宇部丸山ダム・駐車場

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現地撮影日:2012/9/23
記事公開日:2012/9/30
気になる物件は何でも記事化するとは言っても、さすがにこれはちょっとやり過ぎの部類かも知れない。

記事タイトルの通り、宇部丸山ダムの駐車場が対象物件である。すぐさま「そんなのは『物件』ではない」という声が飛んできそうだ。それを敢えて取り上げたのは、正体は別に特筆性のない設備にもかかわらずその存在状況に興味を覚えたからだ。それ以上の他意はない。要は面白がっているだけであり、別に管理が悪いとか対処が必要だなどの批判めいた意図はないので曲げて解釈しないで頂きたい。
特にたまさか企業局関係の方がこの記事をご覧になった場合を想定して…

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宇部丸山ダムのメインとされる駐車場はダム上の左岸側に存在する。道のりとしては国道2号を丸山ダムT字路で曲がり、市道薬師堂立熊線を進み、登り坂の終盤でダム堰堤のある左の分岐へ進む。そこから先は丸山ダムの管理道となり、最初に出会う左への通路が駐車場への入口となる。


そこはダム上にある駐車スペースの中では最も広い。ただし舗装されているのは駐車場入口までで、敷地全体は砂利敷きだ。


車を停め置ける場所なら、他には管理道の最高地点となるこの場所がある。
説明板の前に数台停められるし、実際釣り客や営業サボリの車が結構停まっている。


ダム堰堤に近い場所が希望なら、更にその先を進めば数台停められるスペースがある。


この場所は全体が若干傾いているが、全面舗装されている。ダム堰堤を眺めたりダム下の公園まで降りてみるなら近くて好適だろう。

一連の場所はいずれも駐車して構わないのだが、丸山ダムの正規の駐車場は先の砂利敷きグラウンドということになっている。ダムに関する説明板には砂利敷きグラウンドの場所だけに駐車場を示すPマークが記載されているからだ。


市道側に丸山ダム入口の案内板すらないような場所だ。普段は寂しく怖い感じもするほど人気のない場所である。
しかしサクラの咲く時期は花見客で大変賑わうらしい。その時のために舗装こそしなかったものの広い砂利敷きの駐車場を造ったのだろう。

もっとも私がここに来るのは常にダム関連の物件観察だけなので、わざわざ堰堤から遠いこの場所に車を乗り入れたことが一度もなかった。砂利敷きの場所は乗り心地が悪いので自転車時代も一度くらいしか入らなかったと思う。

さて、このたび低水位の丸山ダム湖を観察するために数回続けて工事用道路部分を訪れ、この駐車場の入口付近に駐車した。そしてちょっと気になる部分を見つけたのである。
これが入口から撮影した駐車場の全景なのだが…


駐車場の奥に藪に包まれた建物が見える。
こんなところに建屋とか…あっただろうか。殆ど気が付かなかった。
工業用水関連の施設ならこの場所に必要はないと思うのだが…

コンクリート建ての平屋の周囲は灌木や雑草に覆い隠されていた。
最初、何の設備なのか見当が付かなかった。
藪の前に見えている立て札はゴミ不法投棄に関するもの


接近するにも何処から行くべきなのかちょっと迷うくらいに草木が伸びていた。
グラウンド側には薄汚れた白い壁しか見えず、何の建物か分からない。そのせいか何とも薄気味悪い雰囲気を醸し出している。もしかしてあれでは…と思った。


裏側は日が差し込まず殆ど真っ暗だ。そこへ回り込んでみると…
やっぱりトイレだったのか?


昼間だから内部はそんなに暗いことはない。フラッシュなしで充分撮影できる。しかし何とも言えない怖いふいんきが漂っていた。
至る所に張り巡らされたクモの巣、吹き込んだ木の葉、ペンキが剥げまくった天井…
空気もそれほど入れ替わってないらしいことは、この場所に踏み込んだ瞬間鼻を突くあの独特な臭いで察することができた。

インバータ室とか、元から普通の人が寄り付かない設備ならまだ納得はできた。駐車場の端に一般人向けのトイレがこれほどうらぶれた状況になっていることが恐怖を醸し出した。誰も居る訳がないのだが、何かが潜んでいて私の足音に反応して飛び出して来たなら絶叫モノだろう。

