白岩公園・第二次踏査【4】

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(「白岩公園・第二次踏査【3】」の続き)

藪が開けた先には明白な踏み跡が見えた。それどころか妙に近代的な鋼製の鉄線らしきものが地面に突き刺さっているのが見える。


最初、私はその場違いなものの正体が何か分からなかった。
藪を振り払うように踏み跡へ出てきた瞬間、独特の形状を呈するその姿を観てそれが何か理解できた。
特高線だ…


特高線、即ち特別高圧線とは宇部興産(株)所有の送電経路である。詳細はいずれ厚東川ダムおよび発電所関連カテゴリで記事を作成するとして、宇部興産は厚東川ダムに独自の水力発電所を保有しており、得られた電力を独自の送電経路で関連工場に送っている。
送電鉄塔と電信柱の中間サイズのような細身の鉄骨は一種独特で、現在では市内を含む近隣地区おいてここでしか観られなくなってしまった。
平成初期あたりまでは秋吉地区でも県道沿いに同種の鉄塔が存在していた

鉄骨や鋼線は近代的ながら特高線そのものの歴史は古い。建設は昭和24年10月30日であることが判明している。白岩公園の設園時期よりも後だが、送電鉄塔としてはかなり古い部類に入る。


送電鉄塔には管理用番号が振られている。この鉄塔は75番とされている。


この場所をポイントした拡大地図である。


地図では□印にヒゲのついたような表記で送電鉄塔が記載されている。すぐ北側に見られるもう一つの印が74番鉄塔である。
特高線は厚東川ダムを出発してとてつもない山奥など接近しがたい経路を通されている。県道琴芝際波線の中山付近で特高線が通過しているのは以前から知っていた。しかし一旦山の中へ分け入ってしまうと、遠くから見えないものには気づきづらいものである。
まあ…そこから先の話は送電鉄塔関連の記事にまとめるとして…

白岩公園に向かう途中までの山道が意外に荒れず通りやすくなっている理由がここにきて分かった。特高線の管理道として現在も利用されているからだ。
古めかしい送電鉄塔ながら特高線は現役で活躍しており、鉄塔に向かうための管理道は定期的に草刈りが行われている。

索道を辿ると、次の鉄塔に向かうタグが木の幹に取り付けられていた。
このタグを頼りにメンテナンスに訪れる関連会社の作業員は、白岩公園の存在を知っているのはほぼ確実だろう。


索道を辿ると、途中で大きく曲がって結局この場所に戻ってきた。
微かに見える石積みは、法篋印塔のある雛壇部分だ。


振り返って撮影。初回踏査からこの雛壇より先に向かう踏み跡があることを知っていた。
しかし白岩公園から外れて山の中に向かってしまうと思われたので辿っていなかった。


結局、この雛壇から背後の藪を漕いでも索道以外の何処にも通じる道はないと確定した。
平場は法篋印塔の背後に観察されたものの、現存する遺構はなさそうだ。


敢えて法篋印塔をフラッシュ撮影してみた。
まずはある程度離れて撮影した場合…フラッシュの光は殆ど藪に吸収されてしまい明瞭な像を結ばない。実際の見え方はこれほど暗くはない。


法篋印塔にかなり接近して再びフラッシュ撮影。
どうしても手前にしだれかかる木の幹や枝が光を奪い、やはり暗い写真になってしまう。


今日は元から晴れ渡った日ではなく、周囲もこれほど荒れていれば自然光だけで明瞭な写真を撮るならよほど天気の良い日でなければ無理だろう。

各種遺構の位置関係を記録するのも第二次踏査の目的だった。それで法篋印塔や五重塔がどれほど離れていて何処にあるかを記録しつつ歩くことにした。

法篋印塔の前、3連続石段の2箇所を降りてきたところ。


下からみれば最初の1箇所の石段を登ったところにあの五重塔があった。
2箇所目を登ったところが例の「大自然」と彫られた巨岩の上部になる。


3連続石段の最初の部分を降りていく。
ここから下には真っ直ぐ降りる石段がない。園路は当初からここで曲がっていたらしい。


次の石段は3連続石段に対して曲がってついている。
この辺りから池に通じる沢が見えてくる。


更に石段を下りてメインの園路付近に居る。
写真では判明するが、よほど周囲を注視しながら歩かなければ見落とすことは有り得る藪の状況だ。


五重塔と「大自然」を同時に眺められる場所があった。
今ほど藪に埋もれていなければ当初は大変に目立つ場所だったに違いない。


側面からの眺め。
巨岩が直方体状をしているのがよく分かるだろう。


メインの道はこの巨岩の横を通り、一つのピークに向かう。倒木が石段の上にしだれ掛かっているのが目印だ。


この辺りは石段と石積みが連続する。それでいながら石積みで造られた平場には目立った遺構は何も見つからなかった。


倒木をくぐって石段を登るとメインの園路の峠部分になる。そこが恐らく白岩公園の端だろうということは初回踏査でも考えていた。

ピーク部分から前方を撮影している。
ここから先は下り坂で石段がまったくない普通の山道だ。巨岩も少なく何よりも石積みがまったく周囲にない。


したがってこの先何処へ向かっているのかは分からないにしろ、白岩公園を特徴づけるような遺構は何も存在しないだろう…
それは本当だろうか?
普通の山道のように見えるだけで、この先に
別の遺構が眠っている可能性は?
自分としては否定的に考えながらも、何処へ続いているのか偵察しておこうという気にはなった。
それで敢えて白岩公園からは離れる方向で山道を歩き始めたのだが…

(「白岩公園・第二次踏査【5】」へ続く)

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