新山口変電所・第二回調査【3】

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(「新山口変電所・第二回調査【2】」の続き)

鋼製の架台に載っているのは、碍子を何本も繋げて造られた三角錐の塔。まるで碍子製のクリスマスツリーだ。
2組のツリーの間にはパイプのようなものが通され、その中央には前回見たのとは違うパターンの「気持ち悪い」ものが…


何だこのキモい化け物は?


初回調査で目にしたあのクニャクニャしたパイプの化け物に似ているが、上部構造がちょっと違う。
上側に何かお椀のようなものがくっついている。[1]


その近くによく似ていた片割れのようなものを見つけた。
もしかすると、これは回路が「開いている」状態ではないだろうか。


金属のお椀のようなものがこちら側に見えている。しかしパイプ部分は半分しか見えていないし、片割れと繋がっていない。


もっとも片割れとなる相手の機器が近くには見当たらなかった。具体的にどう動くのかは分からないが、現在開いている状態で、遠隔操作で片割れとくっつくことで回路を閉じることができるのではないだろうか。


しかし常時使う開閉器が大気に露出した状態にはならないだろう。超高圧が流れているのを空気中でいきなり開いたら、よほど堅牢に造られていない限りアーク放電で機器が損傷しそうな気がする。[2]他の遮断機が正常に動作しなくなったときのための緊急用だろうか。

この部分だけに独特な機器がみられるのは、ここから先が中国電力ではなく九州電力の管轄になることも関係していそうだ。
左側に見えるのが九州電力管轄の2番鉄塔である。


全体として回路は繋がっていても、中電と九電は別会社だ。電力の相互融通を行ったとすればその収支を記録する必要がある。回路のどこかに機器を挿入している筈だ。

この辺り全部が超高圧規格である。門型鉄塔が異様に高い。高所に釣り上げられた電線が巨大な遮断機の碍子に舞い降りている。


マンガの世界にでも出てくるようなお化け級の碍子。
このサイズのものはまず超高圧変電所でなければ見られない。


中央の位相を扱う機器の横に「関門連系線2号」という文字が見える。関門橋を渡るあの巨大な鉄塔に繋がる経路だ。


500Kvクラスの超高圧線は、中国地方の山陽側・山陰側の2系統と九州電力と接続される1系統がある。外側の通路に一番近い側に九州電力向けの経路になる。1本の鉄塔で2回線を運ぶので1号・2号となっている。

フェンスの網目からでは撮影アングルが制限されて写しづらかった。
巨大な遮断機の正面へ移動し、有刺鉄線まで手を差し上げて撮影を試みた。既に午後3時を回っていて日陰の部分が多くなってきた。


筐体付近が影になって見えなかったので明るさ調整して写している。
比較対照となるものがないので分かりづらいが、ガス遮断機と思われるこの筐体部分だけで人の背丈の倍くらいある。一体この中はどうなっているのだろう…


筐体部分が高さ3mくらい、その上に植えられた碍子は8m位あるだろうか。[3]


キャップの部分は経年変化で赤錆が出ているようにも見える。


光量が多い天候だからここからのズームでも鮮明に捉えることができる。
碍子の表面は汚れなど全然付着していない。設置したばかりの新品同様だ。


更にズームした。
レストランに常備されている平プレートを積み上げたみたいだ。この写真だけを提示してその正体を当てさせるのも面白いかも知れない。
ケヤリムシのお化けみたいで気持ち悪い〜


そのすぐ横に初回踏査で「気持ち悪度・ナンバーワン」の座を獲得した機器が控えていた。


脳みそみたいな形をしたクニャクニャパイプである。
上部にお椀みたいなものがない代わりに、パイプが両側から抱き合うように組み立てられている。


何とも言えないシュールな形状だ。これに似た形のものは身の回りにないし、近場の変電所でも見たことがない。


単体をズームしてみた。
両者は中央の棒で一つに繋がっている。しかし先の機器みたいに切り離すことができるようにも見える。


多分、これも先に見た機器の”亜種”と思う。それにしても曲がりくねったパイプが意味不明である。何でこんな形をしていなければならないのだろうか?きっと合理的な意味あってこの形をしているのだろうが…

(「新山口変電所・第二回調査【4】」へ続く)
出典および編集追記:
* 文中で関門連系線について九州電力の設備と書いているが、電源開発株式会社の所管が正しい。(読者情報による)

1. このパイプ状のものは断路器と呼ばれる機器である。
保守点検時にはガス遮断機で電力の流れを止めて行うのだが、機器の誤動作で遮断状態が維持できなくなると作業者の生命に関わる。このため組み合わされたパイプが離れて電気の流れが物理的に遮断された状態が視覚的に分かるようにしているという。(以上は読者から寄せられた情報による)

2. 高電圧高電流の回路を開放したときに起きるアーク放電を捉えた動画としては、たとえば「500Kv Switch」や「345Kv Electrical Switch」がよく知られる。
コピー動画が大量に出回っており上記は原典動画でないかも知れない

3. これはブッシング用碍管と呼ばれる機器で、特に1,000kV送電に対応するものは高さ11.5mにも達し、世界最大の磁気製品とされている。
日本ガイシ株式会社|製品情報より

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