新山口変電所・第二回調査【序】

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現地踏査日:2011/10/10
記事公開日:2013/11/10
「非日常的な光景で刺激を得たければ新山口変電所は一つの選択肢になり得る」というのが初回調査の所感だった。
元から変電所という施設は身の回りに存在していながら、一般人がしげしげと観察するような対象にはなっていない。大方の人が想像するのはスパゲッティーのように張り巡らされた鉄線、ケヤリムシのお化けのような白い碍子、けったいな形をした無機的な変圧器、そして電気設備として象徴的な磁歪音だ。電気の大動脈が通る超高圧変電所ともなれば、敷地内にある機器も桁外れに大きく、期待通り気持ち悪さを存分に増大してくれる。電気のことなど興味がなく基礎知識さえ持ち合わせない人にとっても充分にインパクトを与える対象であろう。
初回調査は充分な観察を行い大量の写真を採取した。それでも再度その異様な景観に触れる機会があるなら、天気の良い日にもう一度眺めてみたいと感じていた。

初回調査編と同じく現地へ向かうまでを序章とし、現地での撮影を第一章としよう。現地での第二回調査は「新山口変電所・第二回調査【1】」から読み始めることができる。

それから初回調査の記事を制作したときには SkyDrive には自動画像リサイズ機能があり、原典画像をアップロードすると閲覧に適したサイズと品位に調整してくれた。この機能は便利だが、手動でサイズ変更したものより品位が落ちる。碍子やワイヤなど細部が入り乱れる画像が多い変電所の撮影ではモアレが生じ、不鮮明な画像になりがちだった。
最近はすべてエディタの機能を使ってリサイズ画像を作成しているので、初回調査記事よりも画質は高い。また、原典画像を載せると読み込みが遅くなるので、この記事に限らず今後は原典画像は別途作成したギャラリーに掲載することにしている。

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珍しく土曜日まるごと時間がとれる週ができたので、土曜の隣町バドクラブへ行ってみようという気になった。連絡なしに飛び込んで久し振りに顔を合わせる土曜日メンバーを驚かせようという腹づもりもあった。ところがあろうことかその日に限ってバレー大会が開催されていてクラブは休みだった。
もっとも最近コート予約が取れず休みが多いという話も聞いていたので、空振りだった場合の行き先を決めていた。湯の原ダムと新山口変電所である。
この予備的スケジュールに従い最初に湯の原ダムを訪れて写真を撮り直し、帰りに新山口変電所へ立ち寄る行程となった。

湯の原ダム視察後、県道34号を北上して豊田下まで向かった。そこから県道65号を東進する。いつもとは逆方向からのアクセスだ。青空が拡がる申し分ない天気で撮影条件はすこぶる良い。

豊田町側から県道を走るとこのような眺めになる。
超高圧の送電鉄塔が見え始め、新山口変電所が近いことを感じさせる。


ところが送電鉄塔の下をくぐってからも一向に新山口変電所への案内板がみられなかった。美祢側から来たときには遠くから変電所らしき場所が見えていたし、分岐路もすぐ見つかったのだが…

豊田下から入ったなら、新山口変電所へ向かう道は右側である。しかし案内板以前に右折できるような道がない。そのうちに県道は登り坂となり市境に向かった。その間変電所を案内する標識に出会うこともなく、もしかすると通り過ぎてしまったのかも…と思われた。[1]

結局、初回調査のときと同じ分岐点までやって来た。ここは小さな峠となる市境を過ぎて美祢市側に入ってなお少し進んだところで、体感的には送電鉄塔をくぐって2km以上走っている。


交通量の少ない県道なので、路側に寄せて撮影している。
この独特な地名は初回踏査で遭遇したし、変電所に向かうまでにも幾度か目にすることになる。


初回踏査のときは同じ県道を反対側から訪れて左折した。今回は逆から来て左へ曲がる。即ち以前とは違う経路で変電所へ向かおうと思った。

この交差点の左側が県道235号の分岐点になる。


この標識を見て更に再度左へ90度曲がり細い道に入る。即ち豊田下から来た場合は転回するような形になる。
そこに「嶽」とだけ記載された地名標示板が立っている。


通る車もなさそうでちょっと記録しておきたいものがあったので、路上に車を停めたまま撮影のために降りた。
この場所を地図で示そう。


初回訪問時はこの十字路を西に向かう道に入り、異様に遠回りさせられたのを覚えていた。
地図で見ても県道の下をくぐるこの道を進んだ方がずっと近い。
市境手前で変電所方向に進む道が見えるが恐らく到達できないらしい

「嶽(だけ)」と読む。インパクトのある地名だ。
初回調査のときもこの地名と看板は目にしていた。集落の方向を案内する看板なわけだから、初めて通るにしても問題なく通れる道だろう。


変電所とは関係がないが、現在地の保々(ほうほう)、この先にある集落の嶽(だけ)についての由来板があったので撮影しておいた。
ただし実在の人物が地名の由来になる現象は極めて稀であり後世による附会ではないかと思う


山登りを嗜まない私には無縁だが、道州ヶ岳はその筋の方にはよく知られた名峰と聞いている。


さて、ここまで撮って先の道へ乗り込んだ。
まずは今走ってきた県道の下をくぐる。


「ほうほう防犯協議会」の設置した見回り隊の看板がこんな寂しい道にも立っていた。
ここを歩いて登下校する子どもたちが居るということなのだろうか…
変質者の犯罪よりも野生動物との遭遇の方が怖い気もする


嶽の集落が見えてきた。
前回は左からの道を進んできたのだった。だからここは右折だ。


前回もこの分岐点で車に乗ったまま撮影したのを覚えている。ここから先は一本道だからもう迷う心配はない。

もっとも少し驚くことがあった。嶽集落を離れて小さな峠を越える場所にどういう訳か一台の軽四とパトカーが停まっていたのだ。
何事だろうかと徐行し横目で眺めていたら、パトから降りていた担当者と目が合って軽く会釈された。軽四が停まっていたので何か事件があったのかも知れない。新山口変電所は誰でも訪れて構わない場所なのだが、もしかしてテロ対策の検問?などと穿った見方をしてしまった。

峠を過ぎると正面に新山口変電所の鉄塔群が見え始める。


沢を渡るために高度を下げ、一旦変電所は視界から消える。


ハの字に開いた懸垂碍子の鉄塔が何となく漫画チックな表情に見える。


最後に真っ直ぐの坂を登ると変電所の敷地に到達する。
「いらっしゃいませ」の立て札は健在だった。


一旦ここに車を停めて斜面を登ろうかとも思った。
敷地の裏側へ向かう踏み跡があり、そこは初回調査時でも訪れていなかったからだ。


しかし草の生えた法面を登るには相当な高さがあり、労力が要りそうなので止めて先に向かった。

今回辿った変電所までの経路である。
明らかに初回よりもこの方が近い。


もし地図を参考に現地へ行くとしたら、このルートが最短だろう。

天気が良いので順光方向なら前回よりも鮮明な写真が撮れそうだ。
それではじっくりと堪能させて頂くことにしよう。

(「新山口変電所・第二回調査【1】」へ続く)

出典および編集追記:

1. 県道沿いに並ぶ電信柱から新山口変電所を案内する表示板が取り除かれたのが原因である。以前は殆どすべての電柱に表示板が取り付けられていた。

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