厚東川ダム・左岸曝気循環設備棟【1】

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現地踏査日:2012/1/29
記事公開日:2011/1/31
厚東川ダムの右岸曝気循環設備棟を初めて見つけたのは今から3年前のことだった。それは厚東川ダム事務所から県道217号小野木田線を更に数百メートル上流側へ進んだところにあった。
曝気循環設備棟にわざわざ「右岸」と表示されているということは、左岸側にも同様の設備があると想像される。実際それはかなり分かりやすい場所にあり、右岸の国道490号からも見える。

この場所を地図で眺めてみよう。


車地交差点で国道2号を外れて北に走ると、国道490号は一旦厚東川から遠ざかり山の中を走る。一ノ坂で小さな峠を越えて下り始め、やがて正面に小野湖が見えるようになる。
この景色に見覚えあるという方は少なくない筈だ。


国道はこの先で大きな右カーブとなり、狭い小野隧道に吸い込まれていく。その手前に湖面へ向かって降りていく小道があり、それらしき建て屋が国道からも見える。
地図にはこれが何の設備かの明記はないものの、何度かここを通るたびに曝気循環設備棟だろうという感触は得ていた。

一ノ坂集落に観ておきたい物件3つとここを拠点にして実行したい課題1つを抱えた29日の午後、まずはここを訪れ、車を留め置いて歩いて踏査する積もりでこの道へ乗り込んだ。
これが後で述べるような結果を招くこととなった

全体像。
建て屋の扉右側に縦書きのプレートが見える。これは以前見た右岸曝気循環設備棟の表示板と同じなので左岸の同種設備と確信できた。


なお、前もって注意喚起しておくが、この場所には車を乗り入れないことを強くお勧めする。
門扉が開いていれば敷地内で転回できるが、メンテナンスで訪れる関係者以外門扉が開かれる筈もなく、この状態で転回することを考えれば想像つくだろう。


詳細は後で述べるが、面倒なことは先に片付ける主義なので、すぐ帰れるよう車を転回して留め置いた。

門扉は有刺鉄線付きネットフェンスで、高圧危険のタグが張られていた。これは左岸側にはなかった。敷地には剥き出しの碍子や変圧器など危険そうなものは見あたらないのだが…


敷地には左岸にあったのと同規模の建て屋、それから少し離れた場所に電気関係の計装盤らしきものがあった。


建屋の横にこの設備の名称が明示されていた。
山口県厚東川ダム 左岸曝気循環設備棟


右岸にあったものと同一の設備だろう。
しかし現在たまたま稼働していないのか、水が循環・攪拌されているような音は聞こえず、代わりに電気音が漏れていた。

電気の計装盤。ここにも高圧危険のタグが貼られている。


ズーム撮影。
この計装盤の中にすべて納まっているらしい。


もちろん敷地の中には入れないが、フェンスに沿って左側に進んでみた。
循環設備棟の横には四角いダクトらしきものが2対あった。攪拌する空気の吸気・排気用だろうか。


背面はすぐ自然の急斜面になっていて湖面に落ち込んでいた。


この入り江部分を囲むように黄色い2列の浮きが湖面に並んでいた。
浮きの中央付近に浮き船が見える。釣りをしている人のようだ。
対岸に見える赤い鋼製橋は黒瀬橋


正面の門扉まで戻る。
ここから水面へ下っていく踏み跡を見つけていた。循環棟とは関係ないだろうがちょっと偵察に行った。


斜路を下った先には一艘の手漕ぎボートが接岸されていた。


オールが付属せず、接岸したときボートから陸地に移るための木の板が乗せてあるだけだ。廃物ではないと思われるが、そう頻繁に使われている感じはない。


好奇心旺盛なドーカン坊主なら、渡りに船ならぬ渡りに放置ボート(?)とばかりに乗り込み、湖面に漕ぎ出すのだろうか。少なくとも物理的には可能な状況ではあったが…


確かに好奇心旺盛の上に超が付き、踏査においてもリスクを取りに行く場面が多いことは自覚しながらも、乗り込むなんて少なくとも私に関してはあり得ない。あと30歳くらい若かったとしても同じだ。
所有者があるかも知れない(と言うよりは間違いなくあるだろう)放置ボートに勝手に乗り込むという罪悪感以前に、怖すぎてとんでもないといったところだ。

人には海好きの”海派”と、山好きの”山派”があるとよく言われる。自分は事ある毎に野ウサギを自称しているので間違いなく山派だ。ターゲットを求めて酷い藪を漕ぐことはあっても、足が地面に着かない湖上などの場所へ進攻するなんてあり得ない。こんな頼りないボートの板一枚下は水深数十メートル…そんな所へ漕ぎ出すなんて想像力が働きすぎてゾッとしてしまう。

入り江は風で吹き寄せられた浮きゴミだらけだ。砕けた木の葉や枝などがゴミの隙間を埋めていて、どこからが水面やらも判然としない状況だ。
言うまでもなく我々市民はこれらペットボトルや発泡スチロールなどの出汁がよく出た水を飲んでいる訳である。
もっとも小野湖全体の湛水量からすれば鼻で笑い飛ばせる量ではあるが


湖上で釣りをしている人からも容易に見える場所である以上、私自身も怪しまれるような振る舞いをしないのが正解だ。
…と言うかあんな小さなボートで単身漕ぎ出し小野湖の中央付近で釣りをするなんて…自分からすればその勇気と度胸に感心してしまう


曝気循環設備棟のある敷地は入り江に盛土して造られているようだ。足元が極めて悪く、ブロック積み擁壁に沿って進むことはできなかった。


これでもう良いだろう。ここは一度訪れて撮影しておけば足りる。

現地にあったのは中の様子がさっぱり窺えない直方体の建て屋と配電盤だけ。興味を惹くような物は何もない。まだ右岸の曝気循環設備棟はボートを下ろす斜路や倉庫が観られた分だけ変化があった。
何度も来るようなところではないし、後で述べるような理由あってもう来たくない。


それと言うのも最初述べたように、車を転回するとき酷い労力を強いられたからだ。
地図では国道からここに向かって降りる舗装路があることを知っていたし、国道490号を小野に向かって何度か走ったときも目視していたから問題なく入れると考えていた。

確かに入ることはできたが、転回するスペースはフェンス門扉前しかない。門扉を正面に見たときから右側の入り江降り口にあるコンクリートブロック積みの段差を知っていたから、迂闊に下がり過ぎての脱輪を警戒していた。
進入路は幅が狭く周囲の余地も少ない。しかもきつい下り坂なので常にハンドブレーキレバーを引き絞りながらアクセル・ブレーキを調整しつつハンドルを回すという神業が必要だった。そうでないと勝手に惰力で転がってフェンス門扉へ突撃してしまうのだ。
こういうときマニュアル車って弱みがあるよね…何度エンストしたことか…^^;

殆どハンドル据切り状態で5〜6回くらい切り返して漸く転回できた。軽四でこんな塩梅だから普通車では転回自体不可能で、迂闊に進入してしまったらバックで国道まで出なければならないだろう。

アスカーブの外に設置されたコンクリート杭。
恐らく県の境界杭だろうが、切り返しの最中ここに何度バンパーを当てたことだろうか…


まあ、ここにある主立ったものは私が一通り撮影してきたから、読者のどなた様も現地へ車で乗り込み愛車に傷をつけるリスクを負うことなく、この記事をお読みになることで納得して頂こう。

さて、時系列としては車を転回させたものの、すぐには帰らずそのまま進入路の端に寄せ、一旦国道まで出た。
この近くにある謎の市道の踏査を行うためで、当初から予定に組み込まれていたからだった。

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