岩郷山・第三次調査【6】

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記事作成日:2019/4/18
(「岩郷山・第三次調査【5】」の続き)

「早いところ山頂からの眺めが見たいッ!」って声もきっとあったことだろうがエラく引っ張ってしまった。そして引っ張るほどもの凄く秀逸なという程でもないが、少なくとも木の枝や電線などに邪魔されロクに眺めが利かない電波塔エリアよりはずっと良い眺めが得られたのである。

まずは最初の一枚。
方向は概ね北東あたりではないかと思われる。[14:59]


そして二枚目。
一枚目と重ならないようにカメラを右方向、即ち東に振っている。この時点で既に右端が張り出した樹木で隠されてしまう。


このことより撮影位置から得られる視角は精々45度かそれ以下である。ズームを用いないでカメラ撮影するなら2ショットで収まってしまう。それでも山頂らしい眺めという評価は自分の中では及第点だった。撮影した方向に緩やかな斜面や尾根が少なくずっと遠くまでの山々が見渡せたからである。この地形はもしかすると自然由来ではないかも知れない。

そう考えた理由の一つとして、北側の眼下に見える奇妙な形の露岩の存在があった。
ズームで眺めても如何にも不自然だ。まるで大岩をスプーンで抉ったような形で削られている。


削られた面は丸みを帯びているし断面は白っぽい。体感的には藪の中に眠るブルドーザを見つけた場所の上方なので、土採りか採石の過程で削られたのだろう。そして足元の真下を含めた山の斜面も草木で隠されているだけで、かなり山頂に近い場所まで削られているように思われた。山肌が露出している部分は殆ど垂直なのである。このページの2枚目の写真も垂直な露岩が見てとれる。

そのことを思えば、山頂からの撮影は大変なリスクが隠れているようだ。接近する前から分かっていたように、夥しい落ち葉や枯れ枝の堆積で地山が見える場所が殆どなかった。少しでも視角を得るためには張り出した枝を避けてカメラを構えた両手を差し出さなければならないのだが、不用意に地山でない部分まで足を踏み出せば滑落するリスクがあった。むしろ落ち葉で隠れているから恐怖心が薄れていただけであって、落ち葉を片付けた下から近寄るのも躊躇われるほどの削られた垂直壁が現れるかも知れない。

抉られた岩は北へ張り出す尾根の端にあったので、あの真下辺りにさっき観察したブルが鎮座しているように思われた。しかし目を凝らしても藪の中に特徴的な黄色いものは見えなかった。現在居る山頂までそれほどの高低差を残していたわけだ。山頂はここから近い筈だとばかりにブルの削った斜面を強引によじ登っていたら、藪漕ぎプラス予期しないロッククライミング演習という登山どころではない目に遭っていただろう。

位置関係を含めて連続的に記録するために、久し振りのこと動画で記録してみた。
最初に山頂の足元にある三角点、樹に取り付けた山頂プレートを写し、それから東側へ身を乗り出してカメラを回している。
最後にカメラをゆっくり右へ動かす際には両手が塞がって身体の支えがないためかなり怖かった


[再生時間: 25秒]


電波塔エリアからは東に平原岳が見えるが、電線類に阻まれて眺めは良くない。他方、山頂からは眺めは遠くまで利くが目印となるような山が近くに見当たらなかった。
ランドマークとなるものを探すために、同じ範囲で少し遠方をズーム撮影してみた。これはスプーン抉り岩の方向で先を窺ったものである。[15:00]


カメラを東へ振る。そのままだと木の枝に隠されて先が窺えなかったのだが、ズームでそれらを避けて先を写している。平原岳は更にこの写真で右端の方に位置する。


集落がある方を更にズームしてみた。
左下側に写っているのは恐らく県道だろう。点在する民家の手前側に大田川が流れている筈だが、山の端に隠れて見えなかった。


後で解析できるように、光学ズームの最大倍率(36倍)で集落を撮影した。[1]


好天に恵まれたこともあり、山頂からの眺めは満足のいくものだった。ただし一般的な評価を与えておくと…遠望を期待して登るような山ではない。短くもない管理道を延々と歩いてこの程度なのだ。殆ど人が登らないレアな山に登ったという達成感を味わいたいなら、国土地理院の三角点も備わっていることでもあり一応の登山モチベーションにはなるだろう。

