汗疱状湿疹(指湿疹)

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記事作成日:2022/10/22
最終編集日:2022/10/23
ここでは、当サイトの管理人が季節によって発現する湿疹の一形態である汗疱状湿疹についてまとめている。
写真は症状を起こしている患部。


指や手のひらに生じることが多く、このため指湿疹とも呼ばれる。あるいは汗疱状湿疹を略した汗疱も用いられる。

夏場の平均気温と湿度の上昇傾向から、近年増えてきている可能性のある疾病である。一般的事項については[1]を参照。なお、以下の記述は当サイトの管理人が体感した報告であり人によって出方が異なる。同種の症状に悩んでいる方への情報提供も兼ねている。
《 概要 》
指や手のひらなどに生じる痒みを伴う季節性の湿疹である。毎年5月頃から始まり10月頃まで続く。それ以外の時期には少なくとも指にはこの症状がまったく発生しなくなる。したがって春から夏にかけての時期は両手が掻き毟りなどで酷い状況になり、秋口を過ぎれば跡形もなく綺麗に治る。

何となく患部に違和感があって無意識に掻いたり触ったりすることで刺激され、血液が集まることで症状が増悪する。掻き続けることで患部が湿潤して皮膚の下に血液の混じった漿液が溜まる。そのことで圧迫され余計に刺激が加わるために更に痒みが強くなる悪循環を辿る。


酷いときには小さな豆粒状になるほど膨満しやがて破裂する。痛覚は患部への接触を遠ざけるが、痒みは逆に更なる掻き毟りを誘発して酷くなる一方なので、意図的に掻き毟り皮膚が破れて痛みに変わることで痒みは収まる。漿液が排出された後、患部が干涸らびて軽い痕跡を遺す。指の関節など骨と皮膚が薄い状態で接している箇所に多発する。指を含めて甲の方にできることは稀である。
【 病名が分からなかった時期の状況 】
この疾病が現れた時期は正確に把握されている。2014年の5月連休明けのことで、何とも言えない両手の指のザワザワ感とそれに続く痒みが特徴的だった。たまらず掻き毟ると赤くなりやがて水疱が生じた。この時点では指湿疹という病気自体の知見がまったくなく、接触性皮膚炎が疑われた。

最初に原因として疑ったのはゴムによるかぶれである。5月入りして急に温かくなると手にも汗をかく。自転車のハンドルにはゴムカバーがはめてあり、これを汗まみれな手で握り締めることでかぶれたのではないかと考えた。それで原因を切り分けるために自転車のハンドルにラップを巻いて直接ゴム部分が触れないように対処した写真がある。


しかしこの対処を行っても症状はおさまらなかった。指の関節の横は皮膚が薄くなっていてそこに多発した。掻くことで水が溜まって水疱ができる。この過程は猛烈に痒く大抵は水疱が破れた。

皮膚科に行く以外ないと感じながらも、今や軽微な頭痛や腹痛はセルフメディケーションで対処すべき時代である。ネットで調べることでそのものズバリである汗疱の項目を見つけた。すぐに暗澹たる気持ちになったのは、この病状を根本的に治癒させる方法が存在しないという点にあった。

多汗症の人に多いという記述が[1]にある。実際その通りで自分も夏場は激しい運動をすると身体から水が漏れるような汗のかきかたをする。これは恐らく自律神経系によるもので、そのことと皮膚の弱さが症状を誘発させたようである。以前から両手親指の関節がムズムズすることがあり、気になって触っているうちに水疱が出てくることはあった。
【 皮膚科による診断と処方 】
最寄りの皮膚科へ行って症状を訴えた。このときネットで調べた情報として汗疱というのが出ていると話したところ、院長は紙にそのまま汗疱と書いてデスクマットの下へ入れた。このメモ書きはずっとマットの下へ入れられたままで、毎年症状が出て当該医院を訪れるとき同じ状態になっている。

一般的な湿疹に対して用いられるのと同じアレルギーを抑える内服薬としてエピナスチン、痒みを抑える薬に副腎皮質ホルモンを含んだ合剤エンペラシンが処方された。
写真は処方された薬。


また、患部に塗る外用薬として strongest な外用合成副腎皮質ホルモン剤(デルモベート)が処方された。


内服薬はかなり効く感じがしたが、外用薬は効力が最強ながら皮膚への浸透量が限られるせいか殆ど効果が感じられなかった。食器など洗い物をすると流れるためその都度塗り直さなければならず、指先がベタベタしてキーボードを打つのに支障となった。

