低水位の小野湖・小野地区第三次踏査【2】

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(「低水位の小野湖・小野地区第三次踏査【1】」の続き)

手元には前面を通る国道から写した小島状態の秀麗な写真が一枚もなかった。
そこで路肩に寄って道路と小島の双方が入るアングルの写真を撮った。


市街地から走ってくる車にはこのように見える。
わざわざ車を停める程ではないにしても、この眺めに驚嘆したドライバーは結構いるかも知れない。


小島と小さな海峡部と屋敷跡のすべてが一つに収まるアングルのショット。
車を停めた場所にある河川と言うか水路はちょうどこの小島に向かって注ぐ位置にある。


ここまでを撮ってから護岸の階段に向かった。

飛び石がある場所は、例の屋敷跡がみられる真正面である。
礫石を並べた人(多分子どもだろう)もまずはあの気になるものを見たいと思ってここに飛び石桟橋を造ったのだろう。


3日振りに訪れた屋敷跡である。
元々泥を被って白っぽいものだし、ファインダーを覗いたときはかなり白く見えていたのでどの程度明瞭に撮れているか分からなかった。


そこで念のため露光補正をもう一段階暗くした数値(マイナス3分の2)で撮影しておいた。既に操作法は覚えたが、毎回設定を切り替えるのはかなり面倒である。
そのときの映像はこちら…見やすい画像だが実際の見え方は上の方が近い

手元に保存されている前回踏査分の写真では、屋敷跡にみられるレンガは色が失われていた。しかし現地であらためて確認したところそれほどでもなかった。恐らく前回持ち帰った画像の品位の問題だろう。
近くでよく観察すると、レンガの欠け部分には本来の赤茶色が残っていた。それから陶管のようなものがレンガの間に見つかった。排水管かも知れない。


基礎跡と小島との位置関係。
ここにどんな建物があったかは未だにまだ聞き及んでいない。


基礎部分。
ダム湖の水に半ば浸り続けることで侵食されるから、見かけほど古いものではないのかも…


現地では白トビが起きていないことだけ確認してたが、こうしてアジトへ帰って画像を眺めていると過去に数回撮影したものよりもずっと鮮明に撮れている。上出来だ。
思えばこういった活動の初期には写っていさえすれば良いとばかりにアングルも太陽との位置関係も考慮せず撮影していた。別にカメラマンを名乗るわけでもないので適当で良さそうなものだが、今や初心者でないことは確かなので、出来る限り鮮明な映像を採取する努力は払わなければなるまい。

数年振りに小島を一周してみることにした。特に島の裏側は(月面の裏側が特殊な方法を援用しなければ観測できないように)今でなければ見ることはできない。

小島の北側へ回り込み振り返って撮影。こちらが太田川の上流側だ。
こないだ水面から僅か顔を覗けていた礫石の部分がかなり広範囲に現れている。


それでも第二回踏査を行ったときほどまだ水位は下がっていないらしい。
4年前に来たとき到達した場所が遠方に見えていたからだ。


細長い島状になった粘土部分に木の杭が刺さっている。
あそこは確か大回りして足元の悪い中到達した場所だ。


もしそうなら日照り続きで水不足が心配だとか言いながらも4年前は今より更に数十センチ水位が低かったことになる。今回の踏査時点では自主節水段階に入るとされる基準水位(36.0m)を割り込んでいる[1]ので、4年前は間違いなく自主節水レベルだっただろう。

小島の裏側に到達した。
岩場の目立つ小島の裾から10m程度礫石混じりの砂地だ。


小島の裏側で小々島(?)に隣接する部分。
殆ど単一の岩だが、水が染みこむことで少しずつ侵食されている。


海峡ならぬ湖峡部分を湖側から撮影したショット。
思ったよりも湖峡の幅は広い。両側の岩は垂直に近いくらい削り取られているので、まるで昔の道路が通っていたように見える。


