恩田運動公園・恩田スポーツパーク構想説明会

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記事作成日:2023/8/9
最終編集日:2023/10/15
ここでは恩田スポーツパーク構想の説明会(以下これを「構想の説明会」と略記する)と題して、2023年7月30日の午前と午後に開催された構想の概要説明会と地元関係者への説明会について記述する。

会場は宇部市野球場(ユーピーアールスタジアム)で、午前にスポーツパーク構想で何がどう変わるかについての一般向け説明が行われ、午後の部では主に恩田運動公園の周辺在住者に対する工事概要についての説明がなされた。いずれも事前の参加申し込みが必要であり、午後の工事概要については地元関係者以外の参加も可能だった。

恩田スポーツパークのワークショップが開催されたのは2018年のことであり、学童期から馴染みの場所であったが故に提言を目的に参画してきた。covid19 で暫く進行が遅延していたが、最終案がまとまったことで今年度の8月より工事が始まることとなった。

具体的に何処がどう変わるかについてはワークショップのときから概ね分かっていたので、説明会は地元関係者への説明会となる午後の部のみ参加している。
《 構想に関する説明 》
前述のように説明会自体には参加していない。概要は市のホームページに掲載されている。[1]
《 地元関係者の説明会 》
午後1時よりユーピーアールスタジアムの1階会議室で実施された。


午後の部のみの参加者もあるので、最初に工事概要が市および施工業者の美津濃により説明された。2023年度の工事はプール関連施設の解体撤去、補助競技場から多目的グラウンドへの改修、野球場の設備変更(自然芝から人工芝に布設替えしスコアボードをLEDタイプに)が予定されている。


恩田運動公園の中を通って登下校する子どもたち(例えば常盤中学校など)もあり、施工にあたって安全対策や通路確保について平面図で示された。


その後で地元関係者による質疑応答があった。
【 質疑応答 】
かつての恩田地区在住者であっただけなので、個人的には具体的な質疑はしていない。どのような意見や要望が出るかをリサーチするのが目的だった。概要はFBタイムラインで速報的に述べている。[3] 以下では、自分の中で解釈したところを記述している。

エリア内にあるメタセコイアを伐採することに関して厳しい指摘が出ていた。具体的には市道恩田野中線沿いに植わっているもので、プールを撤去した後で駐車可能台数を増やすために市道に面した個体は概ね伐採される。


この指摘に対して、現状でもプロ野球の大会があるときは既存の駐車場でも足りないことが理由とされた。伐採により緑が喪われるという指摘に対しては、代替的に他の樹種を植えることで緑化率の低下を招かないよう配慮すると回答された。

子どもの登下校路の確保と安全に対する指摘事項では、その時間帯にダンプの往来が重ならないよう配慮すると回答された。工事中も恩田運動公園には適切な通路が設けられ、散歩など通常のように利用可能である。

市道恩田野中線とプールの間はフェンスで囲障されるが、設計にあるメッシュタイプのものでは住宅地側に騒音がするのではという懸念が示された。この件に関しては、解体工事などに係る通常の騒音基準に準拠して施工するという回答があった。メッシュタイプではなく通常の目隠しフェンスに設計変更する件については、今後の検討課題とされた。
《 改修にあたっての意見と提案 》
以下は、この総括記事を作成する現時点での考えである。4年前のワークショップ開催時に比べて些か現実論に沿った物の見方に変わっている。説明会で意見を言う代わりにここへ記録することで代えている。可能なものは実行して頂ければと思う。
【 園内のメタセコイアについて 】
全個体を温存することは現実的ではなく、重要な施工箇所にかかるものや樹勢が弱っているものについては伐採もやむを得ない。基本構想ではプールと陸上競技場の間にあるメタセコイア並木は概ね温存される計画であり、この部分がほぼ現状保存されるならば他の箇所については伐採することに反対しない。

考え方の変わった理由は概ね以下の通りである。
(1) 現地にあるメタセコイアの樹齢が半世紀程度であること
(2) 並木を形成しているメタセコイアの状態が良くないこと
(3) 維持管理に問題を引き起こしていること
国内に植えられているメタセコイアは、概ね戦後に移入されたものである。状態が良ければかなり背が高くなるため樹齢も進んでいるように思えて、移入時を考慮すれば樹齢が100年などというものはない。生きた化石と言われるのは真実としても、それほど希少価値のある樹種ではない。市内全体をみても充分な個体数があり、むしろヤナギの方が保存対象として相応しいくらいである。このことは4年前のワークショップのときは私自身にこれらの知見がなかった。

並木を形成しているメタセコイアの状態は、見かけほど健全ではないことが樹医により指摘されている。植えられている間隔が充分でなく、個体同士が育つのに相互干渉を起こしている。これは(恐らく常盤通りのプラタナスのように)今ほど大きく成長することを見越した植え付け方になっていなかったからである。実際、メタセコイア並木は2000年以前に撮った写真があるが、その樹勢と現在を比較しても殆ど背が伸びていない。

