恩田スポーツパークに関するワークショップ(以下WSと略記)とは、市内の運動施設を集約させた
恩田運動公園において、老朽化が進んだ設備の利用実態を見極めつつ改修を行うにあたって市民の意見を汲み上げるための参加型会合である。
常盤公園の憩いの家ワークショップとは異なり市観光・シティプロモーション推進部による主催で、当初から2回に分けての開催が計画されいずれにも出席可能であることを前提とした申込形式で募集された。その他の詳細は
[1]を参照。
《 参加の意義 》
常盤公園の憩いの家ワークショップのときは、憩いの家に関してあまり個人的関わりはなかった。他方、恩田運動公園は幼少期から市営プールや陸上競技場に親しみ、中学時代は3年間の登下校路の一部であった。慣れ親しんだ恩田運動公園が今後変わることは予想済みではあったが、要望事項がいくつかありそれを早めに意見しておきたい意図があった。
第一回WSのテーマは
「恩田スポーツパークに必要な機能を考える」であった。
開催日は2018年11月20〜22日で、参加しやすいように同じ内容のものを場所と時間帯を変えて4回行われている。写真は22日に
男女共同参画センター・フォーユーの第1・2講習室で開催されたときの様子。
始めに恩田運動公園の現状と改修対象となっている施設などの説明が20分行われた。その後休憩を挟み、今の恩田運動公園に欲しい設備などについてブレーンストーミング法で80分間かけて意見を出し合い、最後に各自の班がまとめた案を発表した。
開催日は2018年12月2日午後1時〜5時の4時間で、宇部市野球場(ユーピーアールスタジアム)で開催された。
テーマは
「パーク内のゾーニング」であった。
第一回WSで日時を変えて開催されたとき参加者が対象で、このとき提出したすべての意見が紹介された。次に配布されたスポーツパークエリア図に欲しい施設のレイアウトを各自で作成した。この案を元にグループ分けし、最後にグループ単位でまとめられた案を発表した。
《 総括的所感 》
・常盤公園の憩いの家WSのときと同様、対象範囲が明確だったため参加者にとって議論に入りやすかった。ただし恩田運動公園は常盤公園よりも利用者が限定されるからかWSへの参加者数は少なかった。
・2019年2月に市が基本構想を示し、パブリックコメントが求められるスケジュールとなっている。2回にわたる今回のWSで提出された意見や要望が反映されているか今後注視していく。
《 改修にあたっての意見と提案 》
先述の通り幼少期から親しんできた公園であり、関連施設の老朽化も知っていたので、手を加えるなら可能な限り考慮して欲しい点がいくつもあった。更に時代の趨勢から集客性を狙ってお金をかけて大きなものを造ろうとする考えから脱却し、自治体の身の丈に合った公園造りを行うことを訴えたい意図もあった。
以下ではWSの参加前から持っていた個人的な希望と、2回のWSにおいて得られた知見を反映させている。一部には現状の充分な精査が行われておらず調査を要する項目を含む。長文にわたるので折りたたみ形式にしている。
【 設計コンセプト 】
・宇部市の将来的な人口減と税収の逓減を考慮し、
できるだけ建設コストを抑えて今あるリソースを最大限活かすような設計を求める。プールの循環系設備関連のように老朽化が酷い施設や構造物などは別として、
公費を投じて既にある資産と認識されるものをわざわざ破壊し新しく何かを造ろうとする設計思想を全面否定する。具体的にはプールと陸上競技場の間などにあるメタセコイア並木である。これらの高木は可能な限り温存し、移植や伐採を最小限にとどめて欲しい。既設の高木配置を所与のものとし、今後新しく造る通路や構造物は高木に合わせる設計を求める。
・現状のままおよび改修工事完了後存続使用することが決まっている野球場と俵田翁記念体育館を除いた改修工事の対象範囲(以下「エリア内」と略記)において、
すべての最終的な施設を一度に無理に確定させない。用途の確定していない部分は単純な広場状態のままにする。一度にエリア内すべてを埋める設計にしてしまうと、後で変更に対処するのが困難になる。余剰地を造っておけば、スポーツパークとしてリニューアルされた後に利用者が急増したとき駐車場に転用可能であるし、新種のスポーツが流行したとき後から関連施設を造ることができる。宇部市役所新庁舎建設ワークショップでも同種の提案があり、この考え方に基づくものである。
・エリア内の境界および各種施設の間仕切りを設置する場合は、
