現在一般に呼ばれている「だんごうとうげ」ではなく、かつては「だんごうどう」と呼ばれていた可能性を示唆するように思われる。もし起点付近の小字が談合道と呼ばれるなら、談合峠の”揺らぎ読み”の一例ではなかろうか。
詳細は地元聞き取りなど調査が必要

さて、期日を違えた写真の繋ぎ合わせが多くなるが、現地の映像をお届けしよう。

以下の2枚は、3年前の初夏にアジトから自転車で遠乗りしたときの映像である。
アジトからの工領交差点到達は自転車遠乗りの記録で今も破られていない

国道2号・厚狭埴生バイパスの埴生側から撮影。
右側にうどん店があり、そこが埴生の街並みへ降りていく市道になる。
青看で右折の行き先が抹消されている…路線の指定替えが行われるより看板が立つ方が早かったらしい


厚狭側から撮影。
上下線4車線はこの談合峠交差点までで、これより埴生側は対面通行となる。
写真は3年前だがこの状況は記事を書く現在も同様である
直角に取り付き、うどん店の左脇をすり抜けて通っているのがこの市道だ。


さて、このときは国道190号の終点まで自転車走破し、アジトへ戻るのに厚狭・埴生バイパスのここを通過しただけなので市道の方は走っていない。

この18日のこと、起点から埴生方面へ向かって走る便があったので、ダッシュボードにデジカメを固定して動画撮影してみた。
昼からかなり酷く雪が降るあいにくの天気だったので視界はあまり良くない。全体の状況をお伝えするために、やや長くなるが起点より談合峠を過ぎた先から動画を採取してきた。

[再生時間: 1分]


途中で上方を横切る橋梁は山陽自動車道である。ここを過ぎると瀬戸内海が眼下に望め、ほぼ正面遠くに関門海峡が見える。天気の良い日には関門大橋も見ることができる。

かつて国道2号がここを通っていた時代は、下関へ向かって長距離を走る車は今坂峠、吉見峠、西見峠、そしてここ談合峠を越える必要があった。更に国道2号が久しぶりに瀬戸内海を眺めることのできる場所とも言えた。
国道2号から瀬戸内海を望めるのは防府の東端にある富海(とのみ)近辺が最後で、そこから国道は暫く内陸部を走るようになる。談合峠を過ぎ、今は市道となったこの路線を走ることで、再び瀬戸内海の開ける様子を眺めることができる。
その光景は、長距離ドライブする運転手に九州が近いことを感じさせるものだったに違いない。

今となっては貴重な改良前の上市交差点の写真。
1999年12月27日に業務中のパトロールカー助手席より撮影
かつてはここが国道190号の終点で、国道2号に薄くスライスする形で交わる変形交差点だった。


先の動画で上市交差点を過ぎた左側にガソリンスタンドが見えているだろう。このスタンド自体は全く位置を変えず、交差点自体が起点側へ移動する形になっている。薄くスライスする形の古い経路は、現在も国道190号の一部として管理されている。

この形状が災いして、上市交差点はかつて宇部から国道190号を走ってきた車が談合峠方面に曲がることができない欠陥交差点として知られていた。交差点に「右折できません」の看板が出ていたし、古いロードマップには交差点で右折できない旨が記載されているものがあった。
談合峠から来た車は細い市道の一部を通って宇部方面へ曲がることはできた

今からすると考え難い話だが、宇部側から走ってきてどうしても談合峠方面に右折したい車は、一旦旧国道2号を直進して先にある広い駐車場などを保有する店舗に入り(往々にして今も営業している「みちしお」だった)駐車場を使って転回し、改めて談合峠方面に向かう以外なかったのである。
この状況は厚狭・埴生バイパスが供用開始されるより早い時期に交差点改良によって解消された

この3枚は、先と同じ3年前の自転車遠乗りで行きに撮影した映像である。

上市交差点。
国道190号はここで直角に曲がっており、かつて埴生を出た国道2号はここから峠を目指して登っていた。
ここが現在の談合峠上市線の終点になる。


言うまでもなくかつてこんな広い交差点はなかった。
この前後と同じ対面交通で、宇部側へ帰る車は談合峠方面からやってくる交通が信号で停まった状態から薄く右スライスする形で分岐していた。
宇部側からの右折車があり得なかったので、談合峠へ向かう車は常時直進可能だった。


国道190号側から見た上市交差点。右折が市道になる。
青看の路線番号に消して書き換えた跡が見えている。かつては矢印の双方に「2」が書き込まれていたはずだ。


かつての国道2号が市道に払い下げられただけなので、道路規格としてはいずれも等価である。しかし厚狭・埴生バイパスが全通して国道2号がバイパス側へ指定替えされてからは市道の交通量は激減した。そのためか信号のサイクルタイムも割を食って大幅に短縮されている。
談合峠へ向かう青時間は長いが逆方向の青時間は極めて短い

路線の写真撮影は、これより一週間くらい前に埴生から船木方面へ寄るときに行った。同様にダッシュボードにカメラを固定し、要所で撮影することで行っている。
フロントガラスが砂塵で汚れて見づらい…ちゃんとワイパーかけておけば良かった^^;
その映像を元に解説しよう。

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埴生の街並みを出た旧国道2号は上市交差点を直進する。
歩道の信号は既に赤に変わっている…直進と右折は青だが談合峠から下ってくる側は既に赤になっているはず


