黒見山

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記事作成日:2018/4/14
最終編集日:2018/4/23
黒見(くろみ)山とは、二俣瀬区の城生原と山中の間、現在の宇部テクノパーク(以下「テクノ」と略記)がある中に存在する山である。
写真はテクノ内を通る市道より見上げた黒見山。


山頂部をポイントした地理院地図を示す。


地図と現況で分かるように黒見山はかつて単独峰のようだったが、平成初期に地域振興整備公団によるテクノ整備により広域に造成され、山の北側と西側が削り取られて形状をほぼ喪っている。この辺りの字名は甲石(かぶといし)で、この地名は現在もテクノに入っている企業の所在地として用いられている。
《 歴史 》
テクノ造成前の黒見山についてどのような特性ある山だったかは手元に充分な情報がない。山頂周辺の土地は山中にある熊野神社の所有になっている。[1]これは熊野神社を勧請し山中で暮らし始めた人々が南側にある鋳物師釜で炭を焼いていた歴史と関連性がありそうに思える。更に南へ寄った黒見山辺りまで社領だったのが現在も遺っているのかも知れない。

かなり北側に離れた山陽新幹線のトンネル名(第一黒見山第二黒見山)として採用されているので、かつては登られていたもののテクノ造成に伴う著しい地勢改変で山の形が失われたために忘れられた存在となっているように思われる。この辺りの状況は黒岩山と似ているのかも知れない。ただし黒岩山は山頂付近に東屋などが遺るものの黒見山には何も見つかっていない。
《 山頂 》
元々は何もない山野だったが、平成初期に山口テクノ・宇部テクノとして開発造成され、2本の道路に挟まれている。このうち北側を通る宇部市道により斜面が大きく削られた。

山頂付近には2基の送電鉄塔(小郡線No.46山口小郡線No.33)が建っている。
写真は佐山側からの山頂の眺め。


山頂部は雑木に覆われていて極めて狭いのみならず、最高地点が何処であるかも不明瞭な状態となっている。山の名称を示す標識柱などは存在しない。写真は物理的な最高地点と思われる周辺の様子。


現在では山として敢えて登る人は殆どいない模様。送電鉄塔の維持管理目的で訪れられる程度と思われる。この周辺に後述する三角点の存在が想定されているが、確認されていない。

山頂周辺はテクノ側が削られているため北側の眺めはある程度利く。


山頂より少し低い送電鉄塔が2塔建ち並ぶ場所では南側が開けていて山口テクノパークの奥に日ノ山が僅かばかり見える。
しかし雑木も多いため充分な眺めは得られない。


この鉄塔より山頂方面とは別の山道もあったが、送電鉄塔の管理道と考えられるため追跡していない。
【 三角点 】
地理院地図では山頂に三角点が記載されている。しかしテクノ造成時に伴い北側の斜面を削って法面に加工した際に失われたという報告がある。[2]実際、最高地点付近を2度に渡り丹念に探索したものの見つけることができなかった。もし存在するならば白い標識柱を欠いた状態でシダ藪の下へ埋もれていると思われる。報告通り抹消された可能性もある。
《 登山ルート 》
山の北側にテクノの造成地があり、市道善和佐山線が通っている。この際に北側斜面を大きく削り取られていて山頂部は市道からすぐ近くに見える。

削られた斜面はコンクリート吹付けとなっている。このため階段や管理道などを介して容易に山頂へ到達できそうに見える。


しかし吹付け斜面には管理用の階段が設置されておらず、ここから山頂へ向かうことは非常に困難である。

テクノ以前のこの山へのアクセス路は、上記の地理院地図に記載されているように山の東側のみである。
写真は山口市道側にある入口。


向かってすぐ右側に送電鉄塔小郡線のNo.45が建っている。この枝道は立入禁止にはなっておらず車も入れる間口はあるが、乗り入れると転回が困難である。

突き当たりで直角に右へ折れると、管理通路と登山道などとの分岐点がある。
写真は分岐点より振り返って撮影。


写真では分かりづらいがこの分岐点には境界杭が2つ埋め込まれている。写真では右側手前に折り返す方向にNo.45鉄塔へ向かう管理道があり、登山道は左側へ折り返す坂道である。
直進方向に見える不明瞭な道は地理院地図にある古道と思われる

山頂付近に送電鉄塔があることから推察されるように、登山道は昔ながらのものに中国電力が手を加えて管理用通路としている。急な坂となる場所には中国電力仕様のプラスチック階段部材が埋め込まれている。

したがって黒見山への山頂アクセスは入口さえ分かれば比較的容易ではあるが、すぐ近くに見えていながら想像以上の距離を歩くこととなる。山頂の南側は山裾まで企業の社有地となっているため接近できない。
初めて山頂へ到達した日にFBページへ(場所を知らせずに)行った投稿。(要ログイン)
外部リンク: FBページ|2018/4/14の投稿
出典および編集追記:

1.「FBページ|2018/4/15の投稿の読者コメントによる。(要ログイン)

2.「FBページ|2018/4/13の投稿の読者コメントによる。(要ログイン)
《 地名としての黒見について 》
黒見(くろみ)はこの山の名称であるが、地名としては知られていない。少なくとも宇部市相当における小字絵図にはみられないし、明治期以前からの地名を収録する地名明細書にも類似する地名すら書かれていない。字名としては前述の甲石もしくは鋳物師釜(いもじがま)のみである。純粋に山岳のみに対して与えられた名称であろうか。あるいは手元に資料がないが山口市側に由来する小字などが存在するかも知れない。

この場合の黒見の由来であるが、漢字表記を前提に考察するなら「黒い何かにまつわる地」であろうか。この場合の黒は外観的色彩ではなく奥まった、深いなどの義もある。見とは概ね場所を意味する。他方、純粋に「くろみ」の音を考慮した音読由来から考察するならば、近いものとしてクルミを想起される。同一の読みの地名としては小野区に来見(くるみ)がある。来見は茱萸(ぐみ)の転訛と考えられるので、黒見も同様かも知れない。実際、尾根一つ隔てた善和村の井出ヶ原には茱萸ヶ浴(ぐみがえき)といったかなり明白にグミ由来と思われる小字が存在する。
《 個人的関わり 》
2015年4月に初めて調査を行っている。車でテクノパークを訪れて削られた北側斜面周辺を調べたものの登山口の痕跡を見つけることができず撤収している。

2018年4月、国土地理院地図で昔の山の姿と登山道を調べた上で再調査し、宇部テクノパークと山口テクノパークの間の市境を通る道から登山道が伸びているのを見つけて到達に成功した。しかし三角点を見つけることができないまま撤収。その後、三角点が鉄塔付近に存在するという情報を得て一週間後に3度目の訪問を行ったが見つけることができなかった。

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