しかしこれは人工的なものではなく自然の産物だろう。湛水以前に道があったとするなら、わざわざこの尾根部分を切り崩す理由がないからだ。

それよりももっと人為的な加工によるものではないかと思われる地形がすぐこの近くにある。
小島の下流側にあるこの窪地だ。


足元から先は急に深くなっている。前回踏査時の更に水位が下がっていたときにもかなりの段差があることが分かっていた。


この段差は厚東川ダムができる以前にあった畑か田だろうと思われていた。しかし現在では後年の改変ではないかと考えている。それも遙か昔というのではなく、どうかすれば国道が付け替えられた平成期に入ってからの改変かも知れない。

そのように考え直した根拠がある。
時系列から一旦離れるが、これは地理院地図の航空映像から切り出した小島の映像である。[2]


Yahoo!の航空映像は水位が高い時期に撮影されたらしく完全な小島となっていて下の地形は見えない。他方、地理院地図の航空映像はたまたま水位が低かったときに撮影されたようで小島周辺の広い範囲の地形が露わになっている。
小島の南側にギザギザした稜線を持つ段差が見えている。この稜線だけ見るなら傾斜地に造られた田畑の縁とも考えられるだろう。しかし低くなっている領域の南側には全体を取り囲む土手のようなものが見えている。早い話がこの領域は明白に窪地となっているのである。ダム湖に沈む前に田畑だったならこういう地形にはならないだろう。

更にこの小島部分を昭和49年度版の航空映像で眺めてみると、窪地になっているこの場所は小野湖の水で軽く浸る場所だったらしく僅かに水上へ顔を出した草木が写っている。当然まだ国道は小野湖沿いを通っていない。即ち小野湖へ湛水し始めた頃はこの窪地部分は存在しなかったと考えられる。しかも前回の今より水位が低下していたときの観察では、普通の田や畑にしては随分と深かった。

この窪地部分の成因だが、平成期に国道を小野湖沿いへ通すとき土取りを行ったのではないかとも思える。今回の踏査で車を停めた辺りや隣接するグラウンドは浅く浸る入江部分なので、現在の状態を造るには相当な盛土が要る。その一部を小島の南側にある土を削って充当したのかも知れない。
ダム湖の湛水領域から採土して路体や護岸材料に転用することが可能かは調べていない。ただ、国道も小野湖も県管理なので相互の連携は容易だっただろう。湖底は元々水を貯める場所なので部分的に深くなっていても何ら支障はない。掘削が容易な土が採れるエリアから掘り取ったのだろうか。航空映像を見ると、岩がちな小島の周辺を避けて土取りしているように見える。

以上は航空映像と現地をあたって範囲での憶測であり、正しいか否かは工事関係者による談話などの裏付けが必要であるが…いずれにしても厚東川ダム以前の昔の田畑の痕跡という見方は否定されそうだ。

(「低水位の小野湖・小野地区第三次踏査【3】」へ続く)
出典および編集追記:

1. 現在は必ずしもこの基準で運用はされていない。厚東川ダム下に宇部丸山ポンプ場が造られ以前は治水上排出せざるを得なかったダム湖水を宇部丸山ダム側へ送出し渇水に備える体制が整ったからである。

2. 地理院地図には地図および航空映像を埋め込む機能があるのだが数ヶ月前から正しく動作しない。タグを出力する操作を行ってファイル中へ埋め込んでも常にブラウザ側へ設定しているホームの地図のみが表示される。更にタグを出力するダイアログの×印ボタンをクリックしても消すことができずブラウザを再起動しなければならない。(Firefox48.0.2調べ)
このため正規の手続きでないことを承知で航空映像の該当箇所をキャプチャした画像を埋め込んでいる。不具合の原因は分かっていないが、埋め込みタグが正常化され次第置き換えてキャプチャ画像は削除する。
検証を行うたびにブラウザを再起動しなければならず甚だ面倒

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