対症療法の薬であるため、症状が出なくなる秋口まで飲み続ける必要がある。後述する副作用の問題があるので、痒みがそれほど強くないときは適宜飛ばしている。しかし夏場は夜寝るとき痒くなくても服用を飛ばすと翌朝に症状が酷くなる。薬は2週間分しか処方されないので、症状が出る期間は半月ごとに薬をもらいに行く必要がある。塗り薬があまり使われず手許にストックがあるので、後には内服薬のみもらうようになった。保険診療の対象であり、一年の初めにかかるとき初診料がかかる。後の継続では処方箋と薬代で千円ちょっとかかる。
【 薬の副作用と思われる現象 】
最初に障害が現れたのは爪だった。特にバドミントンでは急激に走り始めたり停まったりするので、足先に衝撃がかかる。いつも通りの動きをしていたのに、反復することで両脚の親指の爪が剥がれる事象が起きた。更に台所でスポンジを急須の中へ突っ込んで洗っていたとき、右手中指の爪がちょっと急須の内側の陶器部分に触れただけで激痛を感じた。見ると中指の爪が真ん中から裂けていた。このことより薬を飲むことで皮膚が異常に弱くなると分かった。

次に薬をもらいに行くときその現象を告げると、確かに副腎皮質ホルモン合剤の副作用と告げられた。中長期に服用し続けることで皮膚が破れやすくなる副作用が知られているので、エンペラシンのみ1錠から半錠に減らす処方を受けた。症状が軽くなれば副腎皮質ホルモン剤は漫然と服用しないように告げられ、そのことは一般的にも認識されている。[2]並行して爪が割れやすくなるのを避けるために補強を兼ねてマニキュアを塗った。初期はトップコートによる補強のみだったが、後にこれは遊び感覚でピンク色のネイルを施す習慣につながった。

別の副作用として、物事に対する感応度や注意力の低下が起きるように思われた。特に痒みが酷くなったとき頓服的に服用すると、その後暫く机に向かっていても気分がどよーんとして意欲が削がれた。注意力が低下したからか、自転車を漕いでいて歩道から突き出た視線誘導表にペダルを引っ掛けて転倒し大怪我をしている。眠気を催す副作用は抗ヒスタミン剤にはありがちなため、クルマの運転を控えることが推奨されている。

副腎皮質ホルモン製剤に共通する著名な副作用にムーンフェイスがある。顔に限らず肥りやすくなる。特に夏場は薬が手放せない上に暑さで運動する機会が減るので、体重や体格に顕著に現れる。
【 薬の変更とセカンドオピニオン 】
医者にかかるときのセカンドオピニオンの重要性が問われ始めていたため、初期にはいつまで経っても軽快しないことから別の皮膚科で診断を仰いだ。しかし塗り薬は洗い物や手仕事で剥がれてしまうのでこまめに塗り直すこと、患部へ盛るように塗るのが良いと指導されただけで何の新たな知見も得られなかった。

薬の相性が有るかも知れないと考え、アレルギー性の痒みを抑える市販薬を購入して試したことがある。飲む痒み止めとして市販されているジフェンヒドラミン製剤は、初回に服用したとき猛烈な眠気を覚えた。それは2度目以降の服用からは起きない代わりに症状を抑える力もなかった。次にフェニルクロラミン製剤を試したものの、若干の眠気を感じたのみで効いた感じがしなかった。この成分はエンペラシン合剤にも含まれている。

塗るタイプの痒み止めとしては、蚊に刺されたときの外用薬が市販されている。これは外用の副腎皮質ホルモン剤以上に対症療法的で、軽い麻酔作用で感覚を鈍らせたり刺激による反作用を期待するものでしかなかったが、爽快感から一時的に痒みを別の感覚へ置き換えることが出来る点において相応な効果はあった。
【 一時的な劇症化 】
汗の排出が巧くいかず皮膚の下に溜まることによって刺激され痒みを覚えるようなので、汗をかきがちな季節は特に酷くなる。気温が一気に急上昇するような日が特に悪く、最初の症状認識が5月の連休明けというのは毎年概ね一致している。気温の急上昇以外でも痒みが爆発的に広がるような現象が知られる。朝から前日よりも気温がかなり高い環境で起床した直後に起きることがあり、モーニングアタックとして知られている。起床に伴い血流が急に活発化するのが要因かも知れない。

この他に前日酷く体力を消耗するような運動などをしたとき、普段よりも数時間の夜更かしをしたとき、缶チューハイのようなアルコール飲料を飲んだとき、暴飲暴食や逆に栄養のあるものをキチンと摂らずに食事を済ませたとき、鮮度の落ちた刺身を食したときに症状が酷くなる。