先に述べたようにこの区間は旧国道2号だったので、市道とは言ってもかつては西日本の車交通を支える大動脈だった。それだけに道路規格は決して見劣りしない。

上市交差点を過ぎる前から既に高度を上げている。それから徐々に勾配がきつくなり、右手下に瀬戸内海が見えるようになる。下関から走ってきた車にとっては瀬戸内海に別れを告げるスポットであり、ここから先は当分の間海は全く見えなくなる。

この最初の大きなカーブの外側にドライブイン南国がある。昭和中期以降こうした郊外型ドライブインが隆盛を極めていて、主要な峠付近には必ず存在していた。斜陽化とライフスタイルの変化からか現在は激減している。
一頃は閉鎖されていたように見受けられたが現在は再開しているようだ

かつては見られなかった景色の変化もある。山陽自動車道である。
坂の途中で高架橋にて横切っている。


なおも高度を上げていく坂の途中、左側にやけに警備の厳重な施設に出会う。


ここに入口があるのだが、門は閉まっておりインターホンで認証を受けなければ入場できない。また、敷地の周囲は有志鉄線付きフェンスが二重に張り巡らされている。
それほど厳重な施設なので、たまさかフェンスを越えて勝手に侵入するなんてことをやれば誰でも明日の朝刊あたりで実名付きで一躍有名人になれることだろう。
当たり前だが有名になるとは言っても不法侵入という意味で…^^;

末尾にある国土地理院の地図では「自衛隊」という表記がある。そのことで自衛隊関連の設備がある敷地ということは分かる。しかし殆どの人にとっては、やけに警備が厳重でものものしい謎の施設という程度にしか分からなかっただろう。

どうしても中の様子を観てみたい…という詮索好きな読者には朗報だ。全く今は良い時代で、航空映像でそれなりに鮮明な情報を得ることができる。
Yahoo!の航空地図では別に”黒塗り地域”にはなっていないので、鳥になった気分で上空から事由に観察することができる。

事実だけ述べるのは問題ないだろうからここに書き記すのだが、かつて業務上の要請を受けて入場したことがある。単独ではなく会社の方と一緒で、構内の除草作業に関する見積もり作成にあたっての仕様書を受領に行ったのだった。

したがって間接的ではあるが、私はこの敷地内にある設備群がどういう機能を持ち、何のためにここに存在するかの概要を知っている。しかし前職を退いて何年も経った現在でもそのことについて述べる訳にはいかない。自衛隊に関連する極めて重要な施設がここに置かれているという以上のことは言えない。何の繋がりもなくなった今は、私がこの敷地内へ立ち入れる日は二度と来ないだろう。
ダム発電所の一般見学会のようなイベントが開催されれば別だけど…

旧国道2号はなおも高度を上げていく。縦断勾配はそれなりにきついが、極端な減速を強いられるほど半径の小さなカーブはない。


やや縦断勾配が緩まり、先で大きなカーブを迎える。
写真では見えないがこの近辺は溜め池が意外に多い。特にこの右側に見える溜め池は、数年前の豪雨で道路の路肩部分が大きく崩れ、相当長い期間改修されずコーンとバリケードが置かれていた。
管理主体が山陽小野田市へ移行したので予算がなかったのでは…


大きなカーブの先に青看が見えてくる。もう300mで国道2号だ。


そして最高地点となる談合峠に到達する。
紛れもなく峠なのだが、すぐその先が談合東交差点となっており、周囲にはコンビニをはじめ店舗が集まってきたことで峠のイメージが薄れてしまった。


談合峠は旧国道2号にあった著名な峠の一つだから、当然別記事を仕立てなければならない。
派生記事: 談合峠
ここで国道2号厚狭・埴生バイパスに接続している。最初に断ったように、こちら側が起点だ。


この旧国道2号と厚狭・埴生バイパスに挟まれた部分にうどん屋がある。バイパスが出来るのに合わせて店舗ができた。


値段や味に関しては実際に訪れた方の評価に任せるとして、埴生で一遊びした帰りに船木方面の仕事があるとき、しばしばこの店を訪れて簡単な食事をとっている。
食べるものも常に同じで毎回「天ぷらそばの大盛り」一本槍^^;

厚狭・埴生バイパスが開通して車の流れが大きく変わったからこの地も変遷を遂げたのである。
今でこそ賑わっているもののかつては交差点など存在せず、峠を過ぎれば厚狭側へ下っていく国道2号の道一本があるだけだった。

この痕跡を今でも観察することができる。
かつての国道2号は山際に沿って近回りしており、単なる坂道の一部だったことが分かる。


厚狭・埴生バイパスは旧国道2号の道路敷の一部を取り込みながら、この先にある談合東交差点で再び旧国道とは別の独自路線を通っている。
正面のガソリンスタンドもかつては存在せず、営業店舗など全く存在しないただの山道だったのだ。


旧道路敷から振り返って撮影。
かつては最後の登り坂をこなした後に談合峠を迎える状況だったことが分かる。


今や国道2号はバイパスが全通し、市道格下げとなった旧道部分も埴生の街中を通る交通需要がある。両者は今後も住み分けをはかりつつずっと役目を果たし続けることだろう。

【路線データ】

名称山陽小野田市道談合道上市線
路線番号---
起点国道2号・談合東交差点
終点国道190号・上市交差点
延長約1.5km
通行制限特になし。
備考旧国道2号からの払い下げ区間。

延長など各データの正確性は保証できません。参考資料とお考えください
出典および編集追記:

1.「Wikipedia - 厚狭・埴生バイパス|概要

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