岩郷山・第三次調査【3】

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記事作成日:2019/3/27
(「岩郷山・第三次調査【2】」の続き)

落ち葉主体だった作業道の地面は、割れた石が多い地面に変わってきた。[13:54]


岩質も変化した。肌色がちな霜降山系の岩ではなく、ごま塩状の花崗岩である。
同種の岩は、前回管理道を辿ったときも山頂付近に近づくにつれて多く見られていた。
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獣道から作業道へ復帰した直後は自然に還った道のようでゴミは殆どみられなかった。この辺りまで来て道の上に生えた樹が殆どみあたらない代わりに、斜面や道ばたに明らかな人工物が目立ち始めた。

サイコロ状に成形された石材の近くにトタン屋根の部材らしきものが埋もれていた。
看板ではないらしく裏返しても何も文字などはなかった。


第2の折り返しヘアピンカーブと思われる場所へ来た。
切り返して登っていく道が下からも見えていたのですぐに分かった。しかしそれまでの道に比べて明らかに荒れていた。


この坂を登る途中の土肌が見えている場所に傾いた石柱が地面へ刺さっていた。
道標では…と思ったが文字は何も刻まれていなかった。1本しかなかったので、途中まで加工されたまま放置された石材だろう。[13:58]


この坂をほぼ登り切った辺りから周辺に変化が現れた。
進行方向やや右側に古いドラム缶が転がっているのを見つけたのである。[14:00]


ドラム缶は全体が酷く錆び付いていて文字は全く読み取れなかった。近くには別のドラム缶があり、昭和期に自動販売機でお馴染みだったUCCの缶コーヒーの空き缶もみられた。これまで道中にゴミは殆どなかったものが、急に人工的な投棄物が目立つようになった。

これに加えてもう一つ重要な変化と言うか困ったことが起きた。
急に道の痕跡が不明瞭になった。
丁寧な撮影記録を取っていなかったので記憶がやや曖昧であるが、確かこの辺りで道がなくなったと思う。先の写真を見てもドラム缶が転がっているのは撮影位置より高くはない。被写界の左側はむしろ低くなっている…ということは、前方にあるべき作業道がこれより先にはもう存在しないと推定される状況になっていたわけだ。
《 再び道を見失って 》
この古いドラム缶だけではここで何の作業をしていたか分からないが、行き止まりになっているということはいくつかの作業拠点を作って同時進行していたのだろう。たまたま作業拠点の一つにたどり着いただけで、メインとなる道か枝道でもここより高い地点へ至る道がある筈だ。しかしヘアピンカーブ地点から登ってきた今までの道を引き返して確認するに及ばない。そもそも山頂を目指しているのだから、道から外れてでも高度を上げる方向へ移動すべきと思った。この判断に至った裏には、既に充分山頂に近い場所まで居ることが明らかであるのに加えて、先の見えない長い展開が要因にあった。

如何にも既に午後2時を過ぎており、スタート地点から歩き始めて1時間が経っていた。初回、前回踏査では市道の終点から管理道を経て山頂付近の電波塔へ到達し、道中が如何にも長くウンザリした記憶があった。今回のルートは高低差こそ大きいが歩く距離は管理道よりもずっと短い筈だ。特に例の処分場へ入る前には、正面の近い位置に山頂が見えていたのである。ここまで歩く過程で無駄に高度を下げる場面はなく、地図で示されるような2箇所のヘアピンカーブも確認し着実に高度を稼いでいた。現在位置から山頂までは直線距離で高々100m以内と推定された。それなのに山頂らしき最高地点が見えないどころか、そこへ至る登山経路にすら出会わないのである。

ここより道を外れて強引に斜面を登り始めた。幸い先で進行不能となり引き返すにしても、元の場所が分かりやすい特徴的なものが周囲に転がっていた。
先のよりは古く半ば朽ちているドラム缶がここにもあった。


それに続いて山中の廃棄物としてはお馴染みな古タイヤ、そして夥しい量のコードが大量に棄てられていた。
これは一体…?


