厚東川ダム取水口

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記事作成日:2017/6/24
情報この記事は厚東川ダム堰堤に付随する取水口について記述しています。
厚東川ダム管理事務所の北側にある宇部丸山ダム向けの取水口については こちら を参照してください。

厚東川ダム本体からの取水口は、右岸のダム管理事務所から近い2番目のゲート直下に存在する。
写真は取水口のある場所と推測される付近の映像。


取水口は厚東川ダムからの湖水取り出し口であり、ダム堤体に存在する。通常水位では小野湖面よりはるか下にあるため目視できない。上記の写真は満水位から6m程度も下がっていて余水吐の流下口まで見えている。それでもなお取水口らしきものは見えず、恐らくこの辺りだろうと推察するのみである。

満水位のときのほぼ同じ場所の写真。
堰堤に近い両端は浮遊ゴミが溜まりやすい場所である。


さて、これだけでは取水口に関する何の情報も与えない。この2017年6月、上流側の工事で小野湖の水位を下げているところに思ったほど雨が降らないため近年ないほど水位が低下する時期があった。週間予報で天気が崩れる前日頃を狙って水位のもっとも下がった状態を狙って厚東川ダムを訪れ、もしかすると取水口に関するものかも知れない画像を採取できた。

6月19日午後の撮影。水位計の上部が完全に水上に露出するほど水位が下がった。
このとき手前から2番目のゲート下に今まで見えなかったものが現れた。


ズーム映像。
長方形状の何かが軽く水に浸っている。


堰堤自体の構造なら、ダム湖側にこんな出っ張りなど存在しないだろう。何か付随する構造物がありそうだと示唆される。

翌日20日は午後から雨の予報だった。半日でも経てば水位は更に下がる。それで前回採取できなかった場所の撮影も含めて午前中から再度小野湖を訪れた。
ほぼ同じ場所からの撮影である。


ズーム撮影。
かなり大きな長方形状のコンクリート構造物が湖上に姿を現した。このことより半日で水位が十数センチ下がっていることが分かる。


コンクリートの上には木ぎれなどの浮遊ゴミが溜まっている。それは分かるとして、何故か水で運ばれる筈のない礫石なども載っていた。石ころが載った大きな板切れなどが流れ着いてここにぶつかり、水位が下がったとき軽い板は流れて上に載っていた石ころを置き去りにしたのだろう。この場所はダム管理者のボートでなければ絶対に到達できない場所である。[1]

位置を変えれば下部構造が見えるかも知れないと思って上流側へ移動した。
ダム管理事務所を過ぎた辺りからズームで撮影。


該当箇所を更にズームして撮影。
周辺の水は透明度が低く水面下は見えなかった。
ゲートを仕切る柱状構造の下部の切り欠きが気になる


近くの浮遊ゴミはやや速い動きで水面を動き回っていた。渦を巻いてはいなかったので、もしこれが取水口としても実際にダム水が排出される孔は更に深い位置にあるだろう。
取水口の構造がどうなっているかは当然分からない。遙か昔、管工事関連でダム取水口の点検整備工事の仕様書を目にしたことがある。ダム堰堤の横に取り付けられた取水口に柱状のスクリーンが描かれていたように思う。浮遊ゴミなどで塞がらないよう充分深い位置に取り付けてあるものと思われる。

20日の撮影後、午後から雨が降り始めた。その後一両日おいて24日には相当な雨量が長時間にわたってみられたので、現地確認はしていないがこのコンクリート部分は再び水没したとみられる。
【 バルブ室 】
現地では気付いていなかったのだが、帰宅後に写真を整理していて現地の掲示物に答えが掲載されていたことが判明した。いずれも写真は19日の撮影である。

ゲート室入口横のフェンスにダムの正面図と内部の監査廊などを撮影した写真をラミネート加工したものが掲示されていた。


掲示物が貼られているだけで何の説明書きもなかったが、これがどういう意図なのかはおよそ推察できた。
以前から言われていたように、厚東川ダムは毎年「森と湖の旬間」での見学対象ダムでありながら監査廊は見学できない。危険な箇所があり見学者の安全が保証できないのが理由だった。一連の掲示物は、見学会が始まったとき監査廊入口手前まで見学者を誘導し、ここで説明だけ行うための資料だろう。

撮影場所が分かるように番号が振られたダム正面図が掲示されている。
ゲート室入口の直下に2箇所、そして2番目のゲートの下に2箇所の取水口が見えている。


3番に対応するバルブ室の写真。


4番に対応するバルブ室。
そこから先は通常の断面形状を持つ監査廊となっている。


上の写真で赤丸に囲まれた部分の意味するものは分からない。この部分を近接撮影した写真も掲示されていたが、ラミネート加工された写真をカメラで写しているため不鮮明で何をしている写真なのか分からなかった。

正面図によれば、ゲート建屋入口の真下に2箇所のバルブが存在する。これは宇部興産(株)所管の厚東川発電所向けの取水口と思われる。見学会のときでないと接近はできないが、ゲート建屋の手前屋外に錆び付いたバルブが現在も遺っている。[2]

そして3番と4番のバルブが工業用水や河川維持放流分に対応するのだろう。これはダム正面下部に見える排砂管2箇所の位置に呼応しているようでもある。

現地で目にしたコンクリート構造物は正面図よりかなり上の方にあってしかも捻れている。スクリーンは柱状になっていたと思うので、それを格納するためのものだろうか。
次回のダム見学会で現地を訪れる機会があればこの件について尋ねてみる予定である。
出典および編集追記:

1. 小野湖面は一般向けに開放されていてボートを浮かべることは可能だが、取水口や網場の内側などの管理区域内は侵入が禁止されている。

2. 2014年度開催のダム見学会で担当者により現物の説明を受けている。
《 記事公開後の変化 》
項目記述日:2017/7/29
2017年度実施のダム見学会で渇水時に現れたコンクリートの出っ張りのようなものについて担当者に尋ねたところ、取水口の上部構造ではなくダム建設時の仮設物であることが判明した。実際の取水口はこれよりも遙か下の方に設置されている。堰堤に対して捻れた角度なので取水口の上部構造にしては不自然である。担当者はダム管理事務所に常駐しているだけに、この構造物の出現については当然気付いていた。

現在のダム建設では仮設物は竣工までに撤去されるのだが、初期の施工では最終的に水没したり目立たない場所にあったりする仮設物はしばしばそのまま放置されていた。木屋川ダムのダム管理事務所付近にはもっと露骨に目立つ仮設物が知られており、ダム見学会のときは建設当時の写真と共に比較説明される。

撮影後には6月中旬から梅雨明けにかけて相当な降水量があり、7月末現在ではかなり水位が戻っている。当然ながら現在は仮設物は水没していて見えない。


一気に水位が戻ったので再びこの仮設物が現れるのは暫く先のことだろう。他方、近年の気候は変動幅が大きく極端な豪雨があったかと思えば長期に渡って雨が降らず今回以上に水位が下がる事態も起こり得る。現に九州と東北地方で相当な被害が出ている。
厚東川ダムは県内で2番目に古いダムであり、補修を重ねつつ現在も運用している。コンクリート構造物としての耐久性が懸念される。殊に低水位から上流の豪雨で一気に水位が回復するなどの場合、堤体の受けるストレスも大きい。これは先々では熟考を要する課題になるかも知れない。

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