婦曽婦曽

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記事作成日:2016/7/21
婦曽婦曽(ふそふそ)とは二俣瀬区山中の南に存在する地名である。
写真は市道杉河内線の道中、字婦曽婦曽の南側に位置する峠付近からの撮影。


大まかな位置を地図で示す。
中心位置として設定された場所に特別の意味はない


更新履歴や地名セクションからこの地名を知ってアクセスした方ならまだしも、市道杉河内線の時系列記事から誘導された読者は何のことかさっぱり分からないかも知れない。しかし信じがたいだろうが如何にも婦曽婦曽は実在の地名(小字)で、後述する耕地字図で示されるように3連続溜め池を含む南北に細長い沢地が字婦曽婦曽である。
漢字での記述や読み方からして非常に謎めいており、市内において現在のところまったく由来が分かっていない地名の一つである。
《 地名を与える資料 》
この地名に対する資料としては、時期を違えた字図が知られているのみである。
以下は二俣瀬区耕地字図によるもので、二俣瀬と善和の双方から記述した異なる制作時期のものが存在する。
いずれも郷土資料館に保管されている現物を複写したデータのうちの一部



現地に人家などはないのでこの地名が表立って現れる可能性は殆どない。しかし耕地字としては今も存在し、現行の記述法では婦曽々々となっている。
本編では特段の事情ない限り婦曽婦曽の表記で統一し記述している

地名明細書には阿弥陀堂が収録されているだけで該当する地名はない。上記の絵図は耕地字を収録したものであり、当初から人家が存在しなかったためであろう。あるいは既存の地名から後年分化したか、新規開拓者による命名と思われる。

現地には婦曽婦曽という地名を示すものは何も見つからなかった。耕地字であり今後も関連するものが見つかる可能性は薄い。他方、仮に(殆ど可能性は無いのだが)この近辺で広範囲の宅地整備などが計画された場合、開発許可行為標識には所在地として「宇部市大字山中字婦曽々々xx番」と記載されるだろう。
《 地名の由来 》
当初はその読み方すら分からず、一時期は婦の文字に対して婦負(ねい)と読ませる地名の存在[1]より「ねそねそ」ではないかと考えられた。川上に祢曽ノ尾(ねそのお)と読む小字が存在するため、関連性を考えたのである。しかしその後この地名が登記簿上で「婦曽々々(ふそふそ)」として記載されていることが判明したため否定されている。

関連性があるかも知れないが、厚東区や二俣瀬区、船木の一部には同音を重ねた地名が目立つ。特に道々(どうどう・どんどん)という表記ないしは類似音を持つ地名は上記の地域では数ヶ所見つかるのに岐波や厚南ではまったく知られない。これは地勢由来だけでは説明できない地名命名法の特性である。

理解困難な地名の多くは漢字表記や読みの揺らぎが重なったために発生したという考え方があるが、この地名はそういった仮説をもってしても説明不可能である。
山中地区で地元聞き取りを実行すればこの地名に関する情報がある程度得られるだろう。しかし今のところ上記の絵図以外には地名の由来どころか婦曽婦曽という地名を記した文献に出会えていない。
【 最近の調査結果 】
2016年7月に防長風土注進案を閲覧していて、二俣瀬村の河川や堤を収録した記述の中に「ふそく堤 同貳畝」という記載を見つけた。堤の名前は殆どが漢字表記なので平かな表記されたこの部分はすぐに目に付いた。

図書館で閲覧した書籍は昭和36年に編集校訂されたもの(以下「写本」と記述)である。写本では「ふ」「そ」「く」「堤」と一文字ずつが現在と同じ平かなおよび漢字として縦書きに記載されていた。写本では他の平かな活字と同じサイズ、現在用いられる平かなの「く」として印刷されていた。その表記自体を全面的に信頼するなら、溜め池の本来の名称は「ふそく堤」だったのではないかという考え方が可能となる。

他方、現在の「く」に似た字体として昔よく使われていた反復を示す踊り字の存在がある。これは本来なら全角2文字相当の長さで記述されるべきものである。写本側で平かなの「く」が印刷されている理由は活字が存在しなかったか、写本を制作する過程で参照された防長風土注進案(以下「原本」と記述)の表記の誤読が考えられた。口頭での伝承の場合「ふそく」と「ふそふそ」と取り違える可能性はまったくないので、踊り字だったのか現行の平かな「く」なのかが本質的な部分である。

