常盤公園・ときわ丸

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記事作成日:2013/7/8
最終編集日:2018/5/5
ときわ丸はリニューアル前の常盤公園の動物園区画に存在していた巨大なコンクリート造りの船である。
下の写真は常盤公園の正面入口から進んだ先に見える方向からの撮影。


かつて存在していた位置図を示す。
なお、地図の改訂が進めばまるで無意味な場所をポイントしているかも知れない。


動物園区域に至る道はいくつかあるが、正面入口から訪れられることが最も多い。その場合、冒頭に示したようにときわ丸の舳先が左を向いた姿を眺めることになる。

ときわ丸は動物園で飼育されているボンネットモンキーというサルたち(一時期はヤギも同居していた)が遊ぶ姿を来園者に展示するための設備であった。
周囲より数メートル掘り下げたヤードを造り、その中央にコンクリート船が据えられていた。
《 成り立ち 》
市の失業対策事業として建設され昭和38年4月に着工し、翌年3月に完成させている。当時まだ現在の青少年会館のところにあった宮大路動物園が常盤公園へ移ってきたのは昭和39年なので、ときわ丸を完成させた後に移動させたこととなる。

ときわ丸は巨大なコンクリート構造物であり、金網の檻で展示される他のスペースに比べて大掛かりである。更に言えば、開放された空間でサルを展示するなら岩山を築くのがもっとも簡単かつ安価に造れるところを、巨大なコンクリート船を建造してサルたちの住み処とするという発想は如何にも大胆であった。どのようなスタイルにするかはサル山に関して夙に著名であった別府や久留米、鹿児島の磯庭園の視察を行っている。楕円形状に地面を掘り下げ、上からも下からも見られるようにする発案は当時の地形の利用であり、岩山ではなく船にするという発想は海に面した宇部市の象徴という意味合いがあった。ときわ丸の当初設計では舳先が北を向いていたが、船の出航をイメージするために舳先が常盤海岸を向くように修正している。[1]

深く掘り下げたスペースにときわ丸を据えることで、動物園の来訪者は地上の手すりからも地下の金網越しからも見物できた。殆どの動物が金網越しにしか見物できない中、開放的なスペースでサルたちの挙動を眺められることで人気が高かった。船の窓の部分はそのまま空間になっており、子ザルが窓を器用に出入りする所作は来訪者の注目を集めた。リニューアル前の常盤動物園の中で最大の展示動物専用の構造物であり、知名度は非常に高い。
《 ときわ丸のその後 》
【 遺されたもの 】
2013年に入るまでにはときわ公園動物園のリニューアルが策定されていた。ときわ丸でのボンネットモンキー展示は同年5月下旬までは行われていたが、その後仮獣舎へ移された後、ときわ丸エリアの工事が始まった。6月下旬には外周部分の一部取り壊され重機が入場してときわ丸の解体作業にかかっている。

ときわ丸の解体は数日で終了したようで、7月上旬には外側のコンクリート壁を遺してときわ丸は跡形もなく取り除かれた状況を確認している。


コンクリート製のときわ丸それ自体は破砕されてしまったようで部材は一切存在しない。ただしときわ丸に使用されていた煙突と碇が青年の家の玄関ホールに保管されている。
現在は青年の家自体が閉鎖されているため中に入って現物を観ることはできない


有志が製作したときわ丸のミニチュアが湖水ホールに展示されている。このミニチュアは湖水ホールが開いているときはいつでも見学可能である。
【 ときわ丸のあった場所 】
元ときわ丸があったエリアは、周囲を掘り下げた地勢と外壁はそのまま利用し、内部に自然な状態に近い大岩を積み上げることでボンネットモンキーの展示スペースに転用されている。


リニューアル後のときわ動物園は有償化されているため、この場所を訪れるには入園料が必要である。
解体が惜しまれたときわ丸であるが、動物園が2016年にリニューアルオープンしてからは忘れ去られようとしている。現在ではかつてこの場所にときわ丸が鎮座していたことをしみじみ回顧する人も殆ど居ない。
《 Googleストリートビュー 》
2011年11月に恐らく機材を抱えて歩行により採取された映像が閲覧可能である。


周知の通り動物園ゾーンが全面的に改修されていて現地の状況はこの映像とは大幅に異なっている。最終編集日現在においてまだ2011年採取の画像が閲覧可能だが、いずれ新しいものに差し替えられるだろう。
ときわ丸を前後左右から撮影したときのレポート。全2巻。後半部分は後日見つかった画像などを追加している。
時系列記事: 常盤公園・ときわ丸【1】
ときわ丸が取り壊される前にFacebookのときわ公園公式アカウントから発信された連載記事。ときわ丸について関係者以外知り得ない情報が多く含まれている。
FBページ: さよならときわ丸|1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
日時を変えてタイムラインへ掲載されたものをまとめているので各記事は連続していない。また、以下の連載記事番号(1〜10)は本記事の出典として用いた連載記事番号に対応している。

ときわ公園のFB公式アカウントから提出されたときわ丸の写真。
FBページ: ときわZOO NEWS(2018/5/2)
出典および編集追記:

1.「ときわ公園物語」p.127〜129
《 個人的関わり 》
幼少期・学童期を市街地付近で過ごした宇部市民であれば、常盤公園の動物園は幼稚園から小学生まで大変に馴染み深い訪問地であった。小学校時代は遠足はもちろん動物の見学目的で訪れられていたようで、低学年時代に動物を観たときの様子を書いた作文が見つかっている。

中学校以降は縁遠くなるものの、家庭を持つようになると自分の子どもを連れて動物を見せに行く親は多かっただろう。個人的にはときわ動物園のリニューアルでときわ丸がなくなることを知って写真撮影に訪れている。ただし当時の撮影技法はまったく稚拙で、撮影アングルや枚数も充分ではない。上記の時系列記事では数枚紹介しているが、そこへ掲載されているものが殆ど手持ちのすべてである。

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