可能な限り建築ブロック素材を用いない。新規に必要な場合は、土中に独立基礎を持つネットフェンスのような軽量で堅牢な素材に変更する。高さを要しない間仕切りや既設の建築ブロックを流用する場合は、倒壊しても被害が及ばない段数(3〜4段程度)まで切り下げる。
応急処置的な施工であるが、プール外壁で2017年6月に補修を行ったブロック塀部分はその良い見本と言える。
この施工方針は恩田スポーツパークのみならず今後公的機関が設置するあらゆる囲障に適用し、将来的には一般市民にも準用するよう指導することを求める。
・空間的な景観面の重視。
エリア内は電線に伴う電柱の新規設置を極力行わない。外周部分の市道に設置されている電線から分岐させ、地下埋設線など景観を損なわない方式で電力線を設置する。特に前述のメタセコイア並木周辺には、景観を阻害する恐れのある建物を造らない。
・
消耗や劣化が予想される素材は、コストと維持管理性を考慮して選定する。市街部には一般的なインターロッキングは景観面では秀逸だが、コストが高く不陸が生じやすい。チップ舗装はジョギング向けには足に優しいが、排水に問題があったり通行者が多いと朽ちて剥がれやすくなり、補修が極めて困難である。
【 アクセス路関連 】
・
エリア内の一般車両の通行可否は、現状を継承すること。即ち四輪や原動機付き二輪は通行禁止、自転車通行は容認である。リニューアル後に市公園緑地課の管理する他公園に準じてエリア内の自転車通行を原則禁止とする場合も、かならず遠回りにならない自転車の代替経路を確保すること。これは慣行的な通行権の確保であり、市役所庁舎建設ワークショップでも一部の市道が廃道化される折に同趣旨のことを述べている。特に常盤中学校の自転車通学生徒は、車が入ってこない安全な経路として登下校時での通行を認められている。
・
エリア内に設置する駐車場は、既設のものを維持か若干拡張して対処すること。数年先になっても現在の車社会が大きく揺らぐことは考え難く、利用者の殆どはマイカーで来訪する筈である。現在でも陸上競技場で大会が開催される都度、普段は四輪が入れないプール前まで臨時駐車場として使われていることを思えばかなりの拡充が必要なようにも思われる。他方、イベントがない普段は国道にもっとも近い駐車場も公園利用者ではなく営業車やトラックが昼食休憩として利用している現状があり、フットサルなどで使われる補助競技場を潰してでも駐車場に充てるメリットは薄いという意見も多い。駐車場に隣接する東屋は老朽化が著しく殆ど使われていないため、除却して駐車スペースを拡張するか、俵田翁記念体育館の南側(倉庫代わりの貨車が置かれている場所)の三角形領域を新規に駐車場に充てるなどで足りるのではないだろうか。
・エリア外周部にあたる
一部の市道の幅員を拡げること。俵田翁記念体育館前の
市道恩田野中線は2車線で自歩道も分離されており問題ないが、陸上競技場の本部席後ろを通る
市道野原線は見通しの悪いクランク部が含まれる上に通り抜け車両が多い。野球場の裏を通る
市道恩田則貞線は、幅員が狭い上に終日一方通行規制となっていてアクセス路としての利便性が悪い。エリア側を削って道路幅員を拡げ、歩行者および自転車が安全に通行できる側帯を設置する必要がある。
・
野球場の拡張工事で分断されてしまった園路を一続きに修正すること。具体的には野球場南側の外周に接する区間である。
この部分はかつて幅の広い未舗装の園路であったのだが、平成期に野球場改修工事で外周が膨らんだあおりを受けて園路が削られ、一部は分断されている。このイレギュラーにより野球場外周のジョギングを困難なものとしている。
西側の円弧部分は広い幅で園路が確保されている。東側を同様にすると既設の高木を取り込んでしまう形になるが、元々ジョギングや散歩をする人によって通行されており四輪が通るあては全くないので、園路幅の中に高木が取り込まれているスタイルになっても問題ない。変更は、園路と植樹部分を仕切るブロックを撤去するのみで良い。園路部分の舗装は必要ない。
【 スポーツ設備関連 】
