阿武川ダム・平成23年度見学会【2】

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(「阿武川ダム・平成23年度見学会【1】」の続き)

ダムを観に来たのだから、可能な限り多彩なアングルで撮影し持ち帰りたい…その想いがあったので一通りの撮影後、堰堤を歩いて右岸に向かった。

どうも嫌な予感がしていた。
ダム下の発電所にはあれほど人が集っているのに、堰堤を歩いている人の姿がまるでないことも不自然に感じていた。


やはり…そうだった。
この先立入禁止。


えっ?何で?
立入禁止って、別に工事とかしていないし見たところ危なそうな場所はなさそうだし…
わけがわからない。これではゲートも途中までしか観られないし、何よりも右岸からの撮影がまったくできない。
一般来訪者の進入を拒絶するこのバリケード設置は、それでなくてもはるばる遠方から訪れておきながら達成感のない阿武川ダムの見学にトドメを刺す格好になった。

実は、今までの写真撮影のうちの何処かで既にダム事務所を訪れていた。
あまりに外が暑いので、せめてエアコンの効いているダム事務所へ入って涼みたいというのもあった。
この写真自体は駐車場へ戻るときに撮影している


ダム見学会はこの日の最初に訪れた今富ダムを含めて2箇所目だった。今富ダムではダムの役割などについて一通りの説明を受けた後、監査廊見学を行った。阿武川ダムでは監査廊見学は行われないことが事前に分かっていたので、説明の後で他の場所を見学するなど同等の流れになるだろうと思っていた。

応対した職員は丁重で、私がダム見学会として訪れたことをすぐ理解してもらえた。最初にダムカードを頂いてそれから管理所内に入って説明を受けた。しかし残念ながら私が求めていたものとのギャップがあまりにも大きかった。

阿武川ダム管理所でもダムの持つ役割や設置された計測機器などの説明があった。山口国体の時期柄、阿武川の下流域はカヌー競技の会場として整備され、開催までの間は選手の練習場として使われていた。折しも豪雨に伴う緊急放流で練習場が失われ、再度の整備を行う必要があった旨の説明がなされた。当時ゲートから緊急放流する際のビデオも公開された。しかしいつまで経っても説明ばかりで具体的な見学の話に移らないので、次第に焦れてきた。

担当者の説明は納得いくものだったが、緊急放流に対する「やむを得ない」部分の説明が如何にも長く、何だか洪水被害に遭った下流域住民に対して正当性を主張しているような感じに思われた。そもそも私はそういう話を聞きに来たのではなく、見学会でしか公開されないダムと付随する設備を見たかったのである。結局、最後まで説明のみでダム管理所から一歩も出ることなく、ゲート室などの設備見学は一切無いまま終わりとなった。

えっ?見学はナシなの?
そんな気持ちでダム事務所を退出したのだった。

阿武川ダムの監査廊は整備中で今回の見学会では公開されないことがあらかじめ分かっていた。しかしダム管理所がダム上にある限り、管理区域内の何処かは見学できるものと思っていたのである。単に説明を聞きに来るだけなら少なくとも自分にはダム管理所へ立ち寄る意味はダムカードを受け取る以外にない…ネット上に公開された情報を調べれば足りる。

管理所内で撮影したのもこの一枚だけだった。
担当者の説明が延々と続いていたのでカメラを構える暇もなかったのである。


平成23年度阿武川ダムの初回訪問記事を制作しなかった理由はこれである。見学会でなくてもいつでも観られる場所から撮影した写真だけで、しかもダム右岸からの撮影は出来ず。記事化する意義を感じないので今までお蔵入りにしていた。
平成25年度見学会の記事を書くにあたって必要なので今ごろになって記事化している

後日談だが、これには私が見学会に何を求めているかを最初に提示しなかったのもまずかった。この経験以後、どのダム見学会でもダムの役割などの基礎知識は持ち合わせているので普段は公開されない施設を見学させて欲しいとハッキリ申し出るようにした。担当者独自の体験談を聞くなら有用だが、そもそもパンフレットに記載されている説明をそのまま聞かされるのは予備知識を持って臨む見学者には残念ながら時間の無駄でしかない。案外、担当者としても見学者にハッキリ要望を言ってもらうことで手短に対応できて助かっているようだ。

先に見学会を受け、ダム管理所を出た後にこの場所の撮影を始めたのも順序がまずかった。担当者が同行するなら立ち入れる場所なのかも知れなかった。


バリケードと言っても適当に設置されたもので、隙間には容易に跨ぎ越せるセフティコーンが置かれていた。しかしあぶないからはいってはいけません!」と子どもでも読める警告表示が出ていれば、日本語の読める人間なら普通は立ち入らない。そこを敢えてフラフラと入り込むなら、きっと自殺志願者と勘違いされるだろう。何しろ堰堤はこの高さなのである。
実際にそういう事件の一つや二つは過去にあったと思う

ダム管理所まで戻って担当職員に再度掛け合う方法もあった。しかし相応な理由があって立入禁止にしているのだから、右岸からの写真は素直に諦めた。

右岸側を窺っている。観たところ本当に何処にも危険そうな場所はない。堰堤上が危険なら、最初に説明板があった欄干付近も充分に危険なのだが…


バリケードのすぐ横に掲示されていた水利使用標識。
取水量が毎秒30m3というのだからもの凄い量だ。かくなる上は新阿武川発電所の見学に期待しようと思った。


ゲートやクレーン部分が気になるが、近くで撮れなければ仕方ないので引き返した。
戻るとき、左岸の山の斜面に奇妙なコンクリートの塊を見つけた。


ズーム撮影している。
周囲が木々に覆われているので詳細は分からないが、雛壇のように積み上がったコンクリート塊が見えている。これはダムに関係があるのだろうか…
その後同様のものを他のダムでも見つけて現在では完全に分かっている


同じものがあるのではと思い、堰堤接続部付近まで戻ったとき振り返ってみた。


右岸の方が山が高い。位置としては左岸側と同じくらいの高さにやはり同様のものがあった。
岩の上に造られた四角い台座のようでもある。


まだ阿武湖の近景を撮っていなかった。
堰堤左岸に近い側からは太陽を背負う位置になるせいか大変に美しく見える。


自然な土の山肌で、透明度が高いせいか湖上に張り出した尾根部分がかなり深い部分まで見えていた。


ダム湖底に向かって伸びる通路のようなものが見えた。
ボートを降ろす斜路だろうか…


左岸に近い側に見つけた謎の物体。
ブイのような機材だ。


斜めに浮かんでいるだけで陸地からコードなどは接続されていなかった。
岸辺の緑色が如何にも怖い。いきなり深くなっているらしい。


岸辺には結構樹木が生えているので、堰堤から離れると湖上を見渡せなくなった。


違う角度で阿武湖を見渡せる場所はないかと県道沿いに歩いてみたが納得のいくアングルは見つからなかった。
ダム事務所から離れてここまで歩いてきた。


駐車場の一角に据えられていたモニュメント。
県知事名も刻まれているあたりに昭和を感じさせる。


山口国体をアピールする標示板が至るところに出ていた。
先述の通り、阿武川ではカヌー競技が行われるようである。


ダム上からはもう撮るものはないだろう。阿武川ダムは大きいのでここに居てはむしろ全体像を撮影できない。
ダム下からの眺めに期待しつつ、駐車場に戻った。

(「阿武川ダム・平成23年度見学会【3】」へ続く)

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