それから携帯会社2社とテレビ中継局向けの電波塔を間近に見られるので、このような塔を撮影して回っている人が立ち寄りついでに山頂まで行ってみるなら悪い選択ではないだろう。ただし草木の勢いが最も衰える今の時期で山頂周辺はこんな状態だから、春先以降は接近自体困難になると予想される。

反対側はまるで眺めが利かなかった。
プレートを固定した松の木の裏側まで身を乗り出せば何とかなったかも知れないが、まるで足元が分からないため自重しておいた。


これ位でいいだろう…とにかく山頂を極めたし、予想されていた国土地理院の三角点も確認できたので及第点だ。
再度の山頂訪問があるかどうかは…他の登山道を調べてみる機会があれば別だが、山頂からの眺めは変わりようがないため、当分の間はないだろう。

去り際に再度山頂のプレートを撮影した。
正面に見える僅かな部分から身を乗り出して撮影したのだから、どれほど山頂が狭いかがよく分かるだろう。


目印として置かれた市の路肩標からプレートまでは精々2〜3メートルだ。どこまで地山か分からないので、山頂へ同時に立つことができるのは10人以下と思われる。足元のシダ類をバッサリ刈ればもう少し広がるかも知れないが、少なくとも東側はかなり怖い絶壁状態になっている。もし現地へ行く方があるなら、削り取られた斜面からの滑落には充分注意した方が良いだろう。
《 そして下山… 》
紆余曲折はあったが山頂に到達できて三角点を確認できた。山頂からの眺めも得られたので、双六で言う「あがり」同然だ。ここで時系列記事も終了していいのだが、その後のことも少し書いておくことにする。

マーキングに沿って来た道をそのまま引き返せば良いから考えることもないように思えて、山頂から最初のマーキングまでは結構大変だった。市の路肩標を見つけて強引に登ってきたため、戻るにしてもまずどの方向へ降りればいいかすぐ分からなかった。恐らく来たときとは別の経路を強引にたどり、折れて地面に落下していたマーキングより一つ手前のものを何とか見つけることができた。

電波塔エリアには立ち寄らず岩川基地局の横を降りて管理道へ下ってきた。[15:08]


さんざっぱら山の中を歩き回り、管理道へ出てきたあの場所である。
あるいは電波塔時代以前は正規の登山道であったのかも知れないが、マーキングなどは一つも見つからなかった。


もう一度、この藪の中へ潜り込んで来た道の通りに引き返すか?
まさか…


延々と長い道のりになるなーと思いつつ、管理道をとぼとぼと下った。途中にいくつかある既知のスポットの調査や追加の撮影などは行ったが、山頂滞在時ほど時間をかけることなく歩き、市道の例の場所へ停めていた車に戻った。沿線にある興味深い物件については派生記事か別カテゴリの独立記事を書くかも知れない。岩郷山の真の山頂を極めるという今回のミッションに関しては、登山道の存在について否定的解決となったものの目的は達せられたのであった。
《 残された問題 》
以上のように、第三次踏査では地図上で見て登山道かも知れないとみた経路が実質的に産廃処理場への作業道であり、山頂まで到達する経路が皆無であったことが判明した。産廃処理場の端から偶然に作業道へ復帰できたことから、この部分は地図で示されるような道があったと考えられるが、それでも山頂までの道は踏み跡レベルでも完全に喪われていた。山頂まで続いていたマーキングは、2度目の踏査以降に測量などの目的で山頂を訪れた人々によって設置されたものと思われる。

岩郷山の北側、厚東川に面した地区からも登山道らしき経路が記載されている。県道を車で走ったとき民家の横から山の方へ向かう道を確認しているが、詳細は調べられていない。


この経路を航空映像で眺めると中山地区まで樹木を刈り取ったライン状のものが見えているため、中山地区までは到達できそうである。しかし山頂到達時に北側から登ってくる踏み跡を見つけられておらず、安泰な登山道があるとは思えない。

今後新しい情報が入れば総括記事で編集追記する。
出典および編集追記:

1. 写真のやや左上で山の方へ伸びていく直線路や周辺の民家の位置関係から、この辺りを眺めているものと思われる。

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