字婦曽婦曽の大半は沢地であり、そこでは3連続溜め池が中核的役割を成している。この溜め池が地名にそのまま継承されたと考えるのが自然である。この地名の由来は、当初あの溜め池がどのように呼ばれていたかに帰結される。整理すると、防長風土注進案の記述からは次のいずれかが考えられる。
(1) 元々は「ふそく堤」だったのだが、表記されたものを書き写すとき「く」を踊り字記号と取り違えられ「ふそふそ堤」になった。
(2) 当初から「ふそふそ堤」であったのだが、表記されたものを書き写すとき踊り字記号が現在の平かな「く」に取り違えられ「ふそく堤」として掲載された。
この際の「書き写し」とは、何かの情報源から原本へ転記された時点のものを指す。原本から写本する過程では正確を期するため欠字や明白な誤り、虫食いや不明瞭で読み取れなかった部分などを厳密に分類し、どのような操作を加えたか冒頭部分に記述されているので、この時点での誤記の可能性はきわめて低い。[2]

現行の地名が「ふそふそ」の読みであること、読みが「ふそく」となる地名の存在がまったく考えられない[3]ことから (2) の状況を推測する。即ち地名の大元となった「ふそふそ堤」が江戸期から既に存在していたのではないだろうか。

写本側の「ふそく堤」は婦曽婦曽を意図して書かれているのであり、現在の漢字表記は地名らしく見せるために適宜漢字を宛てたに過ぎない。単純に音を借りているだけでそれぞれの「婦」や「曽」自体が地名に対して与える意味はまったくないと考える。
【 結局「ふそふそ」とは何か? 】
どう思っても「ふそふそ」(あるいは可能性は殆どないが「ふそく」)は地名に馴染まず意味を解し得ない語である。しかし入手可能な資料はそれが歴史的に実在した地名である証拠を提供している。何の根拠も持たずもたらされる地名などあり得ないので、この地に何か未だ手にしていない歴史的事件や史実が存在する可能性は残すとして、その音や現地の地勢から由来を推察する以外ない。

同音の繰り返しであることから、この地名は擬音語・擬態語由来に分類できる。もっとも近くて現行の語と感覚的に近い擬音語として「ふさふさ」が挙げられる。ただしそれは山や川といった地勢には馴染まない形容語である。ややかけ離れるが「ほそぼそ」という擬音語を考えるなら、沢地を少量流れる水のさまを形容しているとも言える。ただし語の揺らぎを認めるとしてもそこまで変化することがあるかは疑わしい。

ここまで来れば殆ど思考放棄に近いものもあるが、名田由来の一形態という考え方はできないだろうか。即ち地名の本質である「他の場所と区別できれば足りる」という条件の下で開拓者が与えた地名という見方である。
名田由来の地名の場合、通常は自らの名や屋号などを元に造られる。人名を想起させる地名など典型例であるが、中には奇っ怪な屋号を持った地主が居るかも知れない。あるいは直接的に奇っ怪な地名を与えた可能性はないだろうか。何しろ数百数千という小字が存在し、名田由来の地名も相当な比率を占めている。その中には由緒不明な地名を「造り上げて」触れ回る開拓者の一人くらい居てもおかしくはない気もする。
【 現地聞き取り調査 】
現時点ではまだ行っていない。
2016年6月に車地で二俣瀬の中島について現地住民と話をする機会があり、その折りに山中の婦曽婦曽について尋ねたが地名自体を聞いたことがないという回答であった。
《 ふそふそ(ふそく?)堤周辺の写真 》
情報この記事に登場する物件(婦曽婦曽堤)は名称が異なるかも知れません。正しい名称が判明次第編集し本タグを除去します。

3連続溜め池のうちもっとも下流側にある池の堰堤部分。
堰堤付近で横から流れ込む小川がある。


中ほどにある溜め池。
何処にでもあるような普通の景観をもつ溜め池である。


溜め池とはなっていない沢地の上端部では耕作地が放棄され湿地帯のようになっている場所が多い。


市道レポートも含めて本編では3連続溜め池と表記している。それぞれに異なった名前が与えられているか(例えばふそふそ上堤・中堤・下堤など)は分からない。
《 記事作成後の情報 》
小字絵図では耕地字として「婦曽々々」が記載されているだけだが、同地には表記だけ異なる耕地字(「ふそふそ」や「フソフソ」)が混在しているという読者からの情報があった。[4] これは法務局での資料閲覧の結果と思われる。

また、岡山県の岡山空港の南に「フソフソ池」が存在しているという指摘があった。


この溜め池の名称由来も分かっていないという。

市内のみならず県外でも(漢字表記は別として)まったく同じ読みを持つ溜め池が存在することから、「ふそふそ」とは現代ではまるで意味が分からなくなっているものの昔は何かの状態や物を意味する語だったのではという推測もでている。
出典および編集追記:

1.「Wikipedia - 婦負

2.「FB|2016/7/3のタイムライン(要ログイン)

3.「不足」という熟語が想起され「水不足に悩まされていた地に造った溜め池」ではないかという考えが浮かぶかも知れないが、これはまったく考えるに値しない附会である。何となれば不足は抽象的概念の語であり、実体を持たない熟語が地名由来となる事例が皆無だからである。

4.「FB|2016/7/21の投稿に対するコメント(要ログイン・制限)

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