白岩公園・第八次踏査【4】

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(「白岩公園・第八次踏査【3】」の続き)

短歌の部分には、合同調査会のとき八丁岩の上から投棄した雑木が引っかかったままになっていた。


雑木はそれほど重いものではなかったが、沢山の葉を蓄えた雑木は至るところで引っかかり、強引に除去するのはちょっとした力仕事になった。他の石段などにかからな場所へ移動した後、取り除いた後の様子を写真に撮り、改めて短歌の刻まれた周辺を調べた。
しかし八丁岩には当初からこの1首しか刻まれなかったように思われる。31文字を来園者の目に触れるよう刻みつけるなら、それなりの平らなスペースが必要だ。八丁岩の側面でそのような部分が見当たらないからだ。

これも未だ報告していなかったと思う遺構だが…
八丁岩の短歌が刻まれた近くにテーブル状の岩が据えられていた。木の葉が積もっていたので今まで気付かなかった。


第2のテーブル岩から池を見下ろしている。
設園当初はこの岩の上に腰掛けて上池を眺めることもあったのかも知れない。
自転車が藪に溶け込んでいて探すのはちょっとしたパズルだ


書籍を通して設園当時の白岩公園でのモノクロ写真を見たことがある。大自然碑と五重塔を容易に同時に眺めることができていたし、思ったよりも高木が少ない。そのことは現在でも注意深く観察すれば推察はできる。

大自然碑近くから下池付近を眺めた様子。
先の写真も含めて、確かに樹齢を重ねた木がほとんどない。藪状態で荒れてはいるが、その構成員は竹や細い雑木だ。


雑木やツタなどを取り除いたので、現在では下池から少し登った位置から大自然碑を観ることができる。
この場所にある「サイコロ岩」が何であるかは一つのミステリーである。


枯れ葉や枯れ木の散乱が目立つのは、自然に還る速度よりも地面に落ちる方が多いからだろう。普通の公園なら適宜清掃されることで土の地面が見えている。白岩公園でも枯れ枝などをすべて除去すれば園内はかなりスッキリするし見通しも良くなるだろう。半面、自然のバランスを崩すことになるかも知れないという懸念はある。[1]

さて、そろそろ本日の最後の課題に移ろう。日が傾きつつあるのであまりゆっくりもしていられない。上の写真を撮影した後は”例の場所”までさっさと自転車を押し歩きした。

「ボール橋」の先にある沢である。
倒壊御堂はこの沢を遡行したところにある。精確な経路は不明だが、最近の合同調査会に先立ってK氏が要所にテープでマーキングしてくれている。


この沢には梵字池よりも規模の大きい緩衝池が造られている。思えばまだ一度も接近して調べていなかった。
倒壊御堂を調査した帰りに立ち寄ることにしている。


現在は不明瞭だがここに沢を遡行する道があったのは確実と考えている。
この先の石積みの造りで明らかだ。


特徴的な石積みの角部分。
道の部分だけ空けて石積みを直角に曲げていると考えられる。


ここで左へ曲がり、石積みの造る平場の上に到達する。
初めて訪れたときはまだ下草が多く、強引に進む過程でのイバラ攻撃に苦しんだものだった。
そのイバラは刈り取られておらず健在なので注意が必要


この平場の一番奥には小さな窪地があり、溜まり水ができている。
これは一つのランドマークになると思う。


この溜まり水を見てすぐ右へ登らなければならない。
登るところに赤いテープが巻かれた樹があり、赤土が露出しているのでこれも目印になる。段差があるが太い幹が手がかりになるので昇降にそれほど困難はない。


一段高い場所に登って先ほどの溜まり水がある窪地を見降ろしている。
ここに人工物が転がっているのを見つけた。


暗い中でのズーム撮影なので品位がとても悪いが…
溜まり水の端に割れた瓶が転がっている。ある程度の広さを持つ平坦なスペースだから、厠に使われた瓶かも知れない。
窪地が沼地状態なので接近しての確認は困難かも…


ここから先はK氏のマーキングによって開拓されているので、経路再現性はある。他方、現在辿っているのがそのまま倒壊御堂への正規の道だったとは必ずしも言えない。
それほど現在では道の痕跡が不明瞭になってしまっている。具体的にはあの石積みが直角に折れている場所から先は全然分かっていない。


あの段差を登る場所さえ間違わなければ、そこからはマーキングに頼らずとも倒壊御堂は難なく見つかると思う。それほど離れてはいないので極端に経路を変更しなければ到達できる。

倒壊御堂の手水石が見えてきた。


この手水石は加工して運んだのではなく、元からこの場所にあった自然の岩を削ったものと思われる。むしろ岩があった場所に御堂の設置場所を選んだのではないだろうか。


瓦は石像よりも手前側に散乱している。背面にはまったく落ちてないので、石像の後ろから吹き付けた風で手前に倒れたらしい。


瓦自体はそれほど高級感あるような素材には見えない。しかし装飾の入った瓦も落ちていて、八十八箇所の御堂としてはかなり立派なものだったようだ。


扁額は前回私たちが置き去りにしたままの状態を保っていた。


昨日は雨だったせいか、御堂の残骸や瓦などあらゆるものが濡れていた。
歩くたびに沈み込む瓦を気にしながら、私は扁額の元へ接近した。

(「白岩公園・第八次踏査【5】」へ続く)

出典および編集追記:

1. 白岩公園は昔から湧水が多く、現在も至る所で水が染み出ている。木の葉が大量に堆積している現状ではある程度の保水力を持っていると考えられる。落ち葉をすべて撤去してしまうと雨が続けば斜面の土が流れて転がり落ちる岩がでてくるかも知れない。

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