白岩公園・第二次踏査【5】

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(「白岩公園・第二次踏査【4】」の続き)

第二次踏査では白岩公園にある見落とされた遺構の確認と位置関係を記録するのが目的だった。
メインの園路を進み、倒木のある石段を登り切ると小さな峠に到達する。その先は恐らく白岩公園外となるのだろうが、何処へ向かっているのか調査しておこうと思った。

したがってここから先は第二次踏査【5】としていながら扱っているものは恐らく白岩公園外のものである。ただ先で興味深い物件に出会ったので敢えて白岩公園第二次踏査の後続記事として作成している。

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少し進んだところで振り返って撮影している。
まだ石段のところの倒木が見えている。この辺りは明瞭な山道でありながら石段も石積みも見あたらない。


道中は何処にでもありそうな普通の山道の様相だった。
しかし通る人は一応あるらしく木の幹にリボンでマーキングが施されていた。
黄色い色に何かの信号的意味があるのかどうかは分からない


道は緩やかな下りになっていた。乾いた落ち葉のじゅうたん状で歩きやすい。

歩きながらも何か目立った遺構が隠れていないか周囲に目を配った。どういう訳かあのピークを過ぎてからは岩が疎らになった。山の斜面に散在しているだけで巨岩と呼べるほどのものはなかった。石積みも含めて人の手が加わったものには何も観られなかった。

踏み跡はやがて平坦になり、それから再び緩やかな登りになった。どうやら乾いた沢を横切っていたようだ。
その坂がややきつくなる付近で変化があった。

やや踏み跡が荒れている。この坂の近くでは異様に欠けたような栗石が散乱していた。
古い石積みか何かが壊れた痕跡のようにも思われた。


再び落ち葉のじゅうたん道となり、坂はややきつくなっていった。
この先に信じられないものが潜んでいたのである。


ほら穴だ!


坂を登り切ったちょうどその真正面に黒々と口を開けていた。その位置関係から恰も今まで歩いてきた道の続きで、隧道に向かっているかのように思われた。
まさか…これをくぐらないと先には進めないというのではあるまいな…sweat

実際はそうではなく道はこの穴の前で直角に右へ折れていた。
しかし穴の方は尋常ではない存在ぶりを示していた。
一つではない…何故か二つも!


今まで歩いてきた道の正面に空いた穴の右横に同じような穴が見えている。どちらもほぼ同じサイズで、入口部分はシダ類で覆われていた。傍目にもかなり古い。
なんか…キモい…sweat
この穴の意味が分からない。
隧道を掘ろうとしたのだろうか。それは考え難い。昔から掘られてきたこのサイズの隧道は基本的に水を送る目的に限られる。人や馬なら少々の坂や段差を越えられるからだ。この近辺に水路などはまったく見あたらない。
次に想起されるのが防空壕だ。これも多分違う。こんな山奥に人が暮らす筈もないのである。

薄気味悪さを拭い去れず、足早にほら穴の前を通り過ぎた。中から何か出てきそうな気がしたのだ。

何故か山道はこの穴の前で直角に曲がっていた。
さっきは左側の道からやって来た。現在の場所から真っ直ぐ沢を下っていく方向には踏み跡が存在しない。


このほら穴…2つあるから「鼻の穴」だ。
これは一体いつ頃に、誰が、何の目的で掘ったものだろう?

自然にこんな穴が出来ることはまず考えられない。シダで隠されて見づらいものの断面はかなり整っており、倒木で自然にできた洞(うろ)とは違う。まして同じ穴が偶然2つ横並びになる筈もない。


勇気を出して穴の一つに近づく。
内部は真っ暗で何も見えない。風の移動も感じられないので閉塞しているのかも知れなかった。


重々、カメラのフラッシュが強制オフ状態になっていることを確認した上で撮影している。
入口部分で土が崩れているようだった。目測で高さ1m程度、幅80cmといったところだろうか。


トンネルや洞穴の部類は大好きだし、当然ながらもの凄く気になった。しかし恐怖のあまりさすがにフラッシュ撮影する気になれなかった。何としても正体を突き止めたい気持ちは山々だが、ここは堪えて立ち去った。

暗いから怖いってのも確かにある。元より人間は暗がりを本能的に恐れるように出来ている。しかしここでの恐怖というのは暗闇に幽霊が潜んでいるとかそういう種のものではなくもっと現実味のある恐怖だった。
フラッシュ撮影した途端、中から
野生生物が飛び出てくるかも知れない。
とりわけ恐怖の対象はイノシシだ。洞穴を利用して中がイノシシの巣になっていたら、飛び出て来れば当然襲ってくるだろう。普段でも逃げようがないところをまして今は右膝を傷めている身だ。素早い行動が取れない。
それ故にこの洞穴の由来と内部がとっても気になったものの、フラッシュ撮影は自重した。
この洞穴は一体、何のために掘ったんだろう…?
この穴がどれほど奥まで伸びているか、あるいは井戸のように下向きになっているのかさっぱり分からないうちは推測しようがなかった。
白岩公園と関連性があるかどうかも不明だ。
意外にも無関係ではないのかも…

「鼻の穴」にぶつかったところで道が直角に折れているために、進行方向は中山観音へ戻るような方向になった。
そして意外にもすぐ近くに別の道へ合流する場所があった。


そこへ到達するまでもなく何の道か理解された。
白岩公園コースだ…


この場所を覚えていた。
初回踏査に先立ち白岩公園コースをざっと歩いて公園に向かう道がないか調べたときに見つけていた。


近くの幹に結わえ付けられていた特高線の73番鉄塔の所在を示すタグ。
これも白岩公園コースを歩いたとき撮影していたのである。


初めてここへ来たときは分岐路の存在を確認していながら、白岩公園に向かう道などとは想像もしていなかった。
そもそもこの場所からして白岩公園を既に通り過ぎていると考えていたし、方向も全く異なっていた。岩田堤池に向かう道だろうと考えていたのである。