・プールの存続廃止については、更なる意見を求めた上で最終決定する必要がある。建設時(昭和33年)には娯楽施設の種類が少なく人気を博したものの、現在では多種多様な娯楽があって分散している上にプール自体も民間運営されている施設が数ヶ所ある。更にプールを再建するには膨大なコストが必要となり、水道代は元より維持管理費も嵩む。プール以外で市内にはない他の施設(例えばスケートリンクやスケートボード場など)を造った方が良いのではないかという意見がある半面、会員登録なしにスポットで利用できる恩田プールは未だ魅力的であり、規模を縮小し温水プールや屋内化を施して再出発した方が良いという意見もある。50mプールは公認を解かれきららに移ってしまったこと、25mプールなどと比べて水道代が嵩むことから50mプールのみを廃止するという意見も多い。[2]ただし一部のプールを廃止し残りを温存させる場合でもポンプ設備の改修は必須となる。利用実態が充分把握できていないため、個人的には判断を保留する。
・陸上競技場は400mトラックに公認があり、位置を変えることなく老朽化した本部席やバリアフリー化の改修に賛成する。沢地を埋める形でフィールドを造ったため周辺より低く、地上げすればフィールドの面積も増える。ただしこの改修だけでも1億円程度が見込まれるためかなり困難と言われている。
・エリア内に野球場が含まれるが、野球場向けの駐車場は既に市道恩田野中線、市道清水川競技場線沿いに充分確保されているので、このエリアには追加設置しない。他方、俵田翁記念体育館と陸上競技場向けの駐車スペースは集約して現状よりも増やす。特に俵田翁記念体育館の南側にある三角の余剰地は日当たりが悪いため、公園ではなく駐車スペースが適している。
・既存のメタセコイアについて施設の建設配置上どうしても伐採しなければならない場合は、幹径の太さを活かした椅子やテーブルなどに加工して現地で再利用すること。植物たりとも生命ある存在であり、子どもの教育上にも有用である。くれぐれも三角公園をアドベンチャー広場にリニューアルしたときのように、保護者から「遊んでいる子どもが見えづらい」程度の安易な理由でイチョウやイブキを無節操に伐採することのないよう要望する。
【 公園関連 】
・アドベンチャー広場に設置した遊具はすべて継承すること。イチョウやカイヅカイブキを伐採して昔の三角広場から現在のアドベンチャー広場に改修され供用開始されたのは一昨年(2017年3月6日)のことである。この程度の使用で耐久性が損なわれることはおよそ考え難く、よほど酷く破損でもしていない限り必要な場所へ移設して再使用すべきである。
・園内を散歩する歩行者、ジョギングする利用者、自転車での通行者のすべてが公平かつ安全に利用できる仕様を検討すること。散策する歩行者が最優先なのは言うまでもないが、やむを得ずジョガーや自転車の乗り入れを禁止する部分を造ったなら、かならず除外された対象者が往来できる代替経路を提供すること。現状の常盤公園のように、自転車の乗り入れ全面禁止を敷くなど論外である。他の自治体や県外、ひいては国外でどのような運営がされているか参考に検討して欲しい。
【 にぎわい創出設備 】
・判断を保留する。軽食喫茶やレストランといった設備は欲しいものではあるが、イベント開催時には大賑わいするものの普段殆ど利用者がなければ採算的に合わずいずれ閉鎖されるだろう。特に「食事さえできれば可」のような特色のない施設だと、いくら人の流れがあっても衰退し閉店に追い込まれるのは、常盤公園の野外彫刻展示場前にある喫茶店(現在は無料休憩所として開放されている)でも明らか。
・飲食関係で何か造るとするなら、場所的には野球場に隣接する現在のプール観覧席がある辺りが好立地か。これは現況で野球場内に飲食できる施設がないこと、野球場玄関口のすぐ横で市道にも面しておりアクセスが良いことによる。ただし野球場来訪者の需要を取り込むなら、利用するのに一旦球場から退出する形になるので再入場を容易にするか球場と一続きにする構造が必要になるだろう。
《 WS終了後の変化 》
今回のWSで寄せられた意見や要望を元にして素案を作成し、2019年の2月に公表されパブリックコメントが募集された。これに対して先述のような提案をまとめて提出した。パブリックコメントの募集期間は2月1日より3週間であり、50人より80件の意見が提出されている。老朽化したプールが取り壊された後、素案では再建されない状況であったためかプールの復活を望む声がかなり出ている。提出された意見に対する市の考え方も一覧に掲載されている。詳しくは
[3]を参照。
この後設計と予算化を経て着手されるが、着工時期は今のところまだ未定である。変化が判明次第、編集追記する。
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