(「馬の背池【1】」の続き)
遊歩道は池の左岸に沿ってうねうねと伸びていた。
その途中からも仮設道で入り江の一部が浅くなっている縁が直線状に現れていた。まるで運河を掘ったようだ。
前方が明るくなってきた。
肉眼では既に木々の間から池が見えているのだが、現在地と先の光量差が大きくて映像を結ばない。
小さな岬部分を回り込んだ先に堰堤が見えてきた。
堰堤の形状がちょっと変わっている。
上池の堰堤部である。
下池とは断然違う。登山道の一部となっているせいか転落防止柵などよく整備されている。
堰堤の手前側、左岸部がイレギュラーになっているのは余水吐があるからだった。
下池は逆に右岸側となっていた。
余水吐の形状は下池と同様である。しかし規模は上池の方がずっと大きい。
もう一つ目を引くものがこれだ。
堰堤の左岸端に溜め池の記念碑と説明板が設置されていた。
説明板には「ため池等整備事業」と馬の背上地区の文字が見える。
記念碑はマウンドを築いた上に据えられていた。
御影石の立派な記念碑である。
少し苔生しているだけで見た目にも新しい。文字も黒々としている。
平成12年12月竣工ということだから確かに新しい。
(影になっている面には総代に会員一同と刻まれていた)
余水吐のすぐ横、記念碑の正面に樋門が設置されていた。
大抵は堰堤の中央にあるものなのでイレギュラーである。
コンクリート階段にハンドル部分が脱着式という樋門は下池と共通している。
階段には昇降用のステンレスの手すりが付属していた。なかなかにリッチだ。
階段部分に門扉は付属していなかった。
水門調整の鉄棒は一本のみなので、池の底から取り出すだけなのだろうか…
階段の一番下まで降りてみた。
余水吐の方を眺めている。
殆ど天端近くまで水位が到達しているので既に最高水位付近と言える。
ステンレスの手すりは紺碧の水面下深くに消えていた。
神秘的に美しくあり、何だかゾクゾクする風景でもある。
馬の背池は谷地に堰堤を築いて造った谷池なので相応な水深がある筈だ。平野部に見られる皿状の池とは水質から棲んでいる生物から異なっている。じっと観察しても水中に蠢く魚などは見られなかった。水清くして魚棲まず…という状況だろうか。
階段の一番下に立ってパノラマ動画撮影している。
[再生時間: 37秒]
本土手は下池と同じ平ブロック形式である。安全性を考慮したのかブロックの勾配はかなり緩やかだ。
平成期の施工とは言っても十数年経っているために平ブロックの継ぎ目から雑草が蔓延っていた。
堰堤まで戻り右岸側に向かって歩いた。
堰堤の両サイドに手すりが設置されている。
遊歩道として通行する人が多いことを考慮しているようだ。
堰堤から池を撮影。
天気が良く青空にも助けられて開放的な溜め池という印象を受ける。
若干アングルを変えてもう一枚撮影。
岸辺の土肌が殆ど隠れるほど水位が高い。
写真を撮る上で空の青さも水の色も申し分ないのだが、平ブロックの継ぎ目から生え出た枯れススキがどうにも気になった。
構図から枯れススキを追い出すべく柵を越えた内側から撮影しようかと思った。しかし私が堰堤の中央付近で撮影している間、同じ駐車場の方からやって来た散策者の目があったので自重しておいた。
(入水自殺志願者と思われたくないので…^^;)
堰堤の延長上右岸側には最近据え替えられた送電鉄塔があり、遊歩道はその鉄塔へ登るような急坂に向かっていた。
鉄塔のある高台まで登れば上池を俯瞰できるかも知れない…
急斜面は膝に堪えるのだが、せっかくここまで来たので登ってみることにした。
(「馬の背池【3】」へ続く)