更に各個体が健全な状態にないことは、先端部分に現れている。
多くの個体で梢の葉の付き方が悪く、枯れたようになっている。


今の状態におく以外ないが、弱って立ち枯れてくる個体が現れるかも知れない。

維持管理についても公園内に限定されない問題を起こしている。新緑の間は見栄えがするにしても、秋口になると茶色に変化し葉を落とし始める。葉はカイヅカイブキのようにわさわさとした綿状で、地面へ大量に落ちる。葉が小さい分だけプラタナスの葉ほど掃き集めるのが困難である。実際、プール営業時代も9月以降のプールが閉鎖された時期に場内へ落ちる大量の葉を掃き集める必要があった。

これらの理由により、必要な施工箇所にある個体の伐採について容認する。並木道となっているメタセコイアも次期工事で陸上競技場の今ある本部を反対側(メタセコイア並木側)へ移転するなら、入口部分にかかる個体は伐採されることになるだろう。

伐採されたメタセコイアは、恐らく他の樹種と同様に伐採業者によってチップに転用されるだろう。樹径の大きい個体をスライス状にカットしてくつろぎエリアに設置される椅子やテーブル素材にしてはどうだろうか。そうすれば施工箇所にかかるメタセコイアに関して「やむを得ず伐られたがテーブルとなって恩田スポーツパークのメモリアル的素材になった」と説明可能になる。不定形素材を加工する手間は要るにしても、必要なのは昔あったものと今そして未来に向けて使われていく素材にストーリーをつけることである。

以上の部分は、メタセコイア並木の総括記事を編集追記する折りに移動する。
【 多目的競技場について 】
構想では、国道190号から市道野中線を経て直進する通路と駐車場と補助競技場が多目的グラウンドと大型バスも入る駐車場に変更される。直進する通路がなくなることで、現状の国道から入ると真正面にメタセコイア並木が見える景観が変わることが懸念される。


平面図で眺めると特に直進路がなくなり塞がれた印象を受けるが、設計によれば多目的グラウンドは現状の野球場とは異なりフェンスがなく、飛球防止のネットが張られるだけである。形状は野球場であるが、サッカー3面分のラインが入れられる。また、陸上競技場を使用する大会やプロ野球の公式戦が開催される折りには、このエリアを臨時駐車場に転用できるような設計が予定されている。そのため直進路がなくなっても平面図で想像されるほどの圧迫感は恐らくないだろう。

ワークショップ時代では、補助競技場のある場所に現在の進入路を変形させて多目的グラウンドを造ることを疑問視していた。あまりにも野球に傾倒しているように思えたからである。構想では多目的仕様に変更されており、現状の補助競技場はソフトをするにもサッカーにも中途半端に狭い。この両方と臨時駐車場としての利用も予定されていることから、この設計を追認する。
【 プールの解体に関して 】
8月の中旬より工事範囲をフェンスで囲み、園内の通路を確保する作業が始まる。プール本体と管理棟などすべてが取り壊されるため、この説明会の翌々日にプールエリアを再度丹念に撮影している。

説明会のとき、50mプールのサイドに埋め込まれている水深プレートを保存することを提案している。
写真は再撮影時のもの。


プレートは鋳鉄製のように見える。50mプールで泳いだことがある人なら誰でも知っている存在であり、恩田市営プール時代のメモリアル的存在となり得る。プールのコンクリート斫り作業のとき、両サイドに埋め込まれているプレートを保存しておくことを勧める。

観覧席の奥には、第十八回国体記念植樹の石碑が藪に埋もれている。樹木そのものは枯れてしまったようで既に存在しないが、石碑は水深プレート同様にメモリアルとして保存すべきものである。

最終的にプールはすべて撤去され、構想の中にはプール建設は当然入っていない。しかしワークショップで恩田スポーツパークの素案が提示されたとき、プールが無くなることが分かって水泳教育関連者から見直しを強く求める意見が出たことを忘れてはならない。一時は恩田プールを保存するための署名運動も展開されている。構想ではプールのエリアは完全に変わるので、プールの水深プレートや記念の石碑も処分してしまうと、プール時代のものは何一つ遺らなくなる。

いたずらにノスタルジーに浸って公園のアップグレードに反対することもない。若い世代が現代感覚で親しめる公園に改訂されることに賛成する。しかし映像記録も現物も遺さないままに新しいものを造るのは、恩田運動公園の過去の歴史を否定するものである。映像に関しては私が丹念に記録を取っているから、現物については先述のものを含めて可能な範囲で保存を検討して頂きたい。
《 その後の変化 》
・9月22日頃から旧プール時代の管理棟の取り壊しが開始している。[4]

・9月29日午前中に以前の説明会で後日回答すると表明されていた駐車場と緑化率の件について、当日の出席者へ個別に電話による回答がなされた。本件については意見提出する意図は無く市の発表を追認していた。また、このときの確認事項として以前より個別に要望していた50mプールの水深プレートと場内にある記念植樹碑の現物保存について、どちらも市営プール時代のメモリアルとして保存するという回答が得られている。
出典および編集追記:

1.「恩田スポーツパーク構想 |宇部市
なお、上記 pdf ファイルの p.12 にワークショップで提出した各班の構想図が掲載されている。1班の構想図で赤のマジックでメタセコイヤ(残す)と書かれているのは当時の私の書き込みである。

2.「市が恩田スポーツパーク構造の内容を公表|宇部日報社

3.「恩田スポーツパーク整備工事について|FBタイムライン

4.「2023/9/22のタイムライン|公益財団法人宇部市体育協会

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