市道杉河内線【2】

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(「市道杉河内線【1】」の続き)

最後の溜め池を見送った後、緩やかに登る沢地を進む。
野山の緑ばかり目立つ中を進んでいて唐突にも紅白の目立つ奇妙な人工物が現れた。


いわゆるセフティコーンである。工事現場に置いて通行車両に危険を知らせるものなのだが特に工事をしている様子はない。
それにしても異様にデカい。


比較対象となる物が近くになりので大きさが分かりづらいだろうが、高さは私の背丈ほどもある。マラソンとかで折り返し地点に設置されるあれと同等だ。規制を伴う道路工事で使うこともあって実際に扱ったこともある。規制を始めるときと開放するときガードマンに護衛されながらこれを移動するのだが、何しろつるんとした円錐形でつかみ所がなく運ぶのが大変だったのを思い出した。

それはいいとして、何でこんなものが殆ど車通りもない場所に…と思った。どうやら誤って車が路外へはみ出ないように警告する目的で置かれたらしい。コーンの外側は道路と同じ高さで一見草原のようである。この区間でもし対向車があったらそれほど躊躇なく左側へハンドルを切って避けようとするだろう。しかしこの場所でそれをやるとまずい事態になりそうなのである。
セフティコーンの外側は草が生えているから見えないだけで、足元の緩い湿地帯になっているのだ。親切心で対向車をやり過ごした後、タイヤが深くハマって脱出不能に陥るかも知れない。

沢地の端まで登ってきた。
最高地点が近そうである。天気は良いし少し開けば場所だからのんびりした場所のように思えるだろう。


写真は昼間で天気も良いからそれほど感じないだけである。曇りや雨の日はあるし、当たり前だがこの地にも毎日かならず夜が訪れる。道中一軒も民家はなく、廃屋や倉庫のようなものすら存在しない。ガードレールは溜め池付近にあるのみで、上のような両側が落ち込んでいる場所にも路肩標すらない。街灯なんて高尚なものもなく、舗装されているだけ有り難い道だ。
こんな道を訳あって夜一人で車を運転するなんてのはどうだろう。近辺在住の方には申し訳ないのだが、限りなくタチの悪い罰ゲームのように思える程に怖い。幽霊や火の玉に遭遇するなんて昔話めいた恐怖ではなく、野生動物を含めて何が出てくるか分からない種の恐怖だ。それも車ならまだ鉄の兜に覆われているからいいとして無防備な自転車でライト一つのみが頼りなんて状況でこの道を夜走るというのは…想像するもおぞましい。

昼間とて何の予備知識もないまま突入したらかなり先行き不安に襲われるだろう。ゼッタイにこの道で間違いないという確信があるから自転車での単独行動ができたのだった。

最後の登坂である。
両側から伸びてくる木の枝で視界が遮られた。


最高地点は緩やかですぐに明白な下り坂に入った。
そのすぐ先で分岐路に出会った。


さて、どっちだ?
こんな道だから標識など何もない。下調べ無しだったら大いに考え込むところだろう。
大丈夫…どっちがどうなっているなどはキチンと調べてある。


右側の分岐路は先で大きく高度を下げている。左側は直線気味に進み高度は維持しているが、先で未舗装路になっていた。そのことからも推察されるように本路線は右である。
この道へ突入したのは、先ほどみてきた3連続溜め池から峠にかけて「あるものが存在するか」を調べることが一つにあった。そして残念ながら既に峠を越してしまい、その件に関しては「何も見つからなかった」という結論になった。

もう一つ調べたいことがある。それは確実に存在していてどうアクセスするかだけが問題になっていた。その場所はここから近い。本路線の起点側までは走るとしても、その調べ事のために一旦直進して寄り道した。
本路線とは直接の関係はないので派生記事側で書くことにする。
派生記事: テクノへの枝道
上記の派生記事は探索している別物件を記事化しない限り作成される当てがないので今ここにざっと書いておくと…記事の表題通りこの枝道は宇部と佐山に跨がって存在するテクノに繋がっている。こんな山奥深いところなので体感しづらいが、直線距離にして200m程度である。県道を介さず国道2号へ出てくる裏道のようになっている。