とても中へ入っていく気がしなかったので、一旦外へ出て他方の出入口を点検してみた。
そこも同様に草ぼうぼうで荒れていたが、まだこの建物が何であるかを示す立て札があったことに救われた。


やはりトイレだった。
しかし使う人が居るのか、電気メーターはあれど明かりは点くのか怪しい。入口に近い木製の扉は破れて傾いているのが外からでも分かった。


企業局謹製のトイレだ。
ここが正規の駐車場なら、やはりお手洗いくらいなければ困るだろう。花見のときはトイレ需要が旺盛になると想像されるからだ。


入口から見えかけている傾いた扉は、掃除道具入れだった。一応ほうきなどの道具は備わっていたが、最近使われた形跡がなかった。花見時期を過ぎてからは恐らく放置プレー状態なのだろう。

扉のついている「大」の方を覗いてみた。
さすがにあれなので写真は省略するが、場所柄ポットン方式だった。それも転落防止対策のない昔ながらの開口部が大きなタイプだ。臭突はあったかも知れないが、ファンの回る音はしていなかった。
平成の今の世ではポットン方式はトイレではなく「便所」として意識される。とりわけ開口部の大きなものは、存在こそ知られているものの危険だとか不潔だと認識されていて公衆トイレとしてはかなり減少している。扉を開けてこのタイプだったら怖くて出したいものも引っ込んでしまった…と言う人もあるだろう。
ペーパーは備わっていなかった

洗面所がこれまた何とも古めかしい。
昔、小学校の手洗い場にはこんな斑模様の素材が主流だった。モルタルに小さな石粒を練り込んでいるのだろうか…平成の今となっては準絶滅危惧種と言えるくらいに少なくなった。


蛇口を捻る人が殆ど居ないことは、手洗い場の右側に写り込んでいるクモの巣とその主の姿で分かるだろう。
また、この水は飲めない旨の表示がされている。近くに民家などもない場所柄、このトイレのためだけに水道管を布設する筈もない。恐らくダム水を適宜濾過し、何処かで加圧して給水しているのだろう。
もっとも花見で呑み過ぎた客ならここで口をゆすぐ位のことはするだろう

オフシーズンだから使われる機会が少ない上に時期柄草木が伸びて荒れたように見えるのだろう。サクラの時期には花見客が押し寄せ、トイレの使用頻度も上がるので、周囲の草刈りやトイレ清掃が行われるに違いない。
幸いなことに管理道沿いの管理施設にみられるような壁のマーキングはされていなかった。

その数日後、再度ここを訪れる便があったのでちょっと覗いてきた。
入口の裏には見慣れないコンクリート槽のようなものがあった。


もしかして…今どき汲み取り用の便槽か?と思われた。


実態は単なるゴミステーションだった。もっとも花見時しか使わないらしく、勝手にゴミを捨てられないよう蓋が施錠されていた。
何でまたトイレの裏側というわかりにくい場所に造ったものだろう…

それからトイレの内部は天井の電気が点けっ放しになっていた。


このときも用は足さなかったが、使わないなら電気は切って退散しようと思った。
しかし不思議なことに大抵なら入口近くにある筈の電源スイッチが見あたらない。
もしかして、これか?


手洗い場の壁の上にスイッチらしきものがあった。
確かにスイッチではあるが…これは断路機だ。日常的に操作してオンオフするものではないし、子供なら手が届かない。

状態がよく分からないが、スイッチの下に太陽光との断り書きがあった。
例の太陽電池パネルから給電されているのだろうか…


それなら太陽光の発電に応じて勝手にオンオフするのだろう…そう思ってトイレの電気は消さず私が来たときと同じ状態にしておいた。
もっとも電気メーターはゆっくりだが回っていた


花見でもない今の時期に何で…と思われるだろうが、駐車場には私以外に少なくとも4台の車が停まっていた。
これでもアングルに入らないよう苦労して撮影した積もりだ。


私がここを退出するときも駐車場へ入って来ようとする別の車とかち合った。
稀に私と同様ダム湖を眺めに来る人もあるが、今の時期なら来訪者の半数は釣り客らしい。開いたトランクから釣り竿がはみ出ている車が散見されるし、汀には人の姿もあった。

本編の続編は恐らくないと思うが、一度は花見のときここを訪れてみようと思う。意外な発見があるかも知れない。

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