その予想は一部正しかった。恐らくこの沢地を下ることで岩田堤池に向かうだろう。しかしどういう訳か既に見た通りこの道は「鼻の穴」の前で直角に曲がっていた。そして結果的に白岩公園へ向かっていたのである。このような経路では気付きようがなかった。

一旦沢に向かって下り、それから反転して再び登っていくのは如何にも不自然かつ無駄な経路だ。もっと直接的に白岩公園を目指す道があったのでは…と考えた。
そのヒントとなりそうなものがこの分岐路付近に見つかった。


木の枝に赤いテープが巻き付けられているその先である。
この写真だけで読み取れるだろうか…
赤いテープはもしかすると道がなくなっているという警告?


赤テープの枝の先、朽ちた倒木が横たわっている左側だ。
地山が削られているように見えないだろうか。


写真では分かりづらいが現地ではかなり明白な道の痕跡に読み取れた。これは「鼻の穴」まで下っていかず内回りする廃された道ではないかと思う。

そう考えるもう一つの根拠がこの石柱だ。
自然のものではない石柱が転がっていたのである。ただし文字は刻まれていないようだった。


文字の刻まれない石柱は、白岩公園に向かう道の近く至る場所に見つけられる。第二次踏査の最初に白岩公園コースを歩き、県道に向かって下る道を調べたときにも存在していた。昔は文字での案内ではなくこんな感じで目立つ石柱を建てて示したのかも知れない。

第二次踏査の最初にこのコースを歩いたと言えば、ここまで歩いてきたために判明したまったく遺憾なことがあった。
最初に引き返した「ゴミ穴」からこの分岐は
僅か十数歩程度しか離れていなかった。


ほんの一時間ちょっと前に私はここまで到達していた。いくら何でも白岩公園は通り過ぎてしまっているだろうという気持ちがあった。そして「白岩公園コースから公園に向かう分岐路は存在しない」という自分なりの結論を出し、ガラス瓶などが散乱するこのゴミ穴を撮影して引き返した。
実のところこのゴミ穴で引き返さず、あともう十数歩でも進んでいれば、白岩公園に向かう分岐点を見つけることができていたのである。
もっともこれは結果論である。一時間前にここへ来たとき、仮に十数歩先へ進んで分岐を見つけることができても多分進攻していなかっただろう。この道自体まったく白岩公園から離れる方向に伸びているからだ。その先にある「鼻の穴」のところで進行方向が90度左へ折れ曲がり、白岩公園に向かっていたなどと予測できる筈もない。
何処へ向かっているのだろうと疑心暗鬼になりつつ進んだ道が、結果として白岩公園コースに通じていたのである。
しかしそれは些か非効率な道だ。西高分岐からやってくる場合は別として、中山観音から白岩公園に向かうルートとしては大幅な遠回りになる。それでも今日に限っては来た道を引き返す必要はなく、一時間前にもとぼとぼと引き返した白岩公園コースを再度歩けば中山観音に戻ることができる…
今日はこれ位でいいだろう…
白岩公園に眠る著名な遺構を数点確認し、園内の遊歩道の位置関係を調べ、今もって存在理由が分からない「鼻の穴」との出会いも含めた成果を脳裏とデジカメ映像に焼き付けて持ち帰った次第であった。

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おまけ。
地域SNSの記事では暴露的自虐ネタとして書いたのでここでも割愛するわけにはいくまい…^^;

中山観音まで戻るのにまたあの八十八箇所を通るのは勘弁してって言いたい気分だった。足元が悪い上に延々と下り坂が続く道で膝に負担がかかるからだ。
登り坂よりも下り坂の方がずっときつい…

それで横着をして面河内東分岐から常盤用水路まで出て、そこから強引に隧道の上を藪漕ぎして中山バック付近に出てきた。

ここで一枚撮影。
右側に見えるネットフェンスが常盤用水路の中山呑口であり、前方には県道と市道高嶺中山線の交差点が見えている。


この付近の斜面はかなりきつい。上の撮影を終えて再び歩き始めたときに事件が起きた。
ズベッ!!と盛大に滑ってコケてしまった…
雨でぬかるんでいたから滑りそうだって気はしていた。それで自分としては最大限注意しながら降りていた積もりなんだが…
それでなくても傷めている右膝が思いっきりネジ曲げられる格好で躓いて泣きそうな位に痛かった。

被害状況(何)
右膝をかばって左足から倒れ込んだので泥がべっとりと…^^;


この坂を降りれば中山観音の駐車場なので、とにかく早く車に戻りたかった。
廣福寺の境内を通るとき、たまたま落ち葉掃きに勤しんでいらしたお寺の方が…
いい年して泥まみれのズボンで道なき道を経て歩く自分の姿がかなり痛く、素直に「泥の斜面で思いっきりコケてしまいました」と白状した。

思えば初回踏査では自転車で訪れ、不意打ちの雨降りに見舞われて泣きながら自転車を漕いだ…第二次踏査では本腰入れて踏査する途中ありがちな「生理現象」に見舞われ、更に帰りでは中山バック付近の泥斜面で盛大にコケてしまい、アジトへ戻った後またしても泣きながらズボンを洗濯する羽目になりましたとさ♪

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