20分ばかり枝道の往復とその先にあるものを撮影して、再び市道との分岐まで戻ってきた。
かなり急な坂を下っていく。車の往来が殆どないせいか舗装路の上に木の葉が散らばっていた。


こんな何もなさそうな山深い道なのだが…やがて左下にコンクリートの幅広い切り通しと軌道が見えてきた。
山陽新幹線である。すぐ近くを通っていたのだった。


本路線がかなり急に下っているのに対し、新幹線はまったく動じることもなく殆ど水平に山腹へブチ当たっている…ということはそこに何があるかは想像されるだろう。
地図では存在が確認されていた。そして学童期にたった一度だけ、小郡から小倉へ往復する過程でここを通過している。しかし新幹線がこんな山深く何もない場所を通過している構造物の名前などまだ知りようもなかった。そして先ほどテクノの方へ行きかけたのも、この構造物の名称を調べたかったのである。

今はネットな時代だ。私が書かなくても関連する情報は恐らく既にネット上へ提示されているだろう。だから記事を作成する前にその名称を載せておく。
派生記事: 第一黒見山トンネル
トンネル名の黒見山とは、ここから南にあるテクノの若干東寄りにある山の名前である。第一となっていることから分かるように、この西寄りにあるもう一つのトンネルが第二である。両方とも黒見山からはまったく無関係と言えるほど離れているので、よほど命名の題材がなく苦労したようである。
杉河内トンネルと命名するほど杉河内は著名な地名でもないからか…

坂をある程度下って反対側から写したところ。
今さっきのこと右側に見える竹藪のところから上がってきたところだ。


このトンネルに関しては、この竹藪から降りるのが一番観察しやすいスポットだった。線路敷と視座がほぼ一致するので、失踪する車両を眺めるにも好適な場所である。そのためだけにこんな山深い場所まで来るものだろうか…と思われがちだが、結構そういうマニアがあるらしい。実際、本路線から竹藪の横を降りる場所は明瞭な踏み跡ができていた。

下り坂が緩やかになる辺りで漸く視界が開けてきた。


後ろを振り返っている。
視界は開けているがトンネルからは離れてしまっていてここからでは観察できない。


むしろ進行方向側にもう一つのトンネルが見える。第二トンネルの方が土被りは薄いが延長は第一よりも長い。
また、この辺りは畑を耕しに訪れる地主があるらしい。


道路と木々と溜め池しか見なかったせいか、どうしても鉄道構造物の方に目が行ってしまう。
畑の向こうにちょっと気になるものを見つけたのだ。


この穴はかなり気になる存在だ。遊び半分に入り込むのを阻止するためだろうか…鋼製の棒で塞がれている。
新幹線の線路敷下を横切っているらしい。灌漑用水路だろうか。


わざわざ人様の畑の中を横切って眺めに行くほどでもなく、道路からズームするにとどめておいた。

坂を下りきり、新幹線の下をくぐってきた別の道と合流する。
市道田の小野城生原車地線で、本路線は逆方向から辿ってきたのでここが起点となる。


市道田の小野城生原車地線側を撮影している。
この先を進めば須賀河内川に沿って下って二俣瀬のビオトープに出てくる。
大変に狭く道が荒れているため四輪での通行はお勧めしない


ゴールインした起点から振り返って撮影。
律儀にたどるならここへ自転車を移動した後に市道走破スタートとなるところなのだった。
これのみ同年5月に男岳を訪れたとき立ち寄っての撮影


時系列記事は作成しないかも知れないのでその後の足取りをざっとここで書いておくと…山陽新幹線の下をくぐって割坂を経由して車を置いていた田の小野まで帰ってきた。時刻は午後5時半近くなっていた。

さて、本当に何もない市道レポートだった。山陽新幹線のトンネルを調べるというタスクは当初から盛り込まれていたし相応な成果が上がった。しかし本路線の道中に私が探し求めていたものは見つからなかった。それが一体何であったかは…以下の記事に書いておいた。いきなり訳の分からない項目へ飛ばされるような気がするかも知れないが、これが地名である。
派生記事: 上山中にある由来の分からない地名について
今後はよほどのことがない限りこの道を訪れることはないだろう。例の3連続溜め池についてあの謎めいた地名を冠した水利組合の標識が存在していることが判明すれば便を作ってでも撮影に行くだろうが…
出典および編集追記:

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