宇部坂上池

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現地撮影日:2014/10/19
記事作成日:2014/10/21
宇部坂(うべのさか[1])上池は、厚東区末信の観音岳南側にある溜め池である。
写真は余水吐付近から東を向いて撮影。


余水吐の位置を中心にポイントした地図を示す。


地図によっては上池を指して宇部坂池と呼ぶこともある。ここでは既に訪れて記事化している下池と区別するため、下池の上流側にあるこの池を宇部坂上池として記述する。

《 アクセス 》
下池の場合と同様、最初にもっとも簡単な経路で車や自転車などを利用して訪れる最短ルートを述べる。

市道沖ノ旦末信持世寺線を北上し、常盤用水路の末信ポンプ所前を過ぎた先、右側へ登っていく道がある。[2]


この道は地元管理の道で、観音岳や霜降山の縦走手段として歩かれ「宇部坂上池コース」と呼ばれる。
ただし車での通行はこの先にある数軒の民家のみで、車を停め置けるスペースは存在しない。同じ市道から下池を訪れるときの坂道よりは幾分勾配は緩めだが、自転車を活用できる区間はまったくないのでこの先のルートは歩行に限定される。

坂を登る途中、沢地を渡る厚東川1期工業用水道の水路橋とNo.26桝がみられる。
この場所は昭和初期に布設された工業用水道が民家の庭先を通る稀有な事例として知られる。


最後の民家前を過ぎると未舗装路の山道になる。
道中には登山道であることを示す看板は何もないので不安になるかも知れない。
登山道にありがちな「山火事注意」の表示板は随所にみられる


この経路はあまり通行されていないからか道の荒れが目立つ。一部倒木があったり湧水で足元が悪い場所がある。概ね道なりに歩けば殆ど迷うことはない。最後の民家を見送ってから上池へ到達するまでに歩く距離は下池の場合よりもずっと長い。
季節によっては迷うかも知れない分岐路が一箇所ある

小川の流れを右下に見て歩いていると、川の勾配が急になる。小川が登山道の高さに追いついた辺りで上池が見えてくる。


以上は市道から歩いた場合の経路である。
上池の堰堤は中山観音から観音岳を目指す場合の通過地点であり、このため霜降山周辺の山系を縦走する人々にとっては殊更に経路を説明するまでもない程度によく知られている。

《 概要 》
堰堤部分が有刺鉄線付きフェンスで囲まれた下池と異なり、上池は汀まで自由に接近できる。余水吐部分のみコンクリート桝とスパイラル管で置き換えられている。
余水吐は昔あった石積みのものより1m程度低い位置に設置されている。


樋門は余水吐とは異なり下池のある沢に向けて設置されている。
水位が高く樋門までは接近できなかった


このため樋門を介して水を取り出す沢と余水吐を経由する水が流れる沢は異なるかも知れない。このような機構の溜め池はそれほど多くはないと思われる。

余水吐のある北側には堰堤を補強した部分かも知れない石積みがみられる。


この部分が沢を締め切った堰堤部と思われるが、現在は石積みの上に木々が繁茂し地山のようになっているので明らかではない。この上を中山観音から観音岳へ向かう登山ルートが通っている。真の堰堤は樋門のある下池側の沢かも知れない。
堰堤の真下まで軽トラ程度なら到達可能な下池と異なり、上池は徒歩でしか到達し得ない。このためか造られた余水吐の構造も小さめで、溜め池全体としてあまり手が加わっていないという印象を受ける。堰堤部分が明瞭でないので、全体的に皿状の形をしていて恰も噴火口に水が溜まってできた自然池のように見える。

観音岳をはじめとする霜降山散策ルートは、上池の余水吐部分をそのまま横断している。
余水吐を出た水は登山ルートの下をスパイラル管で通されている。


登山目的の場合は観音岳や霜降山を目指すが、景観を愉しむ目的での縦走ではここから一旦下池の方へ降りてから観音岳に向かうルートも存在する。上池から下池へ降りる経路についてはまだ調べていない。

《 個人的関わり 》
溜め池自体はまったく訪れたことがなかったが、市道より上池へ至る途中の地元管理道は知っていた。
下池のときと同様、厚東川1期工業用水道の経路を調べていて市道から小川に沿って遡行することで水路橋およびNo.26桝を訪れている。この場所は自力で訪れたのではなく同志の指摘により2010年5月に初めて到達された。その後、この登山道の途中から民家の庭先に水路橋などが見えることを確認している。
水路橋の奥には上池からの水系が造る末信の滝[3]があり、すぐ近くに中山不動尊が祀られている。2014年10月現在、小川沿いに辿る道が消失して到達不能になっている。

下池を訪れた後、近接する上池も踏査する計画はあった。しかし下池の初回訪問時にイノシシへ遭遇する事件があり、また時期柄ヤブ蚊が多く草木の繁茂も酷かったため、下池より2ヶ月遅れて踏査されることとなった。

初めて宇部坂上池を訪れたときのレポート。全3巻。
宇部坂上池【1】

下池に続いて上池を再訪したときのレポート。追加1巻。
宇部坂上池【4】
出典および編集追記:

1. 厚東区の小字絵図には宇部坂とだけ漢字表記されている。読みは素直に「うべさか」かも知れない。その場合は読みを修正しファイル名も変名する。床波の宇部坂は「うべのさか」である。

2. この道の手前にある同様の坂道は民家へ至る私道なので間違わないように注意。

3. ゼンリン© 地図の表記による。

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