それは電線のような太いものではなく、さまざまなカラーのビニールコードのようでもあった。機器などは付属しておらずスパゲッティー状に絡まったコードだけだった。身の回りでこれと同じようなものを見たことがない。この場所で何らかの作業をする過程で生じた廃棄物か、それとも処分場と同様に外部から持ち込まれたものだろうか。

コードの山を踏んづけて斜面をよじ登る過程で、既にすぐ上に別の作業道があるらしいと気付いていた。平坦な部分が見えていたからだ。
如何にもそれは今まで歩いてきたのと同程度の規格の作業道だった。しかしさっきは曲がりなりにも道の痕跡を辿ってあのスパゲッティーコードの場所まで到達していたのだから、相互には繋がっていないかも知れないと思った。

別の作業道へ出てきたとき、すぐ目につくものが前方にあった。


これは…ブルドーザーのバケットだろう。
取り外されて相当な期間が経過しているらしく、全てが完全に錆び付いていた。


作業道はほぼ完全にフラットだった。
そして道沿いには他にもいろいろな種の遺構がみられた。山頂到達を急ぐとはいってもさすがにこれらのものは記録しておかねばなるまい。[14:05]


まず最初に見たドラム缶は、今まで転がっていた中では比較的新しそうで塗装や文字が遺っていた。トップにはヤンマー重油と容量などの文字が見えた。

続いて橙色をした据え置き型の機器があった。これは発電機か削岩機向けのコンプレッサーだろう。


機器のすぐ横には建築ブロックで造られた小屋があった。
コンクリートの天井があり、鋼鉄製の扉は少しばかり開いていた。


ちょっとだけ開いた扉は、なかなかに好奇心をそそられる。他方、ちょっと怖いところもある。開けた途端に昼間寝て夜行動する種の四つ足獣が飛び出てくるかも知れない。しかし僅かの隙間を残して開いているから野性獣が潜んでいる心配はないだろう。むしろ開けるとそこには壮大な開口部があって底知れない竪坑が…なんてことになっていたら、見てしまうだけで凍り付きそうだ。

思い切って扉を開けたが暗くて何も見えない。カメラだけ差し込んでフラッシュ撮影し内部を偵察させたが、期待に反して中は何もなかった

空っぽの貯蔵庫の横はゴミ捨て場のようになっていて、古いバイクと言うかカブが棄てられていた。すぐ近くには殆ど加工を終えた状態の間知石が数個放置されていた。


バイクは殆ど木の葉に埋もれていて、タイヤのようなゴム部分を除いて殆どが自然に還っていた。


修理費用が嵩んだり車検が切れた古い型式の二輪や自動車は、置き場所にも困る厄介者である。処分するにも費用がかかることが随分と前から認識されていたせいか、最後に姥捨て山伝説の如く山奥へ連れて行ってそのまま廃棄される事例が結構ある。市内でも山間部を中心に何台か確認されていて、剛直と思われる車体も経年変化で原形を留めないほど壊れまくっている。このような車は、ときに「腐ったクルマ」と呼ばれる。転じて”腐った”の表現から「るま」と呼ばれることがある。腐った(く去った)「クルマ」だからというまるでなぞなぞのような話である。

この法則を当てはめるなら、ここで半ば埋もれている腐ったバイクは「ばい」になるのだろうか…などと考えてしまった。さすがにそのような語は未だ誰からも聞いたことはないが…

そんなことはさておいて、二輪が棄てられているということは、仕事で現場まで通うために乗っていたのだろうか。それともまた例によって処分に困って外部から持ち込まれたのだろうか…こんなものをしげしげ眺める人も居ないだろうが、表に出ている部分にはSuper Cubの銘板があった。

「ばい」の棄てられている場所は先ほど訪れた作業場の先端だったらしく、そこで道はぷっつりと途絶えていた。
それより先へ強引に踏み込むことは可能でも、高度を上げる方向へ進むことはできなかった。

この場所までは、コードが大量に棄てられていた場所から強引に斜面を登って来ている。出て来たのはバケットが置き去りになっていた近くで、そこから平坦な場所を南へ歩いてドラム缶、建築ブロックの小屋、腐ったカブに出会っていた。この辺り一帯は作業スペースであって作業道ではないのだろう。もう道筋にはあまりこだわらず高度を上げられる方向へ何処でも行った方が良い…

そこで平坦な作業スペースを再び引き返した。
腐ったバケットが置かれていた反対側はまだ調べていなかったからだ。


同様な作業スペースが続いていて、そこにも腐りかけのドラム缶が転がっていた。
そこを過ぎたときだった。[14:11]


あれは何だ?


薄い雑木林の先に、自然界には似合わせない橙色の何かが見えていた。場所柄あれではないかと思いつつ接近してみた。

(「岩郷山・第三次調査【4】」へ続く)

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