劇症化したときは両手の指全体がワサワサと何かが這い回っているような極度な痒みが生じる。掻き毟ると一時的に掻痒感が低減するので掻きたくなるのだが、無節操にそれをするとやがて両手の指に滲出が起こって不定形に膨れあがってしまう。そこまでしてしまうと痒みを低減させるのが厄介になるので、とにかく掻き毟り続けないことに尽きる。指湿疹に限らず掻くことで一時的に楽にはなっても、間違いなく症状を酷くしてしまう。水疱が出来るのを気にして触り続けるのも良くない。滲出が酷くなってやがて水疱が弾けて破れる。そうなると破綻した皮膚が正常に戻るのに時間がかかってしまう。不衛生な状態になっていればそこから化膿してしまうこともある。

血行が良いと痒みが酷くなるので、痒みを抑えるためにはその逆が必要である。抑えがたい程に痒みが強いときは、冷たい水に両手の指を浸けるか冷凍庫から凍ったものを取り出して握り続けると楽になる。充分に冷やして痒い周辺の血流が少なくなったら痒みは治まるので、その後はタオルで水を拭き取って刺激を与えないように注意する。
【 症例の季節性 】
高温多湿にかなり依存して発生する症状なので、夏も終わる頃に少しずつ症状が起きる頻度が減っていく。長袖でなければ寒いと感じ始める程度の気温になる頃には、もう薬の服用が要らなくなる。掻き毟ってガサガサになっていた皮膚も自然治癒し、冬場は症状の痕跡も分からなくなる。

それでも痒みがまったくなくなるわけでもなく、初冬でも小春日和の如く急に暖かくなるような日では痒みが再発することがある。ただしその頃にはスポット的な服用にとどまるので、病気のやり過ごし方を覚えた近年では秋口に入ると服用する頻度を減らす代わりに正規の2週間分の薬処方は受ける。そして翌年の初夏になって再び薬が要るようになるまで内服薬を備蓄し、頓服的に適用するといった対処をしている。
《 症状を抑える方法 》
この症状は直接的に生命を脅かされることはないものの、発症している期間中は著しくQOLが損なわれる。意識をもっていかれるために集中力や生産性が落ち、薬の副作用による精神的沈滞も大きい。注意力の減退によると思われる事故も起きやすい。以下は確定的ではないが、数年来症状と向き合ってきたうちで経験的に分かってきたことである。

以下の状況や行動は痒みを発生させたり増悪させたりするので、避けた方が良い。
(1) 生活リズムが乱れること。(極度な夜更かし)
(2) 身体的な疲労を高めること。(長時間の屋外行動、極度に激しい運動)
(3) 鮮度の落ちた魚類の摂食。(スコンブロイド食中毒)
(4) アルコール飲料の摂取。
(5) 皮脂を極度に奪い去ること。(石けんなどによる洗いすぎ)
(6) 高温多湿な場所に長時間滞在すること。
食生活が因子と考えられがちだが、栄養バランスを考えた食事はこの症状の回避や軽減に殆ど寄与しない。体質と永年の食習慣、遺伝的要素によるものと考えられる。アレルギー性疾患は人によりぜんそく、鼻詰まり、くしゃみ、目の痒み、肩こりなど多岐に亘るが、その一形態と思われる。回避するための知見がある程度得られたことから、近年では症状が激化することは少なくなった。

痒いとき掻き毟ると一定の爽快感が得られる。しかし掻き毟ると皮膚が荒れるだけでなくバリア機能が低下するため感染症のリスクが飛躍的に高くなる。これを避けるために痒み止めの塗り薬で対処するようになった。
写真は現在使っている痒み止め。


これはメントールなどの爽快感による反作用と、軽い麻酔性作用を持つ薬品によって痒みを散らす効果を期待するものである。対症療法に過ぎないが、一時的に痒みが抑えられ掻き毟ることを回避できる。
【 近年の状況 】
指湿疹が秋口以降の涼しくなる季節には出なくなる代わりに、近年では指先ではなく肘や腰骨など関節の上に皮膚が被さっているような場所や足の甲、脇腹などの痒みが現れ始めた。厄介なことに季節を問わず発生する。むしろ冬など空気が乾燥する時期に多いようで、加齢現象の一つと諦めている。対処方法は指湿疹と同様に市販の痒み止めを塗っている。

抗アレルギー剤であるエピナスチンは、同等の効能を持つものがドラッグストアで入手できる。ただし自由診療扱いになるので価格は極めて高い。セルフメディケーション税制の対象になってはいても全額が控除の対象となるわけではなく、仮にそうなってもドラッグストアの販売価格が今よりずっと下がらないうちは毎年皮膚科で診療を受けて薬をもらう以外ない。特にエンペラシンのような副腎皮質ホルモン製剤は OTC になっておらずその見込みもないため、ドラッグストアで購入できるようになる日は来ないだろう。
出典および編集追記:

1.「Wikipedia - 汗疱状湿疹

2.「ハイパー薬時